第6回 こいつは古くならないな。
糸井

卓さんにとって
飽きられちゃうことについての恐怖は
ものすごくありませんか? 
例えばガムのパッケージも
飽きられたら
もうおしまいなんですよね。

佐藤

どういえばいいのでしょう。
「古くならない」
ということを意識します。
古くならないということは
新しくてもいけない。
新しいものを
人は花火のように
「きれいだな」驚くけれども、
2年後、3年後、5年後、
それがあっててほしいかっていうと、
「もういいよ」と言われてしまう。
そうならないために
どこまでやらないか、抑えるか。
物足らないって言葉は
ネガティブな言い方でよく使われますけど、
ポジティブに使いたいと思ってます。
ちょっと足りないぐらいで抑えておく。

糸井

腹八分目ってやつですね。

佐藤

ええ。腹八分目です。
だから「ブタフィーヌさん」は
世の中で言うところの
今っぽさもないし、
なんか普遍的な感じを
すぐ出会ったとき思いました。
「あ、コイツは
 5年後、10年後も全然古くならない」と。

糸井

一方で著者である
たかしまさんには
古っぽいとか
新しっぽいとか
そういう意識はあるんですか。
例えばナタデココが流行ってるときに、
ブタフィーヌさんが
ナタデココを食べるという話を
もし描いたとしたら、
あとで懐かしいと言われるか
古っぽいと言われるようなことが
あるじゃないですか。
けっこう周到にいろんなものを
出さないようにしてますよね。

たかしま

そうですね。
ブタフィーヌさんとは
現実とは同じようで
ちょっと違うところにいる感覚なので、
そうしてるのかもしれないです。

実際あまり具体的なものは
出さないようにしてるかもしれません。
例えば県名が出たり
そういうことも今後しないと思います。

糸井

ブタフィーヌさんは
美容師さんにあこがれてますが
みんなのイメージする
美容師さんというと
カリスマ美容師以後の美容師なんですね。
「美容院、青山にものすごい多いよね」
という美容師さんなんです。
だけど、あの美容院は
地方都市にもあってもおかしくない。
一方で世田谷区にあってもおかしくない。
どこにあっても
おかしくないような
加減のところなんですよ。
そのあたりはたかしまさんにとって
無意識にやってしまってるのかもしれませんが。

佐藤

普遍的なところですよね。
すごく多くの人が共通の部分を
本能的に探せるといいますか。

たかしま

少なくともブタフィーヌさんは、
毎日描いててとても楽しいんですよ。
もともと個人のホームページで始めたものですし
本当楽しみとして描いてたお話なんですね。
やっぱり好きなんですね。

佐藤

今日は実際に
描いていただきましょうか。

糸井

使っている画材が
ちょっと面白いんです。
まずはたかしまさん、
道具を教えてあげてください。

<つづきます>
2007-03-16-FRI
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