怪・その33

「古い宿舎で」

わたしが大学生の頃の体験です。

通っていた大学には古い宿舎があり、
そこで暮らしていました。

収納スペースのない5畳ほどの狭い部屋だったので、
学生はみんな備え付けのベットを
ブロックなどで1mほど底上げして、
その下に荷物を入れていました。

ある夜、ふと目が覚め、時計を見ると2時でした。
夜中目が覚めるのは珍しいな、
と思っていると体が動かないことに気が付きました。

金縛りかな? と思ったのですが、
顔や右半身は動かせます。

左の腕が動かない、と思い目を向けると、

女の人の手がわたしの手首を持っていました。

とっさに、変な寝相で、
自分で自分の手を持ってるのかな?
と思いましたが、自分の手はちゃんと右側あります。

うわ〜と思い、
もうこのまま寝てしまおうと思い目をつむりました。

でもやっぱり怖い、眠れないと思い、
思いきってもう1度確認してみることにしました。

意を決して見てみると、
やっぱりベットの隙間からニュッと出た、
華奢な女の人の手が
わたしの手を持っています。

掴んでいるという印象はなく、
そっと持っている、という感じ。

いよいよ勘違いでは済まされないと思い、
全身の力を振り絞って振り払い、
寝巻きのまま振り返らず、
とにかく人のいるところに行かないとと
コンビニまで走りました。

泣きながら友達に電話し、
その日は友達の家に泊めてもらいました。

よく考えると、あの部屋は最初から
部屋の四隅にお札が貼ってあったり、
急に鍵が壊れて部屋に入れなくなったりと
気味の悪いことが多く、
しかも部屋番号は429号室。
よくあんな部屋に住んでいたなぁと思います。

(A)

こわいね!
2013-09-05-THU