怪・その34

「本棚のガラス戸に」

これは私自身が今から20年ほど前に体験した話です。

当時私の部屋は、
実家の二階の廊下の突き当たりにあり、
その手前にあるいくつかの他の部屋は、
書斎や納戸だったので
あまり使われていませんでした。

そして私の部屋は、
ドアを入った正面に勉強机があり、
すぐ左手(つまり勉強机の背中側)に、
背の高さより少し高い
ガラスの引き戸付きの本棚が
置いてありました。

その日は
高校受験を控えた夏休みということもあり、
夜11時頃も机に向かっていました。

すると
フッと背後に何かの気配を感じました。

最初は気のせいかな、と思ったのですが、
じっとこちらを見ているような
イヤな気配が消えません。

しかしその時、両親と祖母は一階におり、
二階には私以外誰も居るはずがありません。

おかしい、すぐにそう思いました。

ーそう言えばお母さんが、
前に夜食を持って来てくれたことがあったな‥‥。

以前、夜食を持った母がそっと背後のドアから入り、
じーっとこちらを見ていて
驚かされた事があったのを思い出しました。

そうだ、きっとそうに違いない‥‥、
自分にそう言い聞かせながら恐る恐る振り返りました。

が、そこには誰もいません。

ドアが開いているわけでもありません。

やはり気のせいだったのか、
と安心しながら
本棚のガラス戸に視線を向けた瞬間、

あり得ないものが目に映りました。

ガラス戸の一番天井に近い位置に、

黒髪の女性の青白い顔が

首から上だけぼぅっと映っていたのです。

顔のある高さからして、
私が映っているわけではなく、
まして普通の人の身長の位置でもありません。
一瞬で身体がかたまり、変な汗が出て来ました。

その後そこから何とかゆっくり
机に身体を向け直すと、
MDプレーヤーのイヤホンを耳にして、
これまでにないくらいの大音量で
音楽を掛けながら、
嫌な気配が消えるのを待ちました。

背後をもう一度向き
ドアを開けるほどの勇気がない、
中学生なりの必死の抵抗でした。

それからどの位経ったでしょうか。

背後のドアが開く気配がしたので、
音楽を聴きながら恐る恐る振り返りました。

今度は、
母が飲み物を持って入って来るところでした。

本棚を見ると
先ほどまで見えた顔は消えていました。

母に一部始終話しましたが、
疲れてるんじゃない? と言われただけでした。

それ以来、あの青白い顔を見た事はありません。

(m)

こわいね!
Fearbookのランキングを見る
2020-08-27-THU