『新選組!!
土方歳三最後の一日』
with
ほぼ日テレビガイド
ついにこの日が来ました。
NHK大河ドラマ『新選組!』
完結させる新春ドラマスペシャル!
半年間にわたり『新選組!』とつき合った
ほぼ日テレビガイド男子部が
このドラマを見逃すわけがありません。
観よう! じっくり!
語ろう! だらだらと!
スペシャルな年表もつくってみましたよ。
『新選組!! 土方歳三最期の一日』を
観たあとで。


永田 はい、はじめましょう!
糸井 よろしくお願いします。
西本 明けましておめでとうございます!
永田 おそすぎるわ! という声が
全国から聞こえるようですが。
糸井 そんなに待たれてもないでしょ。
西本 いやいや、地味にメールが届いてましたよ。
「いったいいつ更新するんだ?」と。
永田 だって、放映翌日(1月4日)には
「まだですか?」的な
メールが届いてましたからね。
西本 弊社は1月10日まで正月休みでしたからね。
永田 「早く更新してください」と言われても、
みんなまだ休んでいるという状態で。
糸井 こればっかりはね。
西本 ぼくも今年の休みは
直島に行ってましたからね。
永田 ほう。
西本 それも、三が日からちょっとずらして、
1月4日から旅立つという
スケジュールで‥‥。
糸井 おい、またいつの間にか
西本の「自分話」になってるぞ。
永田 あ、ほんとだ。
『新選組!!』の話が
あっという間に「直島」の話です。
これはもう、芸ですね。見事です。
西本 いや、だから、そういう状況ですから、
すぐに更新できなかったという意味ですよ。
永田 そういうわけで
お待たせしてしまいましたが、
ご容赦くださいませ。
糸井 でもまあ、そんなに待たれてもないでしょ。
西本 いやいや、地味にメールが届いてましたよ。
「いったいいつ更新するんだ?」と‥‥。
永田 そのやり取りは、もうしましたよ。
西本 ぼくが直島に行ったという話も?
ふたり しました。
西本 じゃあいったい
なんの話をすればいいんですか。
永田 『新選組!!』です。
糸井 わけのわからない戻り方をしたところで
ぼちぼちはじめましょうか。
永田 はい。まずは、例の話を
しておかないといけません。
糸井 あ、あれですね。
永田 あれです。
いやぁ、びっくりしました。
西本 やられました。
今回の「テレビガイド」のMVPは、
年表を制作した茂木ちゃんです!
糸井 つまり、乳製品ですね?
ふたり 乳製品です!
糸井 まさか乳製品があれほど、
ドラマの重要な
ファクターになっていようとは!
永田 今回の記事をはじめて読む人のために
解説しておくと、
『土方歳三最期の一日』を観る前の雑談で、
鑑賞の際の資料として、
「ほぼ日」きっての歴史ファン、茂木に
糸井さんが年表の制作を依頼したと。
西本 そしたら、なぜかそれが、
「乳製品の歴史」について
妙に詳しい年表になっていて‥‥。
糸井 ぼくが茂木を怒ったわけですね。
「おれは乳製品の歴史を
 知りたいわけじゃないんだ!」と。
永田 そのあたりのやり取りは
こちらをお読みください。
西本 で、いざ、ドラマを観てみると‥‥。
糸井 やたら乳製品の話が出てくるじゃないか!
榎本が、牛乳やバターの夢を語るじゃないか!
永田 つまり、茂木の年表、ドンピシャ!
西本 そして、「テレビガイド」あてに
届くメール、届くメール、茂木絶賛の嵐!
永田 「茂木さん、すごいです!」
「茂木さんの読みがすばらしい!」
「これはもう運命です」とまで‥‥。
糸井 ‥‥‥‥どうかと思いますよね!
ふたり わはははははははは。
糸井 あれってさ、どういうことなの?
なんか茂木は知ってたの?
永田 いや、ぼくもそれを本人に
訊いたんですけどね。
まあ、茂木ちゃんいわく、
「明治といえば、
 四つ足を食うようになったんだよな」と。
糸井 はあ。
永田 で、まあ、牛とか調べてたら、
「乳製品の歴史」みたいなのがあって、
「あ、これでいいや」と。
「明治といえば、食文化の変化だよね」と。
糸井 つまり?
永田 早い話が、偶然です。
糸井 ぐ、偶然なのか、ほんとうに。
永田 完全に偶然なんですよ。
あやうく、年表から
「乳製品」にまつわる部分を
ぜんぶ取っちゃうところでしたよ。
