5 見えないところを考え抜く。
糸井 「いろどり」の話を
システムとしてとらえると、
おそらく、伝わらないでしょう。
横石 ええ。ほんとうのところは、
伝わりませんね。
糸井 こんなことを言ってるけど、
僕はビジネス書をものすごく読むんですよ。
読むと「ああ、なるほど」と思うんですが、
そのことにドクドクと血が流れることは少ない。
実際に血が通うまでには時間かかるし、
わかってるつもりで動いていても
ほんとうはわかんなくて、ということの
くり返しです。
でも、「いろどり」も「ほぼ日」も
いわゆる大きな成功は
していないのかもしれません。
実のところは、振り出しでスタート、
というくらいでしょう。
横石 まさにそうです。
だけど、やっぱり楽しければ
行くんですよね。
糸井 回り道はするかもしれないけど、
必ず何か、答えは出ると思います。
答えが出ないのは、
きっといちばんいい方法を探すから
なんでしょうね。
うまくいった人たちというのは、
「効率的な方法じゃなかった」
ということを知ってる人ばかりです。
横石 そうですね。
一生懸命やればいい、ということを
言いますね。
糸井 どんなテクニックがあるにせよ、
一生懸命やんないとできないでしょうね。
気楽なことばっかりじゃないし、
ある意味で、孤立無援ですから。
横石 おっしゃるとおりですね、
安全保障はないです(笑)。
ぼくは、葉っぱ一枚のことを
いつも考えているようなところがあります。
葉っぱは、すごくバリエーションがありますから
奥深いし、おもしろいですよ。
人とお話ししていても、
いろんなものを見ても、
次から次へと、浮かんでくる。
例えば「文字の木」と呼ばれる木の葉っぱは
字を書くと裏から透けて見えるんですよ。
これはおもしろい、
いらっしゃいませとか、こんにちはとか、
アレンジしてあげるといいかなぁ、
なんて思ったり。
月桂樹の葉をしおりにして本にはさむと、
開いたときに月桂樹の匂いがぱっと出て
すごく喜ばれるし。
糸井 いろいろ思いつくねぇ(笑)。
毎日、葉っぱのことばかり考えてるんですね。
横石 緑の羽根の募金も、
鳥の羽根のかわりに
それぞれの県の木の葉っぱを
胸につけることにしたらどうなるんやろう、
とか、考えます。
糸井 ああ、なるほど。
緑化ですから、
そのほうが主旨に合っていますもんね。
横石 糸井さんがいまお茶を飲んでいるコップの下にも、
葉っぱをさっと敷くと、
ひとつの場面になる。
ぼくだけじゃなくて、きっと日本人は、
何かしら自然のものを取り入れるということが
好きなんでしょう。
糸井 この起源は、そもそもどこなんだろう。
韓国料理のお皿には、
「食べない葉っぱ」はないですよね。
横石 ないですね。中国料理にもない。
皿に乗るのはほとんどが食べるものだけです。
糸井 食えないもので、食を飾るもの。
これは、興味がありますねぇ。
横石 日本のいちばんのよさは、
料理だという人もいます。
京都なんかは特に、紅葉狩りにしても、
すごい文化やね。
日本の料理には、何ていうのかな、
食器にしても、温度にしても、季節感にしても
文化的にいい部分がたくさん
出ているような気がする。
そう言えば、ぼくらは、この冬から、
おせちの折り詰めに入ってる
プラスティックのハランを、
生の、本物のハランの葉に変えるんですよ。
2〜3年ごしでやっと開発ができて、
この年末に、スタートします。
糸井 あの、おかずとおかずの間に挟まってる、
緑のビニールのぎざぎざした仕切りですね。
横石 ええ。あのプラスティックのハランは、
折り詰めを開けたときに、
みんな、最初に箸で挟んで引っこ抜きます。
それほど邪魔ものなんよ、あれは。
あれほど嫌がってるのに、
なぜ入れるんでしょうね。
糸井 あの色がないと、折り詰めが
まっ茶色になるからかな。
ハランの葉はどうやって加工するんですか?
横石 葉をプレスしてから、
金型で切り抜きます。
ちょっと先が痛んでいる葉も使えるんです。
全ての葉が使える。
これは、大きいです。
糸井 捨てる葉がなくなっていくんですね。
横石 そういうアイデアが出てくると、
どんな葉っぱ一枚でも出番がある。
人間もそう。ばあちゃんもそう。
どんな状態の中でも
活かせる部分があるということを
大事にしていきたいんです。
糸井 横石さんの、そのハランの仕事も、
「あれが邪魔だな」という目線から
話がはじまってるわけですね。
横石 そう。「あれを変えてやれ」じゃなくて、
「みなさんは、そんなに邪魔ですか」
というところから生まれています。
糸井 それもなんだか、ふつうとは
順番が違う気がするんです。
ビジネスをやるときは
あれがビジネスチャンスだ、と
普通に考えると思うんですが、
ビジネスチャンスより
みんながプラスティックのハランを
邪魔に思っている姿が前にあるんですね。
横石 フタをあけたとたんに箸で取る、
捨てるときにゴミの分別が不便、
そういう、ちょっと嫌がってる気持ちが
ハランを取るときの人の顔に出てますから。
糸井 うん、そうなんですよね。
どっかやっぱり、順番が違うんです。
お互いに、こういうところからできる
ビジネスの話を
これからも、やっていければうれしいです。
横石 はい、ぜひ、
よろしくお願いします。

(おしまい)



日時 2007年9月11日(火)18:30開場 19:00開演
会場 新宿・紀伊國屋ホール(紀伊國屋書店新宿本店4階)
チケット 1000円(税込・全席指定)
キノチケットカウンター(紀伊國屋書店新宿本店5階)
10:00〜18:30
予約取扱 紀伊國屋ホール(電話03-3354-0141)
10:00〜18:30
「いろどり」「ほぼ日」からみた
これからの仕事論についてお話します。
みなさま、どうぞお越しくださいね。

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1・リタイヤは人に合わない。 2007-08-20-MON
2・心の話はしなくていい。 2007-08-21-TUE
3・自分が足りないことを知る。 2007-08-22-WED
4・見えないところを考え抜く。 2007-08-23-THU
1年前に「いろどり」を訪れたお話はこちら



2007-08-24-FRI

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