怪・その11

「まだ遊んでいる」

可愛がっていたハムスターを見送りました。

私達夫婦にとっては大事な家族であり、
子供でしたから、
相談のうえ、数日後に荼毘に付すことに決めました。

清拭をし、ティッシュの寝床を整えて
寝かせてやった、翌晩のことです。

私は会社から帰ったばかりで、
食事の準備に取り掛かったところでした。

今までは野菜を少し取り分け、
ケージに入れていたのに、
もう、喜んで走り寄ってくる姿は見られない。

もっとたくさんおいしいものをあげればよかった。
動けなくなる直前の数日、
珍しくひざに乗ろうとしていたのは
彼なりの何かだったのかもしれない、
もっとその時間を大事にすればよかった。

と、そんなことを考えていた時です。

「コトッ」と音が聞こえ、私は振り向きました。

視線の先にはケージがあります。

マンションで防音性には優れているので、
他の部屋からの音は滅多に聞こえません。

聞こえた音は、こちらの部屋の中で
起きた音で‥‥というより、
ケージの床に、ペレットがあたる音でした。

20時過ぎ‥‥
ハムスターがご飯をねだり始める時間でした。

その日の朝、
生ものがあったため餌箱を片づけたまま
枕飯を置いていなかった。

それに思い当たってすぐに用意してお供えしたのですが、
彼の気配はそれでは終わりませんでした。

荼毘に付した後も、
視界の端のケージの中で、
寝床からトイレに向かって動く何かが見えたり、

「カタカタ‥‥」
「コリ‥‥コトッ‥‥」
「シャ、シャ‥‥」
「トッ」

という音が深夜、
床に就いてから聞こえることがあるのです。

どうやら今でも、
回し車で遊び、ペレットをかじり、
布団をかき集め、巣箱によじ登っては
飛び降りたりしているようです。

魂は死後49日は
この世に留まるということも言いますが、
うちのハムスターは、
49日が過ぎた今もまだ部屋を闊歩しているようで、
私たちはなんとなくケージを片付けられずにいます。

(春巻き)

こわいね!
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