西本 ていうか、まえの記事では、編集の都合上、
「この年表は妙に乳製品に詳しすぎるぞ」
くらいの甘い指摘になってましたが、
現場ではけっこう厳しく指摘してましたからね。
糸井 そうだった、そうだった(笑)。
永田 いや、それどころか、
糸井さんは茂木ちゃんを呼びつけて
「茂木さぁ〜、これさぁ〜、
 こういうんじゃないんだよぉ〜」
みたいに直接文句言ってましたからね。
糸井 「どうなんだ、これは!」とね。
いやぁ、まいったなあ。
実際、茂木もつくり直したんだよね?
永田 つくり直してましたが、
まあ、乳製品部分を削除することもないかと
いうことで、そのままに。
西本 結果的に、茂木年表、ドンピシャ!
糸井 まあ、あえて違う見方をすると、
三谷さんと茂木が、ともに
「歴史ファン」であるというところに
カギがあるのかもしれませんよ。
つまり「ざんぎり頭をたたいてみれば」という
歌のようなことは、年表に書くと、
一行で終わってしまうけれども、
「乳製品」には歴史があるぞ? と。
西本 「これは、ひっぱれるぞ」と?
糸井 そうそう。
永田 ていうか、「歴史ファン」というだけで
三谷幸喜さんと茂木ちゃんを
並列に並べちゃいますか。
西本 かたや新春ドラマの脚本で、
かたや雑談記事のおまけの年表ですよ?
糸井 だって、そうでも言わないと、
「乳製品について詳しすぎる」と言った
オレらの立場がないだろうよ!
永田 あと、考えてみれば、一昨年の後半、
ぼくらは『新選組!』について、
かなりの時間を費やし、熱く語り、
それこそ何万字もコンテンツに
してきたわけじゃないですか。
糸井 そのとおりですよ。
永田 ところが、コンテンツの最後の最後で、
「茂木ちゃん最高!」という結論ですよ。
西本 オレたちの半年間はなんだったんだ。
糸井 ‥‥‥‥どうかと思います!
永田 腹が立つから宣伝しておきます。
そんな茂木が毎日ちょっとずつ
趣味のようにしてつくっている
歴史コンテンツが、
「歴史ごめんなさいクイズ」です。
西本 腹が立つからほめておきましょう。
おもしろいですからぜひどうぞ!
糸井 腹が立つなあ。
‥‥ぜひ、お読みください!
永田 ま、それはそれとして。
そもそも糸井さんが注目していたのは
当時の日本と欧米列強の関係、
みたいなものだったわけですよね。
糸井 うん。まあ、ようするに、
当時、アメリカというお兄ちゃんを
金で雇って独立国を作るということが
榎本の国際的視野だったと思うんですよ。
あんまりたとえはよくないですけど、
外国のマフィアを使って
日本のやくざを退治するみたいなことですよね。
いま、歴史の結果を知ってると、
まるっきり夢物語みたいに聞こえますけど、
そのビジョンは、当時、
夢物語じゃなかったんじゃないかと
ぼくは思うわけです。
で、そのあたりが年表になってれば、
ドラマを観るまえに
おもしろいかなと思ったのですが‥‥。
西本 「乳製品」だったと。
永田 乳製品の話はもういいってば。
糸井 ま、官軍が率いているのだって
できたばかりの軍隊なんですから
そんなに強いわけないんですよ。
ドラマのなかでも土方軍のことを
「軍隊としては最強」って言ってましたけど
やっぱり脅威だったはずなんですよ。
そこにね、雇われた
アメリカの黒船が加わって、
旧徳川の勢力が集ったら、
独立国がつくれると信じられたと思うんです。
つまり、アメリカ&徳川?
アメリカ&佐藤B作?
アメリカ+B?
永田 なにを言ってるんですか。
西本 つまり、「A+B」ですね!
糸井 そう! A+B!
それをE(榎本)がまとめるわけだ!
永田 どうして記号にしたがるんです。
糸井 つまり、(A+B)×Eだ!
※編集部注:(アメリカ+佐藤B作)×榎本
永田 こんなくだらない話してていいんですか。
糸井 しかもそこにHが加わるわけでさ。
永田 Hってなんですか。
西本 「HIJIKATA」ですよ、土方!
糸井 いわば、(A+B)×E/H!
※編集部注:
(アメリカ+佐藤B作)×榎本/土方
それが矢印となって、
新政府を攻めるわけだよ。
つまり、(A+B)×E/H→S!
※編集部注:
(アメリカ+佐藤B作)×榎本/土方→新政府
これはね、勝てると思っただろうよ。
永田 さんざん待たされたあげく
