これまでのこと、ブタフィーヌさんのこと。

第6回 たかしまさん、編集部を辞める。

── 漫画家に頼むべきイラストを
自分で描いて持ってきたら
先輩編集者にひどく怒られたと。
たかしま ほんとにいま思えば怒るの当然だし
非常識だったんですけど、
でも、怒りつつも、見てくれてるんです。
そして見終わったあとに、
「きみがイラストレーターになりたい
 っていうのは聞いてるし、
 こんだけ描いたんだったら、
 オレとしてはダメだけど、
 ていうかダメだけど、
 アートディレクターさんに、
 聞いてみてやるよ」
って言ってくれて。
── その話の流れでは、
ダメに決まってるわけですよね。
たかしま そうです。
── だけど、じゃあ、なんか良かったんですかね。
たかしま どうなんですかねー。
── 使えるかもな、って
思ったんじゃないですかね。
たかしま ぼくは、もう、突っ返されるんじゃなくて、
見てくれた、怒りながらも
ぺらぺらめくってくれたのが、
ほんとに、そのときは
嬉しかったんですけど。
── 何枚ぐらい描いたんですか?
たかしま 4、5枚とか、そういう程度です。
聞いてた内容と、扉と中身の
点数分を描いていきました。
それでデザイナーさんに
ファックスで送ってくれたんですね。
このデザイナーさんは
いまでも、飲んだりしてる恩人なんですけど
見せたら、連絡があって
「ふたりで来なよ」って言ってくれて、
で、その先輩編集者さんとふたりで、
デザイナーさんのところに行ったんですよ。
そしたら、
「これじゃ、全然ダメなんだけど、でも、
 もうちょっとなんとかすればいけそうだから
 やってみる?」
っていうふうに言ってくれたんですよね。
── ええっ!
で、やることになったんですか。
たかしま もちろん「ぜひやらせてください」
っていうことで、やることになって
それが、ぼくのデビューになったんです。
第2特集の「ぼくたちの失敗」っていう
Macの失敗談を読者から募集して
それを記事するっていう特集だったんですけど、
いきなり扉と中のイラストを描かせてもらって。
カッパの絵を描いたんですけど。
── 度胸があるというか無鉄砲というか。
すごいですね。
それが、入ってどれくらいですか?
たかしま ぼくは、実際編集部にいたのは、
半年間なんですよ。
だから、入ってすぐでしたね。
暮れの特集だったんで、
夏に入って、2、3ヶ月したころの話ですね。
── そうでしたか。
逆にいろいろわかってきちゃったら
できないですよね。
たかしま そうですね。
── 編集者ってこういうんもんだ
ってこと教わりすぎちゃったら、
先生は、先生
決まったことは、決まったこと。
たかしま 恐れ多くてできないですね。
そう思います。
それで、またラッキーなことに
その特集が、評判がよかったんですよ。
失敗談みたいな特集って
きっと、それまでになかったのかもれないんですけど、
おもしろいってことで、
アンケート結果がすごく良かったんですよ。
それで、あの特集評判よかったよ、
っていうところから、なんとなく、
描かせてもらったぼくの絵も
なんとなく評価がよかったんです。
評価がよく見えたんですよね。
その特集の人気にひっぱられて。
それもあってか、そこから、ちょこちょこ
カットを描かせてもらえるようになって。
他の編集者さんも、
ちょっと、あそこ空いてるからなんか描いてよ、
みたいなことで、
ちょこちょこ描かせてもらえるようになって
で、半年後に、春ですね。
春なんで雑誌がちょっと
リニューアルかかる時期だったんですよ。
それで、担当替えするから、打ち合わせしよう
って編集長に呼ばれて、
「きみ今度から、こういう担当になって」
って、いろいろお話をされたんですね。
そのときに、思ったのが、
ああ、ここで担当替えをしてもらって
いよいよ、担当の本数も多くなったんですよ。
それまで、2本プラス別冊ぐらいだったのが。
ここで、本格的な編集者になってしまうと、
イラストレーターとしての道から
遠ざかってしまうんじゃないかと思って、
「すいませんけど、
 そろそろ独立したいんですけど」。
── あは、‥‥はははは。
その編集長は、最初に雇ってくれた編集長。
たかしま そうです。
雇ってくださった。
── どんな反応だったんですか?
たかしま 「のたれ死んでしまえ」
みたいに言われました。
すごくよくしてくださっていて、
こういうふうな雑誌にしていきたいんだよと
将来のことをぼくに話してくださったりもして、
すごくいい方で、
もう、ほんと大好きだったんですけど、
でも、イラストレーターになるには、
ここで言わなければと思って、言ったら、
ほんとにもう裏切り行為みたいなものなんで、
期待していただいた気持ちに対しては、
ほんとに、もう、申し訳ないんですが、
「そんなんで、やっていけるわけがない」
って怒られました。
── まぁ、心配もありますよね。
たかしま そういう意味でもあったんですよね。
やっていけるわけがないので。
── それに、いなくなられたら困るしね、具体的に。
たかしま もう、反対っていうよりも
ほんとに怒らせてしまったんですよね。
「すいません」って謝るしかなくて、
ほんとにイラストレーターとしてやっていきたい、
って気持ちをなんとか伝えて、
理解はしてもらえないまま
ぼくは、辞めることになるんです。
2008-12-15-MON
(つづきます!)
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