おいしい店とのつきあい方。

100 お店の情報とのつきあい方。その26
目の合わないお客様。

ずっとコンタクトレンズをしておりました。
近視なんです。
小さな頃から本が好き。
小説なんかも好きではあるけど、
百科事典や辞書をみるのが大好きで
夜遅くには読んじゃダメ‥‥、
って言われながらもやめられない。
布団に入って百科事典をずっと見てたら、
小学校の4年くらいから見えなくなった。

近視であります。
子供の頃はメガネをかけてた。
どのくらい悪かったかというと、
視力検査の一番上の大きな記号がまるで見えない。
前に歩いて、見えたところで止まりなさい‥‥、
って言われて歩くとちょうど真ん中くらいで見える。
視力にすれば0.5とか。
ちょっと具合が悪いと0.3とかくらいまで視力が落ちる。

昔のメガネは分厚かった。
牛乳瓶の底みたい‥‥、ってよく言われてて、
それでもそれがないと
まるで見えないんだからしょうがない。
高校を出て、大学に入る直前まで
ボクはメガネ君として育ったのです。

大学に入る前にコンタクトレンズを誂えました。
ハードレンズで、なれるまで大変だった。
こんなコトなら
メガネのままでもいいかと何度か思うほどで、
けれどどうしてもメガネを外したい理由があった。
ひとつはイメージチェンジをしたかったのです。
イメージチェンジの最大のモノが、
テニスのような当時流行りのスポーツをしたくて
それにはメガネよりもコンタクトレンズの方が
便利と思ったから。
でも、それよりも母から一言いわれたのです。

「あなたって、何を考えてるか
わからないことがときどきあるのよ。
多分、目の表情が見えなかったりするからなのよね」と。

母としては何気ない一言だったに違いなく、
けれど当時のボクにはかなりショックな一言だった。
たしかに自分で鏡を見ても、
光のあたり具合でレンズがキラッと光る。
光るとレンズの後ろ側にある目まで一緒に光ってみえない。
たしかにそんなコトもあろうかと、
それでコンタクトレンズにしようと一所懸命ガマンした。
ガマンもなれると、目の中に異物があることも
当たり前のようになりなによりメガネが
鼻の上にないことが快適で、快適で。

日本の飲食店の人たちをアメリカに連れて行きます。
前回お話ししたように、帽子をかぶってうつむきがちに
ファストフードのカウンターに立つことが
いかに危険かを経験できるたのしいツアーです。

けれど危険なのは帽子だけじゃない。
テーブルサービスレストランで、
さぁ、これから注文をとろうと意気込むウェイトレス。
彼女たちにとって、注文をとるというのは
サービスの中で最も重要な仕事のひとつ。
今日、一番おいしい食材や自信のある料理を
お客様に正しく伝える。
運良くそれを注文してくれれば、
厨房のスタッフがとても喜ぶ。
しかもお客様は必ず喜んでくれるに違いない。
そうでなくても、お客様の反応を見ながら
お客様がよろこびそうなモノを探りだす。

大抵、お客様というのは何を食べようか
あやふやなままメニューをみます。
そのあやふやな頭の中の霧を晴らしてくれるのが、
サービススタッフの経験豊富なアドバイス。

そのアドバイスの精度を上げるのがお客様の目の表情。
レストランにおけるコミュニケーションは、
目と目をあわせることからスタートする。
‥‥、まぁ、それはレストランだけに
限ったことではないのですけれど、
そんな目を見ることが仕事のウェイトレスが思わず
「あら、今日はメガネが多いわね」と言ったことがある。
確かにそのとき、半分以上の参加者がメガネをかけてた。
日本の人はメガネさんが多いですから
しょうがないことなのかもしれず、
でも、彼女たちの「やりにくいわ」という表情が
今でも記憶に残ります。

コンタクトレンズの技術も日進月歩。
メンテナンスがハードレンズに比べて
難しいからということで、敬遠していたソフトレンズ。
使い捨てのコンタクトレンズが発売されて、
それからずっとソフトコンタクトレンズの快適さを
享受していた。
それが6年ほど前のコト。
50を過ぎた頃から徐々に老眼がではじめて、
老眼鏡をかけないとレストランのメニューが
読めなくなっちゃった。
この老眼鏡というのがまた厄介で、
見る角度によってはレンズが虫眼鏡の役目を果たして、
レンズの中の目が魚の目のように大きくうつる。
ボクの母なんて、老眼鏡は文字をみるためだけのモノ。
誰かと話すときにはメガネを必ずはずすほど。

どうしようかと思っていたら、
近眼用のメガネをかければ
まだ老眼がでないことに気がついて、
それで今ではメガネ君に逆戻り。
メガネをしないとサービスをしてくれる人の顔が見えない。
でもメガネをしているとときに
ボクの目が他の人から見えなくなる。
さぁ、どうしようといつも気持ちはなやましく、
見てもらうことの方が大切かなぁ‥‥、と、
メニューを見終えたて注文すべき料理を頭に叩き込んだら
メガネを外してサービススタッフの顔を見る。
あとは笑顔で勝負でござる。
メガネですらもコミュニケーションに邪魔をする。
だからサングラスなんてモノ。
レストランの入り口でとっちゃいましょう。
また来週。

サカキシンイチロウさん
書き下ろしの書籍が刊行されました

『博多うどんはなぜ関門海峡を越えなかったのか
半径1時間30分のビジネスモデル』

発行年月:2015.12
出版社:ぴあ
サイズ:19cm/205p
ISBN:978-4-8356-2869-1
著者:サカキシンイチロウ
価格:1,296円(税込)
Amazon

「世界中のうまいものが東京には集まっているのに、
 どうして博多うどんのお店が東京にはないんだろう?
 いや、あることにはあるけど、少し違うのだ、
 私は博多で食べた、あのままの味が食べたいのだ。」

福岡一のソウルフードでありながら、
なぜか全国的には無名であり、
東京進出もしない博多うどん。
その魅力に取りつかれたサカキシンイチロウさんが、
理由を探るべく福岡に飛び、
「牧のうどん」「ウエスト」「かろのうろん」
「うどん平」「因幡うどん」などを食べ歩き、
なおかつ「牧のうどん」の工場に密着。
博多うどんの素晴らしさ、
東京出店をせずに福岡にとどまる理由、
そして、これまでの1000店以上の新規開店を
手がけてきた知識を総動員して
博多うどん東京進出シミュレーションを敢行!
その結末とは?
グルメ本でもあり、ビジネス本でもある
一冊となりました。

2017-02-23-THU