怪・その32

「マリーちゃん」

私が小学校の低学年の頃、
実物の赤ちゃんの大きさで、
寝かせると目をつむるようになっている
マリーちゃんと言う人形を可愛がっていました。

しかしある時、お洋服をつくってあげたいと思いました。

でも子供なので、布を腕や胴体に巻きつけてから
チクチクと針で縫い付けるやり方でやったら
出来上がりが気に入らず、
脱がそうとしてもパツパツで脱がせませんでした。

それで、カミソリでピッピッと切って脱がしたら
マリーちゃんの体がきずだらけになってしまいました。

なぜかもういらなくなり、
おもちゃ箱にしまおうとしたんですけど、
大きすぎて入らなかったので、
五体バラバラにして、入れたんです。

マリーちゃんは、腕や足が、
すぽっとはずしたりはめたりもできる人形なので
ぜんぜん罪悪感もなかったんです。

その夜、父と母が出かけていて、
私と兄とで、ふすまの前に布団を積み上げて、
一番上の布団を滑り台みたいにして、
でんぐり返しをして遊んでいた時です。

くるっと回転したその瞬間、
ふすまにマリーちゃんが映っていたんです!

逆さまでロープで首をつっていて、
顔が紫になっていて、
口から血がながれていて、
青い目をカーッと見開いて私を睨みつけ

「お前を恨んでるぞ」

と言うのが、心に入ってきました。

ひゃっ!
と、息が止まって、ゴロゴロっと、転げ落ち、

「お兄ちゃん、今、人形の幽霊がいた!」

と言っても兄は、嘘つけ、なにも見えんかったぞと
信じてくれません。
両親に話しても信じてくれませんでした。

翌日の昼間におもちゃ箱を開けて、
「マリーちゃんごめんね、ごめんね」
とあやまりました。

それ以来、何もないのですが、
今でも絶対に人形は買わないし、もらいたくありません。

(いづみ)

こわいね!
2013-09-05-THU