怪・その10

「探している声」

6年前のことです。

大好きな祖母が亡くなった数ヵ月後の月命日、
私はいつものように
祖母宅の仏壇へ拝みに行きました。

鍵を開け、玄関で靴をぬいでいると、
声が聞こえてきました。

2階に住む叔母が
時々片付けに来ているのです。

「こんにちは、お邪魔しますー」
などと言いながら奥へ進みました。

お水をお供えするために台所へ入ろうしたとき
また声が聞こえてきました。
いちばん奥の部屋からです。

もう一度、
叔母に挨拶をしようとして気づきました。

ふぅう。ふう。ふう。ふぅう。

これは、叔母の声ではありません。

祖母の声です‥‥


祖母は生前、
いちばん奥の部屋で
よく探し物をしていました。

ぶつぶつと低く独り言を言いながら。
呼吸が浅くならないように
ため息まじりに
「ふぅう、ふう」と言いながら。

咄嗟に思ったことは
祖母だと気づいてはいけない‥‥、
私がいることを気づかれてはいけない‥‥。

お水を仏壇に供えて逃げ出しました。
大好きな祖母なのに、
ものすごく怖かったのです。

帰宅して母にこの話をしたら

「何を探してるんだろう‥‥
 なんで逃げたの!
 話を聞いてくれたらよかったのに!」

‥‥叱られました。

(C)

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