わけのわからない記号を読まされる
読者の身にもなってください。
西本 もとはといえば
佐藤B作さんの「B」が罪ですね。
糸井 実際、信じて突っ走っていれば、
どうなったかわからないよね。
まあ、ぜんぶ推測ですけど、誤算だったのは、
自分たちがオトナになっていたことですよ。
これはあぶないんじゃないかとか
こうだとすればこうなるとか。
戦術の話ばっかりしてたじゃない。
西本 模型の充実ぶりが
机上の空論を見事に象徴してましたね。
永田 ものすごいジオラマだったよね。
大鳥圭介が、細かく模型をつくってるシーンが
一瞬入ってるから成り立つんだよな。
あのあたりの見せ方はあいかわらず
周到だなあと思いました。
糸井 あの模型をつくるところはね、
三谷さん自身の姿だと思うんですよ。
つまり、三谷さんに代表される歴史ファンの姿。
永田 あああ。
「ここがこうなら、こうだったかも」を
考えるたのしみを持ってるという。
糸井 そうそうそう。
あそこの吹越満は三谷さんなんだよ。
つまり、H=M!
永田 そういうのはもういい。
西本 もとはといえば
佐藤B作さんの「B」が罪ですね。
永田 数式抜きでお願いします!
糸井 あ、「オレの愛した数式」?
永田 こんなくだらないこと話してていいんですか。
西本 渋谷陽一の「ロック因数分解」ならぬ、
糸井重里の「新選組因数分解」ですか。
永田 だから、分解しなくていいって。
糸井 因数分解はともかく、
あのあたりの連中のなかで、
変わりゆく外圧の影響を
いちばん身にしみてわかってたのは
あのヒゲワインだと思うんだよ。
ふたり ぶははははは、「ヒゲワイン」!
糸井 そう。
西本 「カマキリ将軍」なみのインパクトですね。
永田 うん。連載中だったら
あっという間に浸透しただろうな。
糸井 まあ、ともかく、歴史ファンの三谷さんが
ああいう歴史を凝縮したような模型を準備して
それをかこんで土方たちが
話し合うという論争劇、
あそこは見応えがありましたよねえ。
永田 はい。というか、『土方最後の一日』の、
ドラマの核があの場面だったと思います。
糸井 おもしろかったよなあ。
攻めてくる側も自信がなかったということも
表されているわけでさ。
官軍の必死さが
山越えをさせてしまったんだよね。
あれがねえ。痛かった。
西本 あの上陸の絵、
官軍の山越えだとは思わなかったんですよね。
そのあたりがうまいなあと思いましたが。
永田 そうそうそう、あれ、
「官軍が総攻撃の準備をしてるのね」
くらいに思ってた。
西本 じつは、ドラマのはじまりから随時、
「山越えを準備してた官軍」
が描かれていたわけで。
土方と視聴者がともに
「しまった!」と感じる見事な演出でした。
糸井 じゃ、そういう、記憶に残った
場面やセリフを各自、挙げてみましょうか。
永田 うわぁ、びっくりした。
西本 びっくりさせられますね。
糸井 どういうことですか。
西本 糸井さんがめずらしく
ふつうの進行役をやるからですよ。
糸井 失礼な!
ぼくがこれまでいくつの対談の
仕切りをやってきたと思ってるんですか。
西本 外で大事な対談の仕切りをしっかりやるぶん、
テレビガイドは、やりたい放題じゃないですか。
永田 そのとおり。野放図とはこのことです。
糸井 印象に残ったシーンを
挙げるのか! 挙げないのか!
ふたり 挙げます、挙げます。
糸井 じゃあ、にしもっちゃんから。
西本 オレですか!
そういうの、弱いんですよねえ。
ええと、いろいろあったんですけどね‥‥。
糸井 もっと、ポンポン来いよ、
めずらしく仕切ってるんだからさ!
ほら、あるだろう、たとえば、
「写真をあずかった少年が
 草原を走っていくシーン」とかさ!
西本 って、それ、思いっきり、
ラストシーンじゃないですか!
糸井 いや、まあ、たとえばの話だよ。
永田 あそこの、スタッフの
クレジットのエンドロール、
めちゃめちゃ速かったよね!
ずらずらずらーーーって。
西本 ドラマの尺が1時間半だから、
ぎゅっと詰め込んだんでしょうね。
糸井 みんな忙しかったんだよ。暮れだから。
西本 なんスか、それ。
永田 意味わかんない。
糸井 印象的なシーンを
挙げるのか! 挙げないのか!
永田 挙げますってば。
ええと、じゃあぼくは、
