怪・その23

「寝ている耳元に」

夏の終わりの夜の事です。

その夜は寝つきがとても悪く
何回も寝返りを打っているうちに
すっかり夜も深くなってしまいました。

辺りは虫の声しか聞こえず、
私は
もう秋だなあとか
こんな時間まで起きていて明日はキツイだろうな

というようなことをぼんやりと考えていました。

少し喉に渇きを覚え、
水でも飲みに行こうかと
部屋のドアの方へ寝返りをを打った時、

耳元で

「来るよ」

という声が聞こえました。

目の前のドアを開けて何かが来るのか
それとも自分の思いもよらない形で
それが訪れるのか
私にはわかりませんでしたが、
結局その日は布団にくるまったまま、
明るくなるまで、眠ることができませんでした。

(m)

2012-08-28-TUE