ケント・モリさんのプロフィールはこちら
── 先日、
パパイヤ鈴木さんにターンを習う
という機会があったんですけど。
ケント すてきな機会ですね。
── はい、
「ターンができたら、世界がたのしくなる」
という、糸井重里の発案で。
ケント へぇー‥‥。
── で、実際に踊ってみてわかったのは
ダンスって
ものすごく「感動する」ものなんだなあと。
ケント ダンスというのは、感情表現ですから。

ぼくたち人間の感情が
もっとも高ぶったときに出てくるものが
ダンスだと思っています。
── まだろくに喋れないうちの1歳児も
でたらめですが
音楽が流れると、いっちょうまえに踊ります。
ケント でしょう? ガッツポーズひとつにしても、
本気で「よしっ!」って思ったら
握り拳に「温度」とか「魂」が入ります。

すると、ただ「手を握る」という動作にも
意味が出てくるんです。
── なるほど‥‥。
ケント そういう、ひとつひとつの感情のピース
ひとつながりになったもの
ぼくらは「ダンス」と呼んでいるんだと思います。
── 感情のつながり。
ケント ええ。
── 写真家の石川直樹さんの連載にも出てましたが、
時と場合によっては
失神しちゃったりとか、しますものね、
ダンスって。
ケント 宗教的な儀式の踊りなんか、そうですよね。
── ちなみに今日は、ダンスが大好きで、
ダンスを真剣にやっているふたりの中学生に
来てもらってるんですが、
彼女たちから、もし質問とかあったら‥‥。
ケント ええ、いいですよ。
あさの 廣瀬麻乃と言います。中学3年生です。

明日、ダンスのテストがあるんです。
毎回、緊張してうまく踊れなかったりするんですけど、
ツアーとかライブとか
大勢の人の前で踊るときって、緊張しますか?
ケント 人前で踊るのに、緊張はしないね。
あさの 失敗しちゃったらどうしようとか‥‥。
ケント もともとダンスには失敗ってないんだよね。
なぜかって言うと、
踊りたいように踊るのがダンスだから。
あさの ああ‥‥。
ケント 決められた振り付けを
間違わないように踊らなきゃって思ってたら
失敗もするだろうけど、
あさのちゃんが
ダンスで自由に自分自身を表現してるときは
「失敗」なんかないでしょう?
あさの はい。
ケント ダンスって
楽しいか、楽しくないかで決めていいんだ。

自分自身が気持ちいいスタイルで、
好きなように踊る。
ダンスって、そういうものかなと思うけど。
── でも、言われたままの振り付けを
ただ踊るってことだけが
もしかしたら正解じゃないのかもしれないって
思えるだけでも、
次からは、ちょっと違うかもしれませんね。
りりこ 尾崎里莉子と言います。中学2年生です。

ダンスをやっていて
つらかったこととかってありますか?
ケント つらかったことはないんだ、本当に。

でも、そうだなぁ‥‥敢えて言えば、
「ぼくは、
 アメリカに渡ってマイケルに会いたい」って
言ったときに、
あまり、真剣に聞いてもらえなかったことかな。
りりこ 信じてもらえなかったんですか?
ケント ぼくの家族はいつでも応援してくれたから
すごく感謝してるんだけど、
みんなぐらいの年齢のときに
「将来、スーパースターになりたい」って言ったら
「うん、わかった、森くん。
 じゃあ、キミは本当は何になりたいの?」って
まともに取り合ってもらえなかった。

それが、寂しいなって気持ちはあったね。
りりこ それじゃ、長いライブが終わったすぐあとに
やりたいことって何ですか?
ケント 飛ぶねぇ(笑)‥‥ええと、ライブ終わってすぐ?
女の子を見つけに行くことかな。
あさの&りりこ ええー!
ケント うそうそ(笑)。

あのね‥‥何だろう。
んーと、やっぱり友だちと遊ぶことだね。

ショーで踊ってるダンサーとは
本当に友だちだし、
今はクリス・ブラウンといっしょなんで‥‥。
あさの&りりこ ええーっ!
ケント 知ってる?
あさの&りりこ 大好きです!
ケント クリスふくめて
みんなでアフターパーティに出かけたり、
映画を観に行ったり。

なんか、ふつうの答えだな‥‥ごめん。
あさの わたしやりりこちゃんは
ヒップホップやR&B、ロックが好きなんですけど、
何のスタイルで踊るときが
ケントさんは、いちばん気持ちいいですか?
ケント ケント・モリのスタイル。
あさの&りりこ
ケント それに尽きるね。

やっぱりぼくは、
ぼく自身のスタイルをクリエイトしたくて
ダンスをやっているので。

だから、自分のスタイルで踊ってるときが
いちばん気持いいんだ。
あさの&りりこ わー‥‥。
ケント あさって埼玉でワークショップをやるから
よければ、遊びに来たら?

