| リリー | 糸井さんが、 「いやぁ、リリーさん、
 結婚したほうがいいよ。
 でもね、離婚は、結婚の3倍大変だよ」
 って、怖い話ばっかりするもんだからさー。
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| 糸井 | 3倍っていうより、300倍、ぐらい。 | 
| 清水 | あ、わたしの友達も、 最近離婚したんですけど。
 
 たとえばふたりで、
 テレビを買ったとするじゃない?
 いざ離婚となると、ほんとは
 「テレビなんていらないわよ」っていう
 気持ちなんだけど、考えれば考えるほど
 ひとつでも相手にものを取られるのが
 すごく悔しくなるんですって。
 だから、まず
 「これをどうしようか」っていうところから、
 すっごいエネルギー使うらしい。
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| 糸井 | ハハハ。そんなとこに使うのは、 なんてことないエネルギーですよ。
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| 清水 | エッ、そうなんだ。 | 
| 糸井 | ものに使うエネルギーなんてね、 全部あきらめればいいだけだから、
 簡単なんですよ。
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| 清水 | (笑)何も、そんなに胸を張って言わなくても。 | 
| 糸井 | 結婚は、たやすいことなんです。 すればいいんだからね。
 離婚はちがう。
 それはもう、世界全体対
 自分の闘いっていうぐらいの、
 たいへんなもんです。
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| 清水 | 落ち込むの? やっぱり。
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| 糸井 | うん。 「離婚は30歳までだな、
 30すぎると体力失うから、難しいぞ」
 って、ふたりの人から
 同じアドバイスを受けたことがある。
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| 清水 | へぇぇ。 じゃあ、しょっちゅう
 離婚と再婚をくり返してる人って、
 そうとう強い、タフな人ってことなんじゃない?
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| 糸井 | あれはつまり「結婚」してないんですね。 | 
| 清水 | あ、儀式だけで。 | 
| 糸井 | うん。 | 
| リリー | なんかロマンチックな未来が ないみたいだなぁ、結婚には。
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| 糸井 | リリーさんみたいなセンチメンタルな男が 結婚なんかしたら、どうなるんだろうなぁ。
 
 きっと恋愛をしても、「これが完成形だ」と
 自分で思えるようなかたちになんないと、
 結婚までいかないんじゃないですか。
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| リリー | うーん。 | 
| 糸井 | そうしたらもう、 離婚はすごいことになりますよ。
 鋼鉄のロープを断ち切るような苦しさになる。
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| リリー | でも今日はね、お客さまの中には 独身の方々も
 たくさんお見えになっていて。
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| 糸井 | いますね、たぶん。 | 
| リリー | (笑)・・・というより、見た感じ、 ほとんど独身なんじゃないですか。
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| 糸井 | ここにいるのは独身だからだよねぇ。 オールナイトだもの。
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| 清水 | 主婦は、いる? (客席で手が挙がる)
 ・・・お、いるんだ、すごい!
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| リリー | 今日は3連休の頭の日ですよね。 | 
| 糸井 | そうですね。 | 
| リリー | ぼくは、だめなんですよ、 こういう女性たちが。
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| 清水 | どういう意味で? | 
| リリー | 金曜日の夕方とかにね、 スーパーのできあいのおかずを
 ひとりで買ってる女の子とか、
 こういうオールナイトのイベントに
 ひとりで来ている人を見ると、
 もう、胸が苦しくなってくる(笑)。
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| 清水 | おかしいよ(笑)。 | 
| リリー | ・・・抱きしめたいって思う。 愛おしいっていうか、
 「俺がいなきゃ」って、勝手に思う(笑)。
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| 糸井 | アハハハ。それはわかる。 | 
| リリー | わかりますよね? | 
| 糸井 | ハグしたくなるんだよなぁ。 ポンポンって、背中たたいて。
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| 清水 | ハグをねぇ・・・。 あ、最近、ハグでもないけど、
 電車で男女で入り乱れてる人、多いですよね。
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| リリー | あ、俺、ここに来る途中で すごい酔っ払い見ましたよ。
 男女のカップルなんだけど、
 男のほうがドーンとひっくり返ってるんですよ。
 そして、女がずっと、男の股間を握ってる。
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| 清水 | 電車の中で? | 
| リリー | うん。 「何してるのかなあ」って、
 よく見たら、男が股間から
 モノを出そうとしているのを
 彼女がずっとおさえてるの(笑)。
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| 清水 | ハハハハ。 | 
| 糸井 | 彼女は、とめてたんだ。 | 
| 清水 | どんなシチュエーションなんだろう? 男性が欲情してるってこと?
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| リリー | 男はね、なんかもう、 幻を見ちゃってるかんじ。
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| 清水 | ハハハ。 無意識の行為なのかしら?
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| 糸井 | 尿意、ですかね。 | 
| リリー | そうですね、 「大地を味わっている」かんじがしました。
 いずれにしろ、
 あれは性的な行為ではなかったですね。
 彼女からすると、男がしてる行為が
 かなり性的なにおいを放つものだから
 恥ずかしくて、隠しちゃう。
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| 糸井 | 「わたしにはわかっても、 人はいやらしいと受けとるにちがいないわ」。
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| リリー | やらしときゃいいのに(笑)。 | 
| 糸井 | でも、股間に手をあてるのは、 勇気がいるよね。
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| リリー | 彼女がそういう行為をした時点で、 ふたりの関係は、きっと
 「同僚」じゃないですよね。
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| 糸井 | 関係が浅いと、 股間に新聞紙のせるくらいだよね(笑)。
 「この新聞紙かぶせとけ」って。
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| 清水 | よく見つけましたよね、そんなの。 ・・・あ。後ろのほうで
 「もうひっこめ」ってかんじのサインを
 スタッフのかたが送ってるんですよ。
 さっきからずっと(笑)。
 ・・・もう相当、時間が経ってますよ。
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| 糸井 | ええと、 じゃあ、夜も更けてまいりましたので
 ひっこみましょう。
 リリーさん、なにか言い残したことは?
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| リリー | いや、みなさん、 これから『ニュー・シネマ・パラダイス』
 見るんだなぁ、と思って。
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| 清水 | (笑)ほんとにねぇ・・・。 どうぞ、いい1日になりますように。
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