HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN https://www.1101.com/home.html   あの日 そこにいたふたり サンドウィッチマンと 気仙沼の話を。  伊達みきお・富澤たけし ✕ 糸井重里
糸井 気仙沼の、あの夜に、
安波山から降りてきたんですよね‥‥。
伊達 はい。道路は渋滞で通行止めになってたんで、
すごい獣道みたいなところを
車がぎりぎり1台通れるくらいの道を通って‥‥
糸井 気仙沼のホテルへたどり着いた。
富澤 はい。
伊達 あのときは、
気仙沼だけがこういう状況なんだと思ったんです。
糸井 ああ‥‥。
伊達 情報が入らなかったので。
夜中じゅうずっとホテルのフロントに
大きなラジオを置いて
ボリュームをあげて、
ろうそくの灯りで聞いてました。
情報元がそれしかなくて。
糸井 停電してるんですよね。
富澤 電気はなかったです。
糸井 ということは、寒い。
伊達 寒いです。
でも石油ストーブがありました。
あとはみんなに毛布が配られて。
糸井 そうか、ホテルだから毛布はあった
伊達 はい。
ロビーには
東京からの人がけっこういたんです。
合宿で運転免許がとれるのがありますよね。
それで来てた人たちが
ホテルに避難してたんです。
糸井 合宿で免許、ありますよね。
伊達 で、ホテルのフロントに缶づめが売ってるんですね。
糸井 缶づめ。
伊達 缶づめ。
サンマとかサバとか。
それを買ってみんなで食べるみたいな。
なんか、そんなことしてました。
富澤 何日このままなのかわからないのに、
早めに食べちゃう。
糸井 ああー(笑)。
食べちゃう。
富澤 食べちゃう。
糸井 わかります、だいたいそうですよね。
腹減ってないのに食べる。
食べといた方がいい! みたいな。
伊達 そうなんです(笑)。
あれなんだったんだろうなぁ‥‥食べちゃう。
糸井 食べちゃう(笑)。
伊達 ぜんぜんお腹すいてないのに。
富澤 食べちゃう。
伊達 なんでだろう‥‥
ああいうとき人は食べるんですねぇ。
糸井 ねぇ(笑)。
富澤 食べちゃったなぁ。
伊達 ホテルにレトルトのカレーの
自動販売機があって、
普段はぜったい食べないんですけど‥‥
糸井 食べちゃう(笑)。
富澤 へえー、こんなのあるんだぁつって。
伊達 ちょっと食べてみるかつって。
ぜんぜん腹減ってないのに。
富澤 食べちゃう。
伊達 「ん、なかなか旨い」だって。
一同 (笑)
糸井 わかるわぁ(笑)、
なんでそんなことするんだろうねー。
伊達 食べちゃうんですよ。
糸井 ぼくは気仙沼に行ったとき、
「じゃあね、おやすみ」って言う前に、
かならずコンビニに寄るんです。
夜に原稿を書いたりするんで、
その時間に食べるためのものを買うんですよ。
気仙沼だけじゃなくて、
地方のときはいつもそうですね。
伊達 はい、はい。
糸井 で、宿でパソコンを開いて、
仕事する前に食べ始める。
そんなに食べたくもないのに。
一同 (笑)
富澤 あれはなんなんですかね?
なんか‥‥食べちゃう。
伊達 なんでだろう?
ふだん家では食べないんですけどね。
糸井 コッペパンにジャムとバターを塗ったのとか。
伊達 わかります。
糸井 カールとか、ヨーグルトとか。
伊達 買うんですよね。
糸井 いつも飲まない味のファンタとか。
だいたい飲みものは1本残りますね。
キャップあけないまま人にあげたり。
伊達 なんなんでしょうね、あれ(笑)。
糸井 なにか本能のスイッチが入るのかなぁ‥‥。
とにかくまぁ、気仙沼の夜、
コンビニ寄らないで済んだことがない。
一同 (笑)
糸井 コンビニで市長に会ったりする(笑)。
伊達 気仙沼市長にですか。
糸井 そうそう、「ピノ」を買ってます。
一同 (笑)
伊達 アイスの。
糸井 そう。奥さんが好きなんだそうです。
「あ、どうも糸井さん。
 うちのが今、車で待ってるんですけどね」
って言いながら、ピノを1個持ってるの。
伊達 いいですね(笑)、なんかアットホームで。
糸井 こういう話って、
今までたぶん漫才にしてないですよね。
伊達 そうですね。してないです。
糸井 してもいいかもね。
伊達 うーん‥‥。
糸井 しづらかったのはよくわかるんだけど、
なんか、こう、
自分を笑う話だったら、してほしいな。
「なんか食べちゃう」みたいな話。
伊達 確かに、その話なら面白いかもしれないですね。
糸井 ぼくらも今こうやって
サンドウィッチマンのおふたりと
笑いながら話してますが、
こういうことを載せる時期だと思ったんですよ。
伊達 なるほど。
糸井 笑いながらですが、
ただ事実を語ってるわけですから。
追悼ですって、黙っているよりは、
「何があったの?」とか、
「今思えばどういうことを考えたの?」とか、
それを明るくやりたいなという時期なんです。
伊達 はい。
糸井 「思い出しついで」をつくりたいのかもしれない。
人間はやっぱり忘れてしまうものだから。
それはちっとも否定しないんです。
だから、忘れちゃうから、
「思い出しついで」をきっかけに
「東北のあの人どうしてるかな」とか
「なにか手伝おうかな」っていうことがあれば、
ほんと、互いに元気でいられますよね。
伊達 ええ‥‥。
そうですね。

(つづきます)
2014-03-14-FRI

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サンドウィッチマン

伊達みきお(だて みきお)さんと、
富澤たけし(とみざわ たけし)さんによるお笑いコンビ。
ふたりとも、1974年生まれで宮城県仙台市出身です。
1998年にコンビ結成。
2005年、『エンタの神様』へ初出演。
2007年、『M-1グランプリ』の王者に輝き、
一躍人気者に。

宮城県仙台市の出身で、東北との関わりは深く、
現在は下記の役職をつとめています。
・みなと気仙沼大使
・みやぎ絆大使
・東北楽天ゴールデンイーグルス応援大使
・ベガルタ仙台仙台市民後援会名誉会員
・喜久福親善大使
・宮城ラグビー親善大使
・松島町観光親善大使

サンドイッチマンのテレビ出演情報などは、
おふたりの事務所、
「グレープカンパニー」のサイトでご確認を!

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「名前だけでも覚えて帰ってください」

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