今回は、ケント・モリのスタイルも教えるし、
マイケルのスタイルも教えてあげるよ。
あさの&りりこ ホントですか!?
ケント うん。
あさの&りりこ 行きますっ!
ケント じゃあ、おいで。
あさの&りりこ ありがとうございますっ!
── よかったねぇ(笑)。
あさの&りりこ ハイ、ありがとうございます!
── じゃあ、今後のケントさんの展望を
最後に、おうかがいしてもいいですか?
ケント もっともっと
ダンスが「市民権」を得られるよう
はたらきかけていきたいです。
── まだ、足りないと?
ケント まだまだ、ぜんぜん足りません。

たとえば、野球やサッカーなどのスポーツでも
お笑いでも何でもいいんですけど、
ダンスは、
それらと同じようには、
ゴールデンタイムで放送されてないでしょう?
── ええ。
ケント これは、ダンス全体のことだけじゃなくて
ダンサー個人についても、そうです。

いまのダンサーの在りかたって、
あるアーティストとのコラボレーション、
もっと言えば
グループの中のひとりでしかないんです。

単純に、いまの日本のダンサーのなかに
1億円プレイヤーがいますか?
その程度にしか、存在しえてないんです。
── はー‥‥。
ケント 本当に才能のあるダンサーが
ひとりのアーティストとしてちゃんと認められて、
その才能で世の中に認知される。

世界で活躍してる他のアーティストとも
ダンサーとして、
当たり前に肩を並べることができる。

そういうところへ、持っていきたいと思ってます。
そしてぼくは、それは可能だと思っているんです。
── 日本全国でワークショップをやっているのは、
その一環なんですね。
ケント はい。ワークショップって、
人と人とがつながることのできる、絶好の場。

ひとつひとつ、大事にやっています。
とても楽しいですよ。
── こう言っては何なのですが、
他の人がワークショップを開かないような地方にも
積極的に、行かれてますよね。
ケント 東京、大阪、名古屋だけだと、
集まる子も、都市部の子だけになっちゃいますし、
地方の子の場合は
交通費と一泊二日の時間をかけて‥‥
みたいに、かなりの負担になってしまいますから。
── ええ、ええ。
ケント だったら、ぼくのほうから出向くことで
無理なく、みんなに会えるので。
── なるほど。
ケント 都市部だけで盛り上がっていては、
本当の意味での
ダンスムーブメントにつながりませんから。
日本全体で
盛り上げていきたいんです、ダンスを。
── ちなみに、どういう人が来るんですか?
ケント ぼくのワークショップの場合は、
プロ・アマ問わず、ジャンルはオールジャンルで
しかも、若い子たちだけじゃなく、
いろんな年代のかたが、来てくれるんです。
── なんでもありな感じ。
ケント そうそう、それが、すごくうれしいですね。
── 若い子だけじゃなくというのは‥‥
おじいちゃんや、おばあちゃんとかも?
ケント 来ます来ます、来ますよ。

なかには
「おばあちゃん、お母さん、娘さん」
みたいな、親子3代で来てくれたり。
── へぇーっ!
ケント お父さんと息子がいっしょに踊ってたりとか、
そういう光景を見ると、
ワークショップをやっててよかったなぁって
こころから思いますね。
── おばあちゃんを誘うんですかね、娘さんが‥‥。
ケント うーん、どうだろう?

いや、けっこうファンキーですからね、
日本のおばあちゃんって‥‥。
── え、おばあちゃんが孫を誘った可能性も‥‥?
ケント あるんじゃないですかね?(笑)
── ははー‥‥。
ケントさんにとって、ダンスって何なんでしょう?
ケント もっともっと、いろんな人に楽しんでほしいもの。

それも「こうこう、こうでなきゃならない」とか、
そんな決まりきったものじゃなく、
リラックスして、こころから楽しいやつを。
── なるほど。
ケント ダイエットとしても使えますよ?
── 動機は何でもいいんですね。
ケント 何より、人と人とがつながっていけるんです、
ダンスによって。

国境を越えてつながっていけるし、
世代を越えて、つながっていける。
── それは今、ご自身で証明されてますね。
ケント それもこれもぜんぶ、
マイケルが教えてくれたことなんです。

ぼくは、
その楽しさを、みんなと共有したいんです。
── 今日は、ありがとうございました。
ケント こちらこそ。
── あ、最後の最後にひとつ、いいですか?
ケント なんでしょう?
── そんなにダンス大好きなケントさんが、
もし、もしもダンサーになれなかったとしたら、
どんな職業に就いていたと思います?
ケント お笑い芸人ですかね。
── え!? 
ケント お笑い芸人ですかね。
── お笑い芸人?
ケント ダウンタウンさんが大好きなので。
── その即答&断言っぷりに驚きますね‥‥。
ケント ダウンタウンさんのファン歴は
マイケル・ジャクソンより長いですから。
── じゃあ、ケントさんの「思い」や「こころ」で
お笑いの練習してたら
お笑い芸人になってたってことです‥‥かね?
ケント いや、実際、本当に悩んだ時期があるんです。
お笑いの道か、ダンスの道かと。
── それは、いつごろの話ですか?
ケント 18歳か19歳のころです。
── そんな昔の話じゃないんだ‥‥。
ケント 自分は、どっちに方向へ進むべきか‥‥。

フィフティ・フィフティでした、
いま思えば。
── フィフティ・フィフティ!
ケント 最終的には「49対51」ぐらいで
ダンスがギリギリ勝ったので
今こうして、ダンサーとしてしゃべってます。
── 最後の最後に、すごくいい話が出ました。
ケント ホントですか。それならよかった(笑)。

‥‥じゃあ、せっかくスタジオだし、
ふたりと、ちょっと踊ってみようか?
あさの&りりこ はい!
こうして、彼らのダンス・パフォーマンスは
このあと3時間以上も続いたのであった‥‥。
<おわります>
2011-09-09-FRI
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第0回 目の前でダンスが出来上がっていった。 2011-09-06-TUE
第1回 四六時中ダンスしてる。 2011-09-07-WED
第2回 マイケル・ジャクソン 2011-09-08-THU
第3回 49対51 2011-09-09-FRI

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