ちょっとベタかもしれませんが、
永井さまの、
「『ごめんなさい』でいいじゃないか」
ですかね。
糸井 Bね。
永田 記号の話はもういいです。
「死んだ近藤勇に申しわけがたたない」
っていう土方を前にして、
「『ごめんなさい』でいいじゃないか」
っていうのは、すごいなあと思いましたね。
脚本の力というか、ことばの力というか。
糸井 なるほどなるほど。
じゃあ、にしもっちゃん。
西本 ぼくが気になったのは
南野陽子さんの出番って、
あれだけだったのかなあということですね。
永田 え?
糸井 どういうことですか?
西本 ほんとは南野陽子さんのシーンって
もっと多かったんですよ。
ちょっとしたラブストーリーというか、
最初は大鳥圭介が
南野陽子さんに惚れているんですけど
いつもないがしろにされてると。
そこに土方がやってきて
土方にもっていかれる的な展開がね‥‥。
永田 え、あったんですか?
西本 ‥‥あったんじゃないかなぁと。
永田 なんだそりゃ!
糸井 志の輔さんの枕じゃないんだから。
西本 「ホタテがぶわーっと海面に‥‥」
永田 「‥‥そういうことが
 あったらおもしろかろうなぁと」
糸井 こんなこと言ってていいんですか?
西本 というわけで
糸井さんの印象に残ったシーンを!
永田 さあ、来い!
糸井 言いましょう。
「あんた、
 死に場所を探してるんだろう?」
という榎本のセリフですよ。
西本 え! ずりー!
永田 ど真ん中じゃないですか!
糸井 ど真ん中でなにが悪い!
永田 てっきり、
「意外にここが好きだった」とか
そういう話だと思いましたよ。
糸井 しかしながら、ちょっと視点が違いますよ。
西本 といいますと?
糸井 あれはね、三谷さんが、
視聴者に向けたことばでもあると思うんですよ。
つまりね、視聴者に向かって、
「あなたたち、ようするに、土方歳三の
 死ぬところを観にきたんでしょう?」
ということなんですよ。
永田 あ!
西本 なるほどぉ。
糸井 土方歳三が死ぬ話なんだな、
泣かせてもらうよ、とみんなが思ってるなかで、
それだけを期待されてる三谷さんがね、
「これは、土方歳三が死ぬドラマじゃなくて、
 土方歳三が生きようとするドラマなんだ」
と言ってるわけですよ。
だって、ぼくもそうだったけど、
みんな、そうだったでしょう?
「どう死ぬんだろうか」って思いながら、
「さあ、泣かせてもらうぞ」って思いながら
観てた自分がいるでしょう?
そしたら違ったじゃないですか。
永田 そうですね。
あの軍議の場面から、
いろんなドラマの要素がガラッと変わって、
わくわくする展開になりましたからね。
西本 ぼくは、あの戦闘では
土方が死なないのかな?
死ぬのはもうちょっと先なのかな、
というふうにさえ、思いましたよ。
永田 そうそう。ありえないんだけど、
一瞬、そんなふうに思った。
『新選組!』の本編でもそうだったけど、
三谷さんって、
「え、ここは歴史を曲げちゃうのかな?」
って不安にさせておいて
最後は歴史どおりっていう
盛り上げかたがうまかったじゃないですか。
あの軍議の場面も、
ただの憎まれ役だったと思った榎本が
いったん土方をやり込めたりして、
これは大鳥が裏切ったりとか
しちゃうのかなと思ったら、
がっちり握手したりして。
糸井 あそこでいろんなポイントが
ガラッと変わるんですよね。
永田 そうです、そうです。
よくできたミステリーの
クライマックスを観てるようでした。
糸井 『12人の優しい日本人』、ね。
永田 まさにそうですね。
『十二人の怒れる男』もそうでしたけど。
糸井 舞台に思えたよね。
西本 役者さんたちも、
あれをできる人たちをそろえたんでしょうね。
舞台だと吹越さんのリアクションなんかも
楽しめるところですよね。
机の下にじっといて、
細かく芝居する吹越さんとか
実際のお芝居だったら、
きっとすっごいおもしろいはずですよ。
糸井 だから、いままでの『新選組!』とは
ぜんぜん違う味のおもしろさだよね。
三谷さんの劇場に行った感じ
みたいなものがあったよね。
永田 ありました、ありました。
糸井 そういうこともあって、
『土方歳三最期の一日』というのは
「そう来たか!」という外伝として観るには
ものすごくおもしろかった。
