THE OTHER SIDE OF SPACE SHUTTLES AND THE EARTH
 
 
 
見たことのないシャトル、 見たことのない地球。 瀧本幹也さんの最新作『LAND SPACE』がすごい。
写真家の瀧本幹也さんが 「スペースシャトルの写真集」を出しました。 これが、滅茶苦茶かっこいいのです。 え、スペースシャトルの写真なんて 何度も見たことあるけど?  ‥‥はい、たしかに、そうですよね。 でも「このシャトルは見たことなかった!」 そういう写真が並んでいるのです。 何度も何度もケネディ宇宙センターへ通っては 試行錯誤を重ねつつ、 シャトルの写真を撮りためた、瀧本さん。 この至近距離、このディテール、 この「解像度」の高さ‥‥クギ付けになります。 完全なるファン目線でまことに恐縮です。 ほぼ日・奥野が、なるべく冷静にお届けします。 瀧本幹也さんプロフィール
目次  
第1回 こんなシャトルは見たことない。
第2回 無人カメラを自分で改造。
第3回 こんな地球も、見たことない。
第1回 こんなシャトルは見たことない。
── 今日は、何よりもまず
「滅茶苦茶カッコよかったです!」ということを
お伝えしたいと思って来ました。
瀧本 あ、ありがとうございます(笑)。
── もう、自分が撮ったわけでもないのに、
人に見せまくっています。

「ちょっとこれすごくない?」とか言って。
瀧本 それは、うれしいです。
── その人が宇宙好きかどうかとかも関係なく、
写真好きかどうかとかも関係なく、
なんだか、人に見せたくなっちゃうんです。

「見て! 見て! これ、
 スペースシャトルなんだけどさ」って。
瀧本 あはは、はい(笑)。
── で、実際に見ると、
みんな「おお〜!」って、目をみはるんです。

大判の写真集ですから
まず「迫力がすごい」ということがあるとは
思うんですが‥‥。
瀧本 大きすぎて製本の機械に入らなかったので
職人さんの手作業に頼った部分も、かなり。
── やっぱり
「このスペースシャトルは見たことなかった」
という一言に尽きると思います。

もっと正確に言うなら、
「この至近距離、このディテール、
 この解像感で見たことがない」というか。
瀧本 たしかに、こんなふうに撮っている人って
そうはいない‥‥と思います。
── 外装パネルというでしょうか、
このへんのパーツも、見たのは初めてです。
瀧本 それは耐熱タイル、おなかのところですね。
 
── はー‥‥。
瀧本 これまで「スペースシャトル」の写真って
いいなあと思えるものが
あんまり‥‥なかったんですよね。

僕も、自分の作品のプロジェクトとして
やろうと決めたときに
いろいろ資料として探してみたんですけど、
なかなか。
── たしかに、いわゆる記録画像と言いますか
説明的な写真がほとんどで
この『LAND SPACE』みたいに
「作品」としての「スペースシャトル」は
はじめて見るかもしれません。
瀧本 撮りにくい被写体なんです。
── それは、どういう意味で‥‥ですか?
瀧本 もう、そのまんまの意味として。

まず、ケネディ宇宙センターに入るのが大変。
── あ、なるほど。
瀧本 それに、ようやく許可が出たとしても
打ち上げって、しょっちゅう延期になるし。
── つきものですよね、ロケットの打ち上げには。
瀧本 はじめて撮影に行ったときは
たしか打ち上げが「7回」くらい延期になって、
結局、撮影できずに帰ってきたんです。

それで、すっごく悔しい思いをして。
── 撮影するためにアメリカにまで行って、
「撮れなかった」って、
なかなか、ないことですよね、きっと。
瀧本 でも、そのときに
「もう、スペースシャトルは
 個人的な作品としてきちんと撮っていこう」
と決めたんです。
── もともとお好きだったんですか?
瀧本 ええ‥‥はい、好きでしたね。

スペースシャトルの「初飛行」は
ぼくが小学生のときで
「コロンビア」が宇宙に行ったんですけど
そういう理由もあると思います。

当時の男の子は‥‥好きじゃないですか?
── はい、僕は
「スペーシャシャトルの筆箱」と
「宇宙ステーションの下敷き」を
使っていました。
瀧本 そういう世代ですよね(笑)。
── はじめてスペースシャトルを
見たときのことって、覚えてらっしゃいます?
瀧本 たぶん、ニュース映像か何かでしょうね。

何の予備知識もないままに
あの「ヒコーキのかたち」をしたものが‥‥。
── 宇宙へ飛んでいった。
瀧本 そう、たしか、いちばんはじめのころって
外部燃料タンクが「白かった」んですよ。
── え! 赤銅色のイメージしかないですけど!
瀧本 そうそう、内部燃料の温度上昇を防ぐためと
もうひとつ、
真っ白いほうが「見栄え」がいいということで
塗装していたらしいんです。

