怪・その13

「座っていたカカシ」

小学校の林間学校の時の話です。

最終日の夜に、
班で別れて肝試しを行う
恒例行事がありました。

男として、
震えながら進むわけにも行かず、
順番が回ってくるまでの待ち時間も
友人に自分から怪談を振って
心の片隅にある恐怖を
振り払うようにしていました。

しばらくすると
前の班の人たちが戻ってきて、
とうとう私たちの出番となりました。

宿の裏手の林を、
ボランティアの大学生の方々が置いてくれた
看板に沿って歩いて周りました。

道中、
ボランティアの方々の悪戯心で置かれた
カカシを見て、
班の女の子はキャーキャー騒いでおり、
私達男子は意地と胸を張って
ズンズン歩いて進みました。

途中ベンチで俯いているカカシが置いてあり、
麦わら帽子を深く被っていて、
顔が見えませんでした。

今まで怖がらせるような配置で置いてあった
カカシに対して、
ただ休憩している様に置いてあるカカシに
違和感を感じましたが、
ボランティアの方々が呼ぶ声も聞こえて、
もう皆の精神も限界だったため、
班員全員で足早にゴールに向かいました。

「蛍が見つかったよ、綺麗でしょ。」

ボランティアの方が仰いました。

さっきまでの恐怖は何処へやら、
班の皆と喜んで見に行きました。

ひとしきり喜んだ後、
最後のカカシについて質問をしました。

「椅子に座ってるカカシは
なんだか悲しそうでしたね。」

「そんな物は置いてないよ。」

ボランティアの方は恐らく、
私が怖がらせようとしている、
と思ったみたいで、
「このこの」と突っついてきました。

私は、
後ろの林を振り返ることができませんでした。

(h)

こわいね!
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2020-08-11-TUE