観るまえって、やっぱり
『新選組!』の続きとして
観たがってたじゃない?
西本 ああ、そうですね。
永田 『新選組!』のエンディングとして
観たがってたという。
糸井 そう。
もうエンディングはとっくに終わってるのに。
ぼくも、観るまえの雑談で、
「『新選組!』に続きがあるんだから観たい」
と言ってたけど、そんな自分に
コラ! とゲンコツを入れたいですね。
永田 あの、『ツインピークス』
映画版ってあったじゃないですか。
『ローラー・パーマー最後の七日間』
あれって、本編のものすごい謎解きが
一気にされるのかなと思ったら
ぜんぜん違う作品だったじゃないですか。
糸井 あー、そうだったね。
永田 あそこまで違う方向性のものじゃなかったけど
しっかり外伝として
つくられてたなと思いましたね。
西本 とはいえ、『新選組!』を期待する人への
サービスもきちんと盛り込んでありましたよ。
土方の「待たせたな!」だったり、
山南さんや沖田をまじえた
朝食の場面だったり。
永田 そうそうそうそう。
あのあたりのサービスはさすが。
糸井 その朝食に香取くんがいないことまで
きちんと説明してたりね。
ふたり そうそうそう。
糸井 重苦しくないあたりに
きちんとバランスをとってるんですよね。
あのコルクにしても、
続きとして観てる人には泣けるし、
ひとつのドラマとして観てる人には
「なんかあったんだろうな」って
思わせるくらいのレベルで
調整して出してるじゃないですか。
あのへんのさじ加減というのはもう、
三谷さんの資質なんだろうな。
西本 そのへんを両方やりながら、
1時間半におさめてるのは
すごいですよね。
糸井 うん。あれをね、
長々と書き込んでいったらね、
重くなったりする部分もあったと思うよ。
永田 土方の最後のシーンも
もっと長く、もっと泣けるように
つくれるはずですからね。
糸井 そこだけを
「これを待ってたんだろ?」
というふうに書いて、『新選組!』ファンが
「泣けました!」っていうふうにすることが
いちばんわかりやすいやりかたでしょうから。
永田 だから、ぼく、
土方の最後のところは泣かなくて、
意外に、蟻通が死んだところで
不意打ちで泣いちゃったんですよ。
糸井 不意打ち?
永田 「土方が生きるドラマ」になって、
そっちがわくわくしはじめたころに、
蟻通が死ぬでしょう?
で、あの人だけ、ちゃんと死ぬじゃないですか。
四方から官軍に突かれて、照英さんが絶叫して。
あそこだけ、『新選組!』のエンディングの
記号のようになってる感じがして、
急によみがえって泣けちゃったんです。
糸井 ああ、なるほどね。
そういえば、オープニングに
「♪いとしき〜」もなかったよね。
まあ、時間の都合もあるんだろうけど、
『新選組!』のエンディングをつくるつもりは
きっとなかったんだろうね。
西本 最後の「‥‥かっちゃん」も、
泣かせようとするものじゃなくて、
挨拶のような、記号的なものでしたし。
糸井 あれくらいで、いいんだよ。
「これとこれとこれは、
 絶対に登場しますよね!」
というユーザーからのリクエストを
いちいちすくってたら、それを入れてるだけで
1時間半がすぎちゃうんだよ。
そこの味つけを変えるために
「死に場所を探してるんだろ?」
を入れることによって
バーン! と向こうに押しやったわけで、
その、「つくり手としての戦い」はね、
多少なりとも、つくり手をやっている
ぼくなんかからしてみると、
ほんとうに偉いなと思うんですよ。
西本 ぼくは、自分の仕事が
プロデューサー的なことが多いんで
感じるんですけど、
待っているお客さんだけじゃなく、
つくっているスタッフも
ば〜りばりに『新選組!』を引きずりながら
現場にいるはずなんですよ。
糸井 ああ、そうだよね。
西本 小道具さんも美術さんも
見えないところでこっそりと、
「これがあると、いいっすよね」みたいな
仕事の準備ををしてると思うですよ。
永田 何も言わずにコルクを準備してるみたいな。
西本 そうそう。
「じつはここのセットでは
 3話のあのシーンでのものを
 使ってるんですよ」的な。
永田 捨てずに取っておいたりね。
糸井 たとえばこの旗はどこで焼けたか、
っていうのを
美術さんは説明できますよね。
