怪・その15

「道を下りまた上り」

僕の体験をお話しします。

小学校2年生くらいのころ、
母親と同級生の家に遊びに行きました。

夜ご飯を食べて帰ろうとして
玄関を出たのですが、
母は同級生のお母さんと
立ち話を始めたのです。

その家は、
小さな峠を登る公道から
10mほど脇に入ったところにある一軒家で、
人通りもなく、
僕はぼんやりと公道の方を眺めていました。

すると、その道を下る、
真っ白い着物を着た老婆が
僕の視界を横切りました。

子どもながら、
普通の人とは違う格好をしていることに
違和感を覚えていると、

今度は老婆が
道を上ってきたのです。

背中には、人が2人は入りそうな
大きな白い壺を抱えています。

しばらすると、
その老婆はまた道を下り、
またしばらくすると上ってきます。

3回ほど繰り返されるうちに、
恐怖心が僕を襲ってきました。

恐ろしくなった僕は
立ち話を続けている母たちを見ました。

ところが彼女たちは、
特に怯えていたり
不審がっていたりする様子もありません。

まだ子どもだった僕は、
こういう人も世の中には
居るものなのだろうか、と思って、
少し安心しました。

じきに立ち話も終わり、
帰路についてその公道に出たのですが、
老婆とすれ違うようなことはありませんでした。

翌朝、やはりどうしても
あの老婆が気にかかった僕は、母に、
「昨日坂を往復してた
あの白い服のお婆さんは何?」
と聞きました。

母には、見えていませんでした。

大人になって気づいたことですが、
その老婆が背負っていたのは、
大きな骨壺でした。

(l)

こわいね!
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2020-08-11-TUE