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LIFEのBOOK ほぼ日手帳 2017

LOFT手帳部門12年連続NO.1

ほぼ日手帳 2017

手帳マン・みうらじゅんのLOVE スクラップ(&手帳ネームのすすめ)

第1回手帳マンのスクラップ術

――
本日は、手帳について
いろいろとお話を伺いたくてやってきました。
みうらさんはこれまで使われた手帳を
ぜんぶとっておいてあるんですね。
みうら
はい。
僕の肩書き、「手帳マン」と書いておいてください。
使っていた手帳を捨てるなんて、
「手帳マン」にはあるまじきことですからね。
――
手帳マン(笑)。
みうら
途中から、手帳の代わりに
スケッチブックを使うようになりました。
それも、百数十冊ありますよ。
またいつか、ほぼ日で
スケッチブックの特集をすることもあるでしょう。
そのときのために、今回は出さないでおきましょうね。
――
ありがとうございます。
ここに出していただいたものだけでも、
相当な量です。
みうら
30年分くらいはあるんじゃないかな。
手帳の原点といったらやっぱりこれ、生徒手帳ですね。
生徒手帳はほぼ日手帳より前からありますからね(笑)。
――
たしかにそのとおりです(笑)。
みうら
小学校のときはみんな、手帳なんて持ってませんから。
中高生が大人になった気分で持つのが、
生徒手帳ですね。
――
大人になってからは、
どんなふうに手帳を使っていらしたんですか?
みうら
基本、思いついたことを書きつけていますね。
ああ、このときは「極附弁当」食べたんだ。
東京駅で、当時3800円の弁当を食べて、
うれしかったんでしょうね。
そのときのシールが貼ってあります。
――
本当ですね。
でも手帳になにかが貼ってあるのは、
このお弁当のシールくらいですね。
みうら
手帳にはあまり貼ってないですね。
でもね、映画手帳と日記がまた別にあって、
そっちには映画の半券だとかをよく貼ってあります。
――
最近、ほぼ日手帳に
シールやチケット、写真など、
いろいろと貼る方が増えているんです。
みうら
ほぼ日手帳だとサイズが大きいから、
たくさん貼れますもんね。
――
そこで、「貼る」といえば、
スクラップをずっとやってらっしゃるみうらさんに
貼るときのポイントなどをお聞きしようと。
みうら
あと5冊でついに500巻です。
ついにラストスパートに突入しました。
僕がやっているのはエロの方面なので、
ここでお見せすることはできませんけども。
――
はい。
内容はさておき、今回はスクラップの極意を
教えていただこうと思って。
みうら
50年以上スクラッパーをやってきましたけど、
とうとう注目される時代がきましたね。
――
スクラッパー。
スクラップをする人のことですね。
みうら
そうです。
スクラッパーっていったら、ぼくと、
大竹伸朗さんくらいじゃないですか。
――
美術家であり、
みうらさんの大学の先輩でもある、
大竹伸朗さん。
みうら
はい。
大竹さんは唯一のスクラッパー仲間なんです。
以前、大竹さんにお会いしたとき、
スクラッパーの苦労を語り合いました。
湿気の多い日は気泡ができやすいとか、
紙が収縮したときにどうするかというような話を。
生まれて初めてでしたよ、そんなこと話したの。
――
みうらさん、ふだんは
コクヨのスクラップブックに
貼ってらっしゃるそうですが。
みうら
そうです。コクヨの「ラ-40」です。
――
今回はせっかくなので、
ほぼ日手帳に
貼ってみていただきたいなと思っています。
みうら
わかりました。
ただ、ほぼ日手帳は紙が薄いですね。
だから、手帳としてはいいけど、
スクラップとしてはどうかなっていうのはあります。
こっちからしたら(笑)。
――
スクラッパーからしたら。
みうら
はい。でもやってみましょう。
まず、何で貼るかが重要ですね。
セロハンテープは手軽に思えますが、
30、40年たつと黄ばんで、カリカリになって、
はがれ落ちることがあります。
それから、リップタイプの白い糊があるでしょう?
僕が中学くらいのときに誕生したんですけど、
あれも粘着力は強くないですね。
やっぱり、
1000年持っていられるもので貼らないといけません。
――
1000年。
みうら
そう、スクラッパーは1000年単位で考えてるんで。
よれたりはがれたりしたらもうおしまいです。
そうなると、いちばんいいのは
やっぱりアラビックヤマトです。
ただ、業界用語でいうと「べこつく」。
――
業界用語なんですね、「べこつく」(笑)。
みうら
はい。
そしてこのアラビックヤマトは
ふだんは均等にぬれるんですが、
残り少なくなったときに
ドバッと出ることがあるんです。
人間と同じですね。
人間も、加齢とともに変なところから
毛が生えてくるでしょう。
だから、残り少なくなったときには
気をつけてほしいですね。
――
何度も使いきった方ならではのアドバイスですね。
みうら
ほぼ日手帳くらいの薄さの紙に
アラビックヤマトを使う場合、
ある程度少なくなったら新しいものに買い替える。
余った糊を集めてもう1本つくる。
それくらいの気持ちでないといけません。
――
糊は適度な分量塗ることが大事なんですね。
みうら
そうです。
糊といったら、僕らが小学生のころは、
ボトルからさじですくうタイプでした。
その前は、日本人は米でものをくっつけていました。
米から糊へと進化したのを、僕は目撃してます。
――
はい。
みうら
だから昔のお母さんたちだったら、
ほぼ日手帳にも米で貼っていたでしょうね。
だけど米もね、乾燥が速いんですよ。
時間がたつと、米とともにはがれ落ちます。
だから、米はすすめません。
――
米とともに‥‥。
みうら
糊のつぎは、切るほうですね。
ハサミも愛用品です。
――
カッターは使わないんですか。
みうら
カッターはね、
使ってはいけないルールがあるんです。
――
ルールがある?(笑)
みうら
ええ。
スクラッパーに大切なのは、
きちんとすることじゃないんですよ。
気持ちを熱く伝えることです。
だから、いろんなものを貼ると、
とうぜん通常のほぼ日手帳よりもぶあつくなりますね。
そのぶあつさというのは、思いの熱さなんです。
それをきれいにカッターで切ったりするくらいなら、
もうパソコンで取り込めばいい話です。
スクラップは紙VS紙でやるわけだから、
アナログじゃないとダメなんです。
――
ということは、
みうらさんのなかでカッターはアナログではなく、
デジタルなもの‥‥?
みうら
カッターは僕の中ではもう最先端です。
FAXの手前くらいにあるものです。
それにカッターは、手を切る。
これはよくない。
――
はい。
ハサミにこだわりはありますか?
みうら
いまは安いハサミでもよく切れますから、
なんでもかまいません。
素人のときは、雑誌のグラビアなんかを切るとき、
裏側の文章を透かして、それに沿って切るんです。
でもだんだんプロフェッショナルになってくると、
まるでカッターかのように切れるんです。
それには30年くらいかかりますけれども。
もう工芸の世界なんです。
――
工芸の世界‥‥。
みうら
ただ、これだけ年月を重ねても、
「これを貼りたい!」と気が急いているときは、
ついついゆがんでしまうんです。
そこを、焦らず、落ち着いてこつこつ切るのが
まっすぐに切る最大のポイントです。
ていねいに切って、均等に糊を塗る。
それしかない。
スクラップには王道はないんです。
(つづきます)
2017-01-16-MON