西本 きっと、できるんですよ。
永田 だから、ものをつくる人に必要なのは、
それを美術さんに言われたとき、
ここでは必要ないんだと感じたら、
「その旗はいらない!」
と言う強さなんでしょうね。
それを、ぜんぶ
「せっかくつくったから」とやっちゃうと、
言いたいことがなにも表現できない
1時間半になっちゃう。
糸井 そうなんだよー!
それにいちいち応えていっちゃうと、
『2』だろうが『3』だろうが、
誰もおもしろくないものになるんだよ。
お客さんのために
よかれと思ってやってるにも関わらず
結果的に誰もよろこべなくなる。
だから、「受け手としてたのしむ」
ということを、純粋にやり続けてないと、
つくり手にはなれないんだよ。
「うわーっ、オレはここで喜ぶんだ!」
ということを知ってないと。
あの、どちらかというと濃いと思われる
『新選組!』ファンの期待を一身に受けながら、
荒波を乗り越えて、
あれをつくっちゃうんだから、
もうすごいな三谷幸喜。
だから、今回のドラマは、
「泣くんだろうな」と期待してた自分が
バーン! と叩かれたわけだけど、
そのぶん、真剣には観てたよな。
永田 そうですね。
西本 遅まきながら確認ですけど、
おふたりは、泣いたんですか?
永田 物理的に?
ぼくは、さっき言った
蟻通のところだけですね。
土方の最後も、冷静に受け止めました。
糸井 ぼくは、物理的には泣いてません。
そのぶん、思った以上に真剣に観てました。
それこそ、歴史のことなんかを考えながらね。
西本 ぼくは例によって泣けない男なので
泣いてませんが、
テンションとしては、
3人ともいっしょということですね。
永田 うん。泣かずに真剣に観てた。
あの、個人的なことでいうと、
ぼくの「泣く」という意味でのピークは、
本編の最終回1コ前、「流山」を観おわって、
最終話の予告が流れた瞬間なんですよ。
近藤が加納に話しかけて、予告が流れて、
なんか龍が描いてあるみたいな座敷牢に
無精ヒゲの近藤が座ってたり、
野際陽子さんが叫んでたりするなか、
斬首される近藤がつねをチラッと見上げる瞬間。
糸井 あーーー、あれね、うんうん。
永田 あの瞬間以降というのは、もう、
エンディングを観てる感じなんです。
糸井 最終回もエピローグっぽかったよね。
だからあれに対して
まだ続きを見せろというのは、
土方の動きも同じだけど
まったく違う視点がないと無理なんですよね。
それが、まあ、今回は、
乳製品的なものにいったと。
西本 「あっぱれ茂木!」ですよ。
糸井 ケガの功名に近いものだけどな。
あいつに「ケガの功名」という
Tシャツを着せたいよ。
永田 大喜びで着そうですね。
茂木ちゃん、
徳川の葵の御紋のTシャツとか
しれっと着てますからね。
糸井 たんなる偶然なんだけどなあ、
乳製品の年表は。
永田 偶然でいうならば、にしもっちゃんが
何人もの『新選組!』関係者に
街で出会ってるというのも
ものすごい偶然なんだけど、
そういうのはちっともほめられなかったね。
西本 ええ。まるで反応がなかったですね。
糸井 そりゃまぁ、そうだろ。
西本 でも、オレ、『新選組!』の
メインの人たちは、ほぼ観ましたよ。
永田 だからさぁ、そこで「ほぼ」とか言うから
いけないんだよ。
「ほぼ」観てるわけないじゃん!
西本 いや、ほら、山本耕史さんも観ましたしね。
糸井 そりゃ街で出会ったんじゃなくて、
「スタジオパーク」の収録のときに観たんだろ。
西本 あのね、山本さんって、意外に背が高いんです。
永田 そうそう。ドラマだと、ほら、
香取さんがデカいから、
そんなにデカく感じないんだけど、
実際にお会いすると背が高い。
糸井 あ、なるほどね。
逆に意外に小さいのは山本KIDさんだよね。
西本 ああ、あの人は小さい。
永田 『新選組!』コンテンツをしめくくる
最後の最後でどうして
山本KIDさんの話になるんですか。
糸井 だって山本つながりじゃん!
永田 そんなん、ほとんどつながってない!
西本 あと、両方とも強いしね。
糸井 そうそう、両方とも筋肉質。
永田 こんなんでいいのか。
終わりますよ、ついに。
西本 おつかれさまでした!
糸井 ありがとうございました!
ふたり ありがとうございました!


