第1回 ひと懐っこく、気難しいひと。 淀川長治さんは こんなかたでした。
淀川美代子さんは こんなかたです。
第2回 叔父さんの、英才教育。
第3回 あの解説は、映画1本分の価値。
第4回 映画を観ないと人生、損をしますよ。
第5回 宮崎駿さんが大好きでした。
第6回 死ぬのは無念だったと思います。
第7回 「ララミー牧場」から「日曜洋画劇場」へ。
最終回 映画観るのは、これからですよ!
 
 
ひと懐っこく、気難しいひと。
糸井 先日、「ほぼ日」のみんなで
『淀川長治の名画解説』(DVD)を
観たんですよ。
すばらしかったです。
「ほぼ日」のコンテンツは
タイトルのすぐそばに
「こういう内容ですよ」ということが
わかるような短いリード文を
つけているんですけれど、
ぼくたち、それを「ヨドガワ」って
敬意をこめて、呼んでいるんです。
もちろん淀川長治さんの
「日曜洋画劇場」の解説がヒントです。
淀川さんのだれにでもわかる平易なことばで
「よし、じゃあ観てみよう!」と
思ってもらえるような解説は、
ぼくたちのお手本なんですよ。
淀川 どうもありがとうございます。
あのDVDを目に留めていただいて、
見ていただけたということが、
ほんとうにうれしくて。
糸井 ぼくは淀川長治さんのことを
よく知っているわけではないんですけれど、
知ってる限りで言うと、
映画会社の方だったんですよね。
淀川 ユナイテッド・アーティスツという
映画会社の宣伝部を経て
『映画之友』(のち『映画の友』に改題)
という雑誌の編集長を
1968年に廃刊になるまで、
長くつとめていました。
糸井 ぼく、『映画の友』って読んでましたよ。
淀川 あ、そうですか!
『スクリーン』という雑誌もあって。
糸井 『スクリーン』と『映画の友』、
もうひとつ『キネマ旬報』があって。
淀川 ええ、そっちの方が
ちょっとコアな映画雑誌。
『映画の友』と『スクリーン』が、
いわゆるメジャーな映画雑誌でしたね。
『スクリーン』の編集長が
女性だったんですね。当時では珍しく。
叔父はすごく『スクリーン』に
ライバル意識を持っていました。
糸井 そうですか!
淀川 映画スターが来日すると、
お互いにしのぎを削って会いたいわけです。
そんなとき、
女性編集長のほうがちょっと
得だったりして。
糸井 今みたいに外国のスターが来たときに
みんなが大勢で記者会見をする、
っていうことはなかったでしょうしね。
淀川 そうですね、テレビに出ることも
あまりなかったでしょうね。
だからとても会いたかったみたいです。
今日、そういうのは必要ないと思って
持ってこなかったんですけど、
叔父がハリウッドに行って、
映画スターに会ったときの写真が
いまでも山のようにあるんですよ。
叔父はスターに会ってサイン貰うのが趣味!
糸井 (笑)個人的な趣味だったんですね。
淀川 お相撲さんみたいに手形取っちゃって、
その横にサインしてもらって。
糸井 へえ!
あの人に頼まれたら断りにくいでしょうね。
淀川 そうなんでしょうね。
糸井 はじめて会うのに、親しく感じるみたいな。
お茶目な部分とか、
ものすごい人なつこく見える部分が
あるんですよね。
淀川 そうですね。
一緒にいると恥ずかしいぐらい、
人なつこいんですよね。
糸井 そうですか。たとえば、落語家の人とかは、
もう家ではむっつりしてる、
っていうお話もあったけれども、
そんなことはなかったんですか?
淀川 いや、やっぱり、
気難しいところのある人でしたよ。
糸井 気難しいですか。
恐かったとか?
淀川 ええ、恐かったですよ。すごく。
家でも話は面白いんだけど、
気難しい部分もあって、
半々なんですよね。
糸井 うわあ。どこでチェンジするんでしょう。
ご一緒に住まわれていたんですか。
淀川 そうなんですよ。一緒に住んでいたんです。
叔父には父親のように
よくしてもらいました。
叔父は、うちの母親と姉弟で、
わたしも父親がいなくて、
叔父は家族がいなくて、
わたし、母親、祖母、叔父の4人という、
地味な家族だったんですけど。
糸井 長く一緒にいられたんですか。
淀川 そうなんですよ。
高校生ぐらいまではずっと。
叔父は後半はずっと
ホテル暮らしでしたけれど。
糸井 じゃ、すごく影響を与えられたんですね。
淀川(美代子)さんが、
お生まれになったときには
もう叔父さんがいらっしゃったんですか?
淀川 物心ついたときはいたんですね。
糸井 じゃもう、毎日ですね。
淀川 そうですね、毎日。
糸井 一緒にご飯食べた。
淀川 そうです。
糸井 そんなに深い間柄だったんですね。
淀川 そうなんですよ。父親ですね。
小学校のときとかは、すごい勝手な、
今では考えられないようなこともあって。
「今日は試写会があるから早退しておいで」
って言われるんです。そうすると先生にね、
「今日、試写会なんで早退します」
「はい、どうぞ」って。
いい時代ですよね。
糸井 (笑)そういう雑さがほしいですねー。
淀川 ええ、もう2週間に1回は
早退してましたね。
糸井 そうですか。そのときには
その「いいよ」って言う先生は、
叔父さんが、あの、
にぎにぎした叔父さんだっていうことは
知ってたんですか?
淀川 いえ、時代がもっと前ですから。
テレビとかに出る前なので‥‥。
糸井 じゃもう全然、
ただ、早退なんですね(笑)。
淀川 でも一応は、知ってたと思います。
映画が好きな家族で、
映画に行くんだろうみたいな感じ。
そんなふうに小学校のときから
映画、いっぱい観せてもらっていたんです。
糸井 とんでもない英才教育ですね、それは。
淀川 そうなんです。それで観てきて、
その日の夜にその感想を
言わないといけないんですよ。
糸井 小学生でも?
淀川 そう、小学生でも。
どうだった? って。
  (つづきます)
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テレビ朝日の「日曜洋画劇場」放映40周年を記念して
製作・販売されたDVDです。
本編に、淀川長治さんの映画解説50本を収録。
それぞれ、番組の最初と最後に放映されたコメントが
おたのしみいただけます。
特典映像として、現存するいちばん古い録画と、
淀川さんの最後の収録となった映像を収録しています。

