25番目のピース 〜メジャーリーガー田口壮のメソッド2〜
昨年に引き続き、現役メジャーリーガー (たとえ来季の契約がどうであろうと) 田口壮選手にお越しいただきました。 カージナルスからフィリーズに移籍し、 2度目のワールドチャンピオンを経験した2008年。 しかし、田口選手自身は出場機会が少なく、 満足とはいえない成績に終わりました。 「自分は出なかったが、チームは世界一」 この結果を田口選手はどう受け止めたのでしょう? 野球ファン以外にも大好評の野球コンテンツ。 今年もおもしろいですよー!
去年の対談はこちら 野球のカミサマ、初球だけ狙わせてください。 〜メジャーリーガー田口壮のメソッド〜 田口壮選手はこんな人です
もくじ
第1回 今日は愚痴を聞いてほしいなと。 2009-02-02
第2回 ヒットエンドラン6回、スクイズ1回。 2009-02-03
第3回 それはもう、父ですね。 2009-02-04
第4回 赤鬼のリーダー論。 2009-02-05
第5回 25番目のピース。 2009-02-06
第6回 尊敬すべき選手がいるチームは強い。 2009-02-09
第7回 とにかく勝ってくれ! 2009-02-10
第8回 赤鬼は決断が遅い。 2009-02-11
第9回 すごい旅をしてますね。 2009-02-12
最終回 まだまだ学びたいことがある。 2009-02-13

第1回 今日は愚痴を聞いてほしいなと。

糸井 いやぁ、あれから1年経っちゃいましたね。
田口 経ちましたね。
糸井 この1年は、いろいろありましたね。
まぁ、簡単にいうと、フィリーズに移籍して、
チームはワールドシリーズで勝って
チャンピオンになるという
最高の成績をおさめたけれども、
田口選手としては、
「とにかく出られない」という状態で。
田口 はい(笑)。
糸井 おそらく、不振なわけでもなく、
マイナーに落ちるわけでもなく、
ずっとベンチをあたためていたという。
田口 そうなんです。
で、今日は愚痴を聞いてほしいなと思って。
糸井 ああ、言ってください、ぜひ(笑)。
田口 ま、今年1年は、愚痴ばっかりでしたけど。
糸井 そうなんですか。
でも、表面的には、
じっと我慢していたという感じですよね。
田口 そうですね、終盤は、とくに。
でも、オールスター前までは、
監督室にガンガン行って、
もう、ケンカ寸前まで行ってましたよ。
糸井 ポイントはやっぱり、監督ですか。
田口 そうです。
その話を今日はさせていただこうと思って。
糸井 マニエル監督ですよね。
日本にもいたことのある、あの「赤鬼」。
田口 そうです。
糸井 日本野球の経験もあるし、
相性がいいんじゃないかと思ってたんですが。
田口 ええ、相性はよかったですよ。
おっしゃるように、日本の野球も知ってますし、
「日本の野球のスタイルというのはすばらしい」
ということを公言されている監督で。
糸井 そう見えましたよ。
田口 だから、まぁ、理解のある人だなと
思って行ったんですけども、
これがとにかく、ぜんっぜん、動かない監督で。
糸井 ほう。
田口 レギュラーをガーンと固定していく監督なんで、
そういうところはちょっと、
「あ、考え方が違ったな」と。
糸井 「4人目の外野手」として控えてる
田口さんからすると、つらいですね。
ただ、レギュラーとして出てる選手にとっては
最高の監督かもしれませんね。
田口 そうですね、はい。
糸井 多少、調子がわるくなっても、
「レギュラーはおまえだって決めたんだから
 おまえを使うぞ」と言われるわけだから。
田口 そうですね。
糸井 「ま、タグチっていう
 日本のいい選手も控えてるけど、
 オレはレギュラーのおまえを使うぞ」と。
田口 ははははは。
糸井 出たい側からすると、きついですよねえ。
田口 きついです。
ですから、何度も監督室に行って、
「つかってくれ」って言うんですけど、
まったく話にならなくて。
糸井 「言いたいことはわかるが我慢しろ」
みたいなことになるんですか。
田口 そうですね。
ぼくは、理屈で負けるとは思わないんです。
こう言われたら、こう返して、
こういう理屈で、こう提案して、
みたいなことを考えて行ってますから。
ところがね、話をしているうちに、
怒り出すんですよ。
糸井 ははははは。
田口 こう、だんだんだんだん顔が
グーッと赤くなっていく。
糸井 まさに、「赤鬼」。
田口 まさに、「赤鬼」ですよ。
で、これはアカンと。
怒らすのはまずいと。
糸井 逆効果だと。
田口 で、帰って来ちゃうわけです。
だから、なんていいますか、
「理詰めでは勝てない」。
糸井 ふだんは、そういう人じゃないんですよね?
田口 ふだんしゃべるにはすごくいい人なんです。
練習中とかに、野球以外のバカな話で
盛り上がれる関係ですし。
すごく気もつかってくれるし、
実際、仲もよかったんですけど、
こと野球になると、まったくぼくとは違う
野球哲学を持っている人なので‥‥。
糸井 最初に軽く確認しておきますけど、
その赤鬼の野球は、自分とは違うけど、
最終的には「アリだな」と
認めることになったんですか?
田口 認められなかったんですけどね、
最後、やっぱり、ワールドシリーズに勝って、
証明されましたからね。
糸井 そうですね。
田口 ですから、最後の最後で優勝できたんで、
「こういう野球もアリだな」と
納得はできたんです。
ただ‥‥ね‥‥。
糸井 もうちょっと聞きましょうか、愚痴を(笑)。
田口 ぜひ(笑)。
(つづきます)


2009-02-02-MON

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