美術部





読者の部


=
見終わって、ぼーっとしてます。
あっという間に終わりました。
土方歳三の最後の場面は、
予想外に不意打ちを食らったようで
どきっとしてしまいました。
そして見終わって、
なんだか涙がはらはらと流れました。
悲しいドラマを見て泣いたとは違うような、
なんとも言い表せないような気分の涙で。
今久々に、去年の『新選組!』を
あれこれ思い浮かべています。
かっちゃんが迎えにきてくれて、良かったです。
(浩子)


=
息を詰めた状態で見届けました。
一昨年最終回を見終わったとき、
香取慎吾さんの勇が人生最後の瞬間に
「とし」って呼んでくれたことを、
歳三が知らないで死んで行くのは
あんまりだと思ってました。
でも三谷さんはちゃんと救いを作ってくれました。
歳三は勇の穏やかな最後の笑顔を見ることができた。
ドラマだからこそ出来ること。
「生きぬこう」って意志を持つだけで
こんなにも光が見えてくる。
あとはDVD化まで
スタンディングオベーションを続けるのみです。
(あさひ)


=
ものすっごい面白かった。
試衛館メンバーが回想シーンで登場する事は
事前情報として知っていたけど、
ただ懐かしむだけの回想シーンではなくて、
「ぬえ」というキーワードを
深く印象づけるシーンになっているし、
おそらくはスケジュールその他的な問題で
出演しなかったと思われる香取さんが
登場しない理由を山南さんに説明させて、
近藤勇がその場にいない事を必然とした。
お見事!
写真と一緒にコルクを託すシーンは
総集編で何故かみつが持っていたコルクと、
斉藤が会津に残る旨を土方に伝えるシーンは
斉藤が会津で晩年を過ごした史実と
それぞれ繋がっていて、あーすっげー、
三谷さんのドラマってすっげーなーと
ただただため息が漏れるばかりです。
そういえば三谷さん、DVDの解説書で
「容保公が勇の戒名を付けた事を
 描けなかったのが心残り」って
言ってたのを今回きちんと実現させてるし、
それにこのシーンの冒頭、土方の
「ここではだめだ、もっと上だ!」は、
どこかで聞いた事のあるエピソードだと思ったら
他でもないほぼ日で、他でもない山本さん本人が
語ってる事じゃないですか!
ああ見える‥‥
三谷幸喜の「してやったり顔」が見える‥‥。
ドラマの放送時間が「一時間半」って聞いた時は
最初は「短かっ!」って思ったけど、
終わってみれば無駄のない、
悲しい結末なのに後味は清々しい、
超おもしろい続編でした。
(もり)


