怪・その24

「かわいそうな人形」

私が小学生の高学年の頃のある日、
知人の○○さんが、

知り合いからお人形をもらったが
どうしても気味が悪いので、
お寺で処分してほしい、
と持って来られました。

僧侶である父は
前の晩に徹夜をしていて仮眠中だったため、
紙袋に入れられたそのお人形を
そのまま食卓テーブルに置いておきました。

しばらくすると、
そんなに暑い日でもなかったのに、
いつもはひょうきんな父が
汗をびっしょりかいて、
ものすごい形相で起きてきて、
仮眠中になにか変わったことはなかったかと
聞いてきました。

〇〇さんが、
知り合いからお人形をもらったけど、
気味が悪いからと持ってきたのを
預かったと父に話すと、
父はすぐに食卓テーブルに置いた紙袋から
薄い布に包まれたお人形を取り出しました。

父がその薄い布を開くと、
和服姿で、胸の前で軽く手を合わせて、
少しだけ首をかしげて俯いている
女性のお人形が出てきました。

そのお人形を見た時のきもちを
うまく言葉で表現できないのですが、
小学生ながら、
「絶望に暮れた人」って
こういう姿なのかな、と思うような
すごくさみしくて
かわいそうなきもちになりました。

父がすぐに
そのお人形を持ってきた〇〇さんに電話をして
経緯を確認したところ、
恋愛トラブルが原因で心を病んでしまった女性が
入院中に作ったお人形であるとのことでした。

通常、お寺で預かった因縁のあるものは、
しばらく保管し、
一定の期間が経過してから
お焚き上げするのですが、

このお人形はちょと他とは違うからと
父はその日のうちにお焚き上げをしました。

その日の晩ごはんの食卓で、
あのお人形を作った女性の心が癒えるといいねと、
珍しく静かに話していました。

(たえこ)

こわいね!
Fearbookのランキングを見る
2020-08-18-TUE