25番目のピース 〜メジャーリーガー田口壮のメソッド2〜

最終回 まだまだ学びたいことがある。

糸井 さて、来年はどうなるんでしょう。
まず、日本球界復帰は、ないんですね?
田口 ないです。
糸井 つまり、フィリーズ以外のメジャーの球団で、
契約先をさがしてる状態ですね。
そうすると、おそらく、
いちばんいいケースと悪いケースというのを
すでに想像なさってるでしょうけど。
田口 そうですね。
ま、いちばんいいケースというのは
わかりやすくて、
複数の球団からオファーがあって、
こちらから選ぶことができること。
糸井 なるほど。
田口 いちばん悪いケースは、
マイナー契約で、招待選手として
キャンプに参加
するかたちですね。
つまり、いつ契約を切られても
おかしくないという状態。
糸井 それがいちばん悪いケース。
田口 はい。そこまでは想定に入れてます。
糸井 その場合には、
「だったらやんない」じゃなくて、
「ある」という意味ですよね。
田口 はい。
糸井 当然、そこからメジャーに復帰して、
という可能性を十分に見込んで。
田口 そうです。
だから、そういう状況になったら、
そのチームの状況を見て、
ぼくがうまく当てはまるかどうか
というのを考えて
契約しないといけないでしょうね。
糸井 田口さんは客観的に自分を見られる人だから
他人事みたいに冷静に答えてくださるけど、
当事者としては、ほんとはたいへんですよね。
田口 (笑)
糸井 もろもろの条件とかではなく、
もっと大きなビジョンとして
「こういうチームでこう仕事したい」
というような考えはあるんですか。
田口 ビジョンというわけじゃないんですけど、
いま、興味があるのは、
「織田信長タイプ」の監督です。
糸井 織田信長? それは?
田口 カージナルスのトニー・ラルーサ監督は
「豊臣秀吉タイプ」だと思うんですよ。
つまり「鳴かぬなら鳴かせてみよう」っていう。
で、チャーリー(・マニエル)は「徳川家康」。
「鳴くまで待とう」というタイプです。
糸井 ああ、なるほど(笑)。
それで、もうひとつのタイプが。
田口 はい。たぶん、「織田信長タイプ」、
「鳴かぬなら殺してしまえ」
というタイプの監督もいると思うんです。
「働かないんやったら、
 こいつ要らん」というような(笑)。
一回、そういう監督の下でやるのも
おもしろいかなぁと思ってるんですけどね。
糸井 失礼な言い方を平気でしてしまいますけど、
いまが年齢的に選手生命の終盤だから、
賭けられる勝負をしてみたい、
というような意味もありますか。
田口 いや、その感覚はあまりないです。
糸井 あ、そうですか。
じゃあ、いままでに経験したことのない
もうひとつのタイプを経験したいという
純粋な好奇心から?
田口 はい。ただ単に興味だけですね。
糸井 はー、そうですか。おもしろいですね。
やっぱり、落ち着いた人ですね、田口さんは。
田口 いや、落ち着いてないですよ(笑)。
たぶん、物事がおこってからじゃないと
なにも考えられないんだと思います。
そのあたりは、赤鬼といっしょです(笑)。
糸井 考えようによっては、
自信があるとも言えますね。
田口 自信はあります。
糸井 そういう感じですよね。
どんな船に乗っても
船酔いしないっていうか。
田口 そうですね。
糸井 気の早い話ですけど、
そこまでいろんなことを
しっかりと言語化できる田口さんが
監督になったらどうなるのかというのを
たのしみにしている人もいると思うんです。
田口 うん、あのう‥‥そういう思いはあります。
監督、やってみたい。ただ、どこでやるのか‥‥。
できるかどうかは別にして、
アメリカで監督になるのも、
おもしろいなと思ってます。
糸井 あーーー、それは見てみたい。
田口 ただ、そうなろうと思ったら
ことばの問題が出てくるので、
おそらく野球辞めてから、
学校行くかクラス取るかして
勉強し直さないとダメでしょうね。
糸井 日本で監督というのは?
田口 やってみたい気持ちはあるんですけども、
たぶん、ぼく、日本で監督やったら
半年持たないような気がします(笑)。
糸井 そうですか(笑)。
日本での監督というのも見たいですけど、
勝手なことをいうと、
田口さんにはもうちょっと粘って
アメリカにこだわってみてほしいですね。
田口 そうですね。
実際、まだまだ向こうで学びたいこととか
見たいものがいっぱいあるので。
最終的にはやっぱり全部日本に
還元したいという思いあるんですよ。
でも、中途半端はいちばんダメだと思ってるんで、
もう少し、向こうで。
糸井 あ、なんか田口さんって、
絵として監督をやるイメージが
わかないなと思ったんですけど、
理由がわかった。
頭蓋骨が小さすぎるんだ!
田口 はははははは。
糸井 監督ってみんな、顔がデカいんですよ。
どういうわけか。
田口 (笑)
糸井 勝手なことを言いつつ、
そろそろ終わりにしましょうか。
いまのこの時期って、
自分の家はどこになってるんですか。
田口 神戸です。西宮でトレーニングをしてます。
糸井 じゃあ、いまアメリカのどこかに、
どこに行くかわからない、
家具や家族の荷物なんかが
いったん置いてあるんですね。
田口 はい。シカゴの倉庫に。
糸井 シカゴに。
それは、スポーツ新聞には載らない
リアリティーですねぇ。
田口 そうですね(笑)。
クルマとかも、全部そこに預けてあります。
糸井 その荷物が、そこからどこかに行くんだなぁ。
いや、ありがとうございました。
今年も、とってもおもしろかったです。
田口 ありがとうございました!
※この対談後、田口選手の来季契約が決まりました。
 カブスとマイナー契約。招待選手でキャンプ参加。
 田口選手の言う「いちばん悪いケース」となりました。
 渡米以来、もっとも厳しい環境から
 スタートする2009年を、
 田口選手がどのように乗り越えていくのか。
 ぜひ、いっしょに注目していきましょう。

 なお、2009年の契約に対する決意、迷いなどは、
 田口選手のブログの1月15日に掲載されていますので
 ぜひ、お読みください。
(田口さんのブログは、アーカイブが残らないため、
 今後、読めなくなる可能性もあります)

2009-02-13-FRI



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