「40歳の特集」にはやはり、その年齢をすてきに迎えている人にご登場いただきたいと思いました。宮沢りえさんです。りえさんが10代のころからいっしょにお仕事をしている、糸井重里との対談をお届けいたします。「わたし、試練はごほうびだと思ってるんです」笑顔でつぶやいたこの言葉が、その場にずっとふりそそいでいるような、なごやかで、親愛に満ちた、明るい対談でした。どうぞごゆっくりお読みください。

  1. 第1回 なんだか常に劣等感が。
  2. 第2回 試練は、ごほうび。
  3. 第3回 でも、ダウンはします。
  4. 第4回 「知らないおもしろさ」は、もういらない。
  5. 第5回 毎回オーディション。
  6. 第6回 たのしいですもん、生きていて。
  7. 第7回 食欲旺盛だね。

第1回 なんだか常に劣等感が。

(場所は、ヨーロッパ調の雰囲気があるスタジオ。
 ふたりはカメラの前。
 対談の前にまずはスチール撮影を、という場面です)

カメラマン
あと数枚で終わりますので、
よろしくお願いします。
糸井
ぼく、これ、ジャケットのボタンを
はずさないほうがよかった?
宮沢
どうかしら(笑)。
カメラマン
あ、はずしたままでOKです。
Tシャツの白がきれいなので。
糸井
そう? じゃあ、このままにします。
どーんと(お腹をたたく)撮ってください。
一同
(笑)
カメラマン
では、つづけまーす。
おふたりは自然にお話をしていただいて。
糸井
あの、まあ、なんだろうね‥‥
とりあえずこうして
笑いながらお会いできてるんだけど、
ご愁傷さまでした。
宮沢
お心遣いを、ありがとうございます。

※この対談が行われた日の一週間ほど前、
 宮沢りえさんのお母様が亡くなられました。
糸井
たいへんだったよなぁ。
芝居の公演中だったんだよね。
宮沢
はい。
糸井
その後もぜんぶ舞台に立ったわけでしょう?
宮沢
東京公演は昨日終わりました。
糸井
あなたは、すごい。
宮沢
いえ(笑)。
お芝居があってよかったです。
糸井
そうかぁ‥‥。
いやぁ、あのりえちゃんがなー。
宮沢
ふふふふ。
糸井
だって、子どもだったんだもん。
ぼくは子どものりえちゃんと遊んでたんだから。
仕事っていいながらさ。
カメラマン
では次は、おふたりで向き合ってください。
糸井
向き合うの? 照れくさいね。
宮沢
ね。照れくさい(笑)。
糸井
でも役者のときは照れないんでしょ?
宮沢
役者のときはだいじょうぶ。
もう、相手の顔が
ここまで(鼻の先を指さす)きてもへいき。
糸井
役だったらスカイダイビングでもします?
宮沢
できます。
糸井
すごいね。
宮沢
役だったらできないことはないです。
糸井
すごいなぁ。
カメラマン
はい、OKです。ありがとうございました!
糸井
ええと‥‥じゃあ、ぼくらはどうすれば?
───
こちらのソファに。
おふたりで座っていただいて、お話を。
糸井
そのソファですね。
行きましょう。

(ふたり、ソファへ移動)
───
きょうはよろしくお願いいたします。
宮沢
よろしくお願いします。
糸井
この対談には、テーマがあるんですよね。
宮沢
あ、そうなんですね。
───
はい。
以前、AERAの「40歳」特集で
糸井さんにインタビューをしました。
そのときにうかがった、
「ぼくにとって40歳は暗いトンネルに入ったみたいで
 とてもつらかったのを覚えている。
 絶対に戻りたくない」
という記事に、大きな反響があったんです。
「糸井さんでもそうだったの? わたしもです」と。
「不惑」という言葉はありますが、
じつは40歳で惑っている人は多いと感じました。
きょうはそのことをテーマに、
お話いただきたいと思います。
糸井
わかりました。
りえちゃんの年齢って、いくつ?
宮沢
41です。
糸井
そう。
宮沢
いまの、糸井さんが40歳はつらかった
というお話を聞いて、
自分はいま何がつらいのかなって考えると‥‥
そうですね、
40歳くらいから「人が見る自分」という
キャリアがつくじゃないですか。
糸井
うん。
宮沢
でも、そんなキャリアっていうのは
まだないと思ってるんです。自分では。
わたしは、まだまだ、
新しい引き出しを探すために苦悩する時間にいる。
それなのに周囲からは「できるんじゃないか」と‥‥
糸井
できると思うよね、周囲は。
宮沢
そのギャップに苦しむときがあります。
糸井
ああー。
宮沢
わたしは、できないから‥‥。
今回、蜷川幸雄さん演出の舞台で
大竹しのぶさんとご一緒したんですね。

※シス・カンパニー
火のようにさみしい姉がいて』の公演です
糸井
それはまた、とくにすごいみなさんと。
宮沢
はい。
しのぶさんは50代後半の年齢でいらして。
こう、時間とか、からだを自由に操っている。
すごいんです。
あの自由を手に入れるのにはきっと、
たくさんの引き出しを持っていないといけない。
そのためにはわたしも、
50代へ向かう40代からの10年間では
楽をせず、もがいて、
たくさんの引き出しを見つけていかなければ‥‥
ということを感じていたところです。
糸井
ああ、ほんとにいま、そういうことを感じてたんだ。
宮沢
はい。
糸井
わたしはできてない、と思う。
宮沢
まだまだかな、と。
でも‥‥
わたしができないのは、
わたしの性格のせいかもしれないですけれど。
糸井
りえちゃんは、前に出ていくタイプじゃないよね。
宮沢
そうですね。
なんだか、常に劣等感があるんですよ。
糸井
それも、みんなはそう思ってないかも。
宮沢
うーーん。
ずっと考えてるんです、
この劣等感はいつなくなるんだろう?って。
糸井
うちの奥さんは、そこがすごくいいって。
それがりえちゃんの良さだって言ってる。
宮沢
ありがとうございます。
‥‥でも、自信がないんですよ。
褒められても疑ってしまう(笑)。
糸井
そう?(笑)
まあ、それもしょうがないじゃない。性格だから。
宮沢
しょうがないんです。
この性格とともに生きていくんですよね。
糸井
そっかぁー、劣等感ねぇ。
宮沢
ええ。
糸井
その、「劣等感があるんです」という
震えみたいなものって、
やっぱりとても個性だし魅力ですよね。
元気にやってるだけより、ずっとニュアンスがつく。
‥‥って、これがまた褒めモードなのか(笑)。
宮沢
はい(笑)。

(つづきます)

2014-11-04-TUE

©2014「紙の月」製作委員会

宮沢りえさん主演映画のおしらせ「紙の月」

直木賞作家・角田光代さんのベストセラー小説、
『紙の月』を宮沢りえさん主演で映画化。
11月15日(土)より全国ロードショーされます。

公式ウェブサイトはこちら