塗料代や重量がかさんでしまうので
のちに、塗らなくなったみたいですけどね。
── 知らなかった‥‥。

でも、スペースシャトルの機体自体は白ですし、
2本のロケットブースターも白だから、
外部燃料タンクが白だったら「全身白」ですね。
瀧本 そう、その真っ白な物体が、宇宙へ飛んで行く。
── よりいっそう、かっこよさそう。
瀧本 しかも、それだけじゃなくて、
役目を終えたら「地球に帰ってくる」わけです。
── 僕は興味を持つのが遅かったのか、
物心ついたときには
もう、スペースシャトルは飛んでいたんですが
たしかに初飛行を目にしたら
「わあ、未来が来た!」って感じでしょうね。
瀧本 そう、スペースシャトルが登場するまでは、
宇宙ロケットとといえば
ミサイルみたいな形ばかりでしたからね。
── あの‥‥スペースシャトルのデザインって、
「かっこいい」じゃないですか。
瀧本 夢があると思います。子どもの夢、というか。
── 以前、シャトルに搭乗したことのある
星出彰彦宇宙飛行士に
取材させていただいたことがある
んですが
星出さん、そのとき
「スペースシャトルがかっこいいこと」は
相当、宇宙開発に貢献している‥‥と。
瀧本 宇宙のファンを増やしていますものね。

ただ、宇宙船としては、
欠点の多い機体だったらしいですけど‥‥
そこに愛着を感じたりもして。
── 宇宙へ飛んで行って帰ってくる、という
設計思想も、
機体をリサイクルしてコストを下げようという
思惑だったはずなのに、
結局、メンテナンスとかを考えると
ロシアのソユーズみたいに
使い捨てのほうが安上がりだった‥‥とか。
瀧本 スペースシャトルって
本当にボロボロになって帰ってくるんです。

大気圏に突入するときには
機体の温度が、
摩擦で「1400度」くらいになるらしくて
耐熱タイルが激しく損傷します。

写真集のなかに
「機体に付箋がつけられている写真」が
あると思うんですが‥‥。
 
── あ、あれはつまり「替えるよ」的な?
瀧本 そう、付箋は耐熱タイル交換の目印なんです。

このへん、グラスファイバー製の部分も
よく見ると縫い目があるんです、つぎはぎの。
 
── 宇宙に行って帰って損傷したところを
ちくちく補修している、と。
瀧本 そう。
── やっぱり
「この解像度だからこそ見ることのできる
 スペースシャトルの姿」がありますね。

本当に「満身創痍」という言葉がピッタリ。
瀧本 まあ、なにしろ
宇宙というのは過酷な環境でしょうから。
── ちなみに、撮影のために
ケネディ宇宙センターへは、どれくらい?
瀧本 合計で4回です。

打ち上げのタイミングに合わせて行き、
長くて2週間ぐらい待機して、撮ってました。
── 念のため確認ですが
ようするに、誰かに頼まれたお仕事ではなく、
ただ撮りたくて行っていたわけですよね?

なんというか、その、費用も「自腹」で。
瀧本 はい、そうです(笑)。
── もちろん、お仕事として撮ったとしても
素晴らしいお写真になったと
思いますけど、
でも「好きでやったからこその何か」が
にじみ出てるような気がします。
瀧本 あの‥‥現地のプレスセンターに行くと
CNNとかニューズウィークとか、
有名な報道機関の記者がたくさんいるんです。
── もう、聞くだけでワクワクしてきます。
瀧本 みんな、記者会見なんかを取材するんですけど、
基本的には、
プレスセンターからは勝手に出られないんです。

たとえば、耐熱タイルの張替えをしている棟に
フラっと入ったりはできないんですよ。
── ケネディ宇宙センターに入れたとしても
自由自在に動けるわけでは、ないと。
瀧本 で、2度めの撮影で入ったときにも
なかなか思うように
撮りたいものが撮れないなあと思ってたんです。
── ええ。
瀧本 そう思いながらプレスセンターにいたら、
「アレス」という、
シャトルの後継計画の記者発表があると。
── わ、あの、いま頓挫しちゃってるやつの。
瀧本 そのとき、ふつうの報道陣は、
当然、アレスの記者発表を取材するわけですよ。
── その仕事で来てるわけですものね。
瀧本 たしか部品の公開か何かだったと思うんですが、
みんな、その記者発表に注目してました。

でもぼくは、そのとき、すぐそこの棟のなかに
スペースシャトルの
ロケットブースターの先っぽが
チラッと見えているのを、発見しまして‥‥。
── え、写真集の最初のほうに載ってる?
瀧本 そう、そう。

「あ、あそこに
 なんか白くてとんがったデカいものある!」
と思って、
そーっと入っていって、撮ってきたんです。
── それが、この写真。
瀧本 はい。
 
<つづきます>
2013-09-17-TUE
 
    次へ
 
まず、表紙の写真におどろきました。 瀧本幹也さんの『LAND SPACE』。
だって、こんなふうに
噴煙でシャトルが隠れてしまう写真って
見たことあります‥‥か?
ぼくは、見たことがなかったので
「え、何で?」と。
いずれ、インタビューにも出てきますが
瀧本さんは、自作の無人カメラを、
一般の報道カメラマンが
「噴煙で見えないから避ける」場所へと
敢えて設置しました。
そして、この表紙の写真だけじゃなく、
いろんな「見たことないシャトル」の作品に
「地球の風景」である
「LAND」シリーズの写真を組み合わせ、
一冊の写真集をつくったのです。
「はあ、かっこいい‥‥」
と、何度も何度も見返してしまいます。
こんなに大きな写真集も、はじめてでした。
(ほぼ日・奥野)


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