【タイトルライナップ】

・荒野の用心棒
・史上最大の作戦
・燃えよドラゴン
・ローマの休日
・旅情
・ダーティハリー
・サイコ
・激突!
・ミクロの決死圏
・ハリーとトント
・オリエント急行殺人事件
・暗くなるまで待って
・戦争と平和
・アラビアのロレンス
・サタデー・ナイト・フイーバー
・ベン・ハー
・2001年・宇宙の旅
・シェーン
・エデンの東
・俺たちに明日はない
・ファール・プレイ
・がんばれ!ベア−ズ
・ゲッタウェイ
・ある愛の詩
・アメリカン・グラフィティ
・天国から来たチャンピオン
・スーパーマン


・ゴッドファーザーPART II
・JAWS・ジョーズ
・戦場のメリークリスマス
・普通の人々
・タワーリング・インフェルノ
・アマデウス
・めまい
・キングコング
・プロジェクトA
・ワンス・アポン・ア・タイム・
  イン・アメリカ
・ゴーストバスターズ
・007/ネバーセイ・
  ネバーアゲイン
・スター・ウォーズ・
  ジェダイの復讐
・刑事ジョン・ブック
・ダイ・ハード
・スティング
・羊たちの沈黙
・逃亡者
・シザーハンズ
・レイダース・失われたアーク
・王子と踊子
・ターミネーター
・バック・トゥ・ザ・
  フューチャー PART2
≪映像特典≫
・大いなる西部
・ラストマン・スタンディング
 
 

僕がテレビ朝日に入社して、
『日曜洋画劇場』のスタッフに加わったのが1983年。
番組がスタートしてからすでに17年が経っていました。
そのころは収録の進行もずいぶん軌道にのっていて
現場にもなごやかなムードがすこしはあったんですが、
番組が始まったばかりのころは、
淀川さん、かなりピリピリしていたらしいですよ。
すごい緊張感だったときいています。
私語厳禁だったらしくて。
会議中はもちろん、スタジオでもどこでも
これから語る映画以外のことを話しちゃいけないっていう。
‥‥真剣勝負だったんでしょうね。

 
「日曜洋画劇場」を見るたびに、見ている人は
1人でも2人でも、あるいはお家族5人でも、
13歳以上はアキカンに1名100円をお入れください。
たまりますぞ!
映画に登場した土地を必ずあとで
地図を取り出して調べてみましょう。
ハハァン、クリーブランドとはここだったのかとか、
ダコタはここか、とかと
いっそういま見た映画が楽しめます。
犯人探し映画の場合。途中の3分の2までのところで、
あれが犯人だ‥‥と当てっこしてみましょう。
お家族で、あるいは友人たちで、
それぞれの探偵実力を比べ合っては
いかがでしょうか。
あと解説で淀川はきっとこのように解説するだろう、
いや、こう解説するよきっと‥‥と、
あとコマーシャルのところで、
みなさんで話し合ってください。
さあ、コマーシャルが終ったぞ、
どう解説するかな、何をこの映画から取り上げるかな‥‥
という憶測の当てっこはいかが。
 
2007-08-13-MON
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