=
永倉さん、左之、尾形、八木家、
みんなどうしているでしょう。
野口くんは、加納さんは。
島田が西本願寺の守衛になったとき、
寺侍の西村さんは
何と言って迎えてあげたのでしょう。
岩倉は使節団として西洋へ赴き、
もう帰るとかぼやきながらも
適応していくのでしょうか。
大久保はあの鋭い目で、
ここが正念場と彼なりに闘っているのでしょう。
と、続編に登場しない人々にも
思いを馳せてしまう作品でした。
みんな力いっぱい生きていた。
今はどこでどうしているのでしょう。
(マナ)


=
先日、銚子の海岸を歩いたおりに、
「三嘉保丸遭難の地」
と書かれた看板と石碑を見つけました。
1868年の項にあったようで、
榎本武揚は軍艦八隻を
率いて脱走したのですが、
ここで暴風雨に会い、
二隻と人を失ったんですね。
蝦夷地で戦う前から、
土方達は大変だったのだなあと
まだ見ぬお正月ドラマに思いを馳せたのでした。
(マリオ)


=
土方さんが馬で走っていった、
両脇に柵がある一本道と、
最後に鉄之助くんが走った草原は、
長野県の「美ヶ原」というところで
撮影されました。
私が、大好きなところです。
そこで「尾崎喜八」
という人が詠んだ詩を調べようと、
先日ネットを見ていたら、
全文見て、びっくりしました。

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登りついて不意に開けた眼前の風景に
しばらくは世界の天井が抜けたかと思う
やがて一歩を踏みこんで岩にまたがりながら
此の高さにおける此の広がりの把握に尚もくるしむ
無制限な おおどかな
荒っぽくて 新鮮な
此の風景の情緒はただ身にしみるように本源的で
尋常の尺度にはまるで桁がはずれている
秋が雲の砲煙をどんどん上げて
空は青と白との目も覚めるだんだら    ★
物見石の準平線から和田峠の方へ
一羽の鷲が流れ矢のように落ちていった
---------------------------------------------------

★の行です。
新選組と縁があったとしか思えません。
もちろん偶然だと思いますけど‥‥。
(にこにこ)


=
いい意味でいっぱい裏切られました。
実をいうと思ったより、泣けなかったんです。
正直、楽しかった試衛館時代や
がむしゃらにやった京都時代なんかを
フラッシュバックしながら、懐かしさ満載で、
華々しく散っていくことを想像していたのです。
が、
榎本の言葉に、土方だけでなく、
私もはっとしました。
「あんた死に場所をさがしてるんだろ?」
そうです、土方がどんな風に死ぬかだけを考えて、
見ていました。
そんなお涙頂戴だけのドラマにはしませんよ、
と三谷さんに見透かされたような気がしました。
土方だけではなく視聴者までひっくり返すとは‥‥
さすが三谷!
呼び捨てにしちゃうぞ、やい三谷!
そこからはつい、
土方といっしょに未来を見てしまいました。
歴史は知ってるのに、
「最後の一日」なのに、
本気で、勝つような気がしました。
「俺と一緒にいれば死なない」
ような気がしました。
(さてらいと)


=
つい先日、
友達と流山の付近をドライブしていました。
彼は、あの歌を歌い始め、
二人でしばらく『新選組!』に思いをはせていました。
なんで彼はフルコーラス歌えるかという
疑問をはさむ余地もありませんでした。
それぞれに、思い入れのあるドラマなのですね。
(うき)

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2006-01-19-THU

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