HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN https://www.1101.com/home.html   あの日 そこにいたふたり サンドウィッチマンと 気仙沼の話を。  伊達みきお・富澤たけし ✕ 糸井重里
伊達 東北の話になると、
ほんとによく糸井さんのお名前を聞くんです。
富澤 そうそう。
糸井 ほんとですか。
どこで聞くんだろう。
伊達 気仙沼でもそうですし、
(立川)志の輔師匠の落語会のこととか。
あと、うちのカミさんが、
「ほぼ日」が大好きでですね。
糸井 ああ、ありがとうございます。
富澤 スコップ団にも、参加してらして。
糸井 ええ、スコップ団も。
ぼくらはすぐに根をあげてしまいましたけど(笑)。
伊達 いやぁ(笑)、
ぼくらもやりましたけど、大変ですよ。
糸井 ありゃすごいですね。
伊達 いやすごいです、スコップ団は。
花火大会も行かれたんですか。
糸井 行きました、行きました。
あの花火大会はよかった。
いい曇り方で(笑)。
富澤 そうなんですよ(笑)。
あまり見えないな。でもやるんだと。
糸井 見えなくても誰も文句を言わない。
いい花火大会だったなぁ。
伊達 はい。
糸井 ぼくらもサンドウィッチマンさんの話は聞きます。
伊達 そうですか。
糸井 とくに気仙沼の安波山に登ると、
かならず誰かが言うんですよ。
「あの日、サンドウィッチマンがいたんです」って。
あとは、どこどこで何やってくれたとか、
みんなうれしそうに語りますよ。
伊達 ああ、ぼくらもうれしいです。
震災後初めて行った時に
「お帰り」って言われたんですよ。
それですごく「あっ」と思って。
もっともっと寄り添わなくちゃいけないなと。
富澤 いまでは「また来たの」って言われますからね。
一同 (笑)
糸井 安波山での話はさんざんしてるんでしょうけど、
どうでした?
やっぱり、怖い記憶なんでしょうか。
伊達 怖かったというか‥‥
すべてがはじめて見るものですから。
沖に波が、波しぶきっていうんですか、
シャワシャワシャワっと‥‥。
あれ何なんだろうな?
というのが最初ですね。
でも、そんな大きな津波ではないだろうと。
富澤 そう思ってたんですよね。
伊達 近づくにつれて、すごく高いというのがわかって。
さっきまでロケをしていた場所が
どんどん流されて‥‥。
糸井 おふたりはよく、
すぐに判断して山の上に行きましたよね。
富澤 アンカーコーヒーで取材をして、
出てきて、
前のシャークミュージアムの駐車場辺りで‥‥。
糸井 この揺れはまずいと思った。
伊達 揺れの激しさと、サイレンも鳴ってましたし、
アナウンスも鳴ってたので、
「一応逃げましょうか」と。
糸井 一応。
富澤 あれほどの津波がくるとは思ってないので。
伊達 高台に一応避難しましょうと。
ですから、あの日の気仙沼の映像は、
うちのカメラマンが撮った映像が多いんです。
糸井 そうか。
ちゃんとしたカメラがあった。
もちろん車もあって。
伊達 マイクロバスで山に登って行きました。
糸井 それは何時くらいですか。
伊達 そうですね、2時46分に揺れて、
意外と早かったです。
5、6分後には、もうバスに乗っていましたから。
揺れがおさまったと同時に、
気仙沼の人たちもみんな高台に向かってました。
糸井 ということは、あの町の人達は、
逃げるつもりはたっぷりあったってことですね。
伊達 たっぷりありました。
だからぼくは、
安波山から津波に襲われる町を見て、
全員逃げただろうと思ってたんです。
富澤 ぼくらでさえ逃げてるんだから。
伊達 そしたら、
あんなにたくさん亡くなってる方がいたんで。
糸井 自分の心の中に、用があった人たちですよね。
伊達 そうですね。
糸井 たとえば、病人がいたとか。
伊達 ええ。
糸井 消防団の人とか。
伊達 うちのカメラマンは
逃げる車の中でもずっとカメラを抱えて
写しながら走ってたんですけど、
途中で、すれ違う消防車が写っているんです。
糸井 すれ違うってことは‥‥
伊達 逆に向かってるんです、海側に。
糸井 ああ‥‥。
伊達 その消防車を運転してた方が
亡くなったことをあとで聞きました。
ご家族が映像をご覧になったそうで。
「最後の勇姿が見れてよかったです」と。
糸井 ‥‥いまだからその話を
落ち着いてしゃべれますけど当時は‥‥。
伊達 ぜんぜん落ち着けなかったですね。
糸井 安波山から降りてきたのは?
伊達 夜の9時くらいです。
富澤 気仙沼の駅前にある、
ホテルパールシティという所のロビーで。
伊達 そこのロビーのソファで、ぼくらはひと晩。
糸井 そこですこし落ち着けた。
富澤 ただ、そこが安全かどうかも‥‥。
糸井 そうか。わからないですね。
今だから、海から離れてることもわかるけど。
富澤 ここにいて大丈夫なの?っていう。
停電で真っ暗で。
伊達 余震も激しいですし、空はオレンジ色で燃えてる。
糸井 あの赤い色は‥‥きつかったですね。
伊達 夜なのにずっと明るいんです。
糸井 そうでしたか‥‥。
ぼくらはテレビで見てただけですが‥‥
あの赤い色は怖かったです。
富澤 うちの嫁さんは東京にいたんで、
あの中に旦那がいると思うと
気が気じゃなかったそうです。
糸井 それはそうでしょう。
あの赤い中にいると思えば。
富澤 はい。
糸井 ‥‥覚えてるもんですね、やっぱり。
伊達 鮮明に覚えてます、あのときのことは。
糸井 テレビでしか見てないぼくらでさえ、
あの画面をしっかりと覚えてますから。
伊達 ああ、そうですか。
糸井 面積が大きすぎるんです。
ヘリコプターから中継してる映像も入って、
燃えてる場所を写すんですけど
画面にそれがぜんぶ入っていなかった。
伊達 すごい面積が燃えてました。
富澤 うん‥‥。

(つづきます)
2014-03-13-THU

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サンドウィッチマン

伊達みきお(だて みきお)さんと、
富澤たけし(とみざわ たけし)さんによるお笑いコンビ。
ふたりとも、1974年生まれで宮城県仙台市出身です。
1998年にコンビ結成。
2005年、『エンタの神様』へ初出演。
2007年、『M-1グランプリ』の王者に輝き、
一躍人気者に。

宮城県仙台市の出身で、東北との関わりは深く、
現在は下記の役職をつとめています。
・みなと気仙沼大使
・みやぎ絆大使
・東北楽天ゴールデンイーグルス応援大使
・ベガルタ仙台仙台市民後援会名誉会員
・喜久福親善大使
・宮城ラグビー親善大使
・松島町観光親善大使

サンドイッチマンのテレビ出演情報などは、
おふたりの事務所、
「グレープカンパニー」のサイトでご確認を!

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「もういいぜ!」

富澤たけしさんのブログ
「名前だけでも覚えて帰ってください」

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