はじめての中沢新一。
アースダイバーから、芸術人類学へ。

とんでもなく大きい視野のイベントができました!
友人たちが関係者席に座りたがってタイヘンです。
タモリさんと、糸井重里の依頼で、
中央大学教授の中沢新一さんが、登場するんです。

30年間の研究を、徹底的に濃縮し、
糸井重里に邪魔されながら、
タモリさんに突っこまれながら、
旧石器時代から現在につながる人間たちを、
そして未来に向けての人間たちの希望を……
たぶん、目の前に、想像させてくれるはずです。

「対称性、という道具を持って世界を見るうちに、
 自分の思考の中でなにか決定的なことが起きた」

縄文地図を手に東京を歩く『アースダイバー』や
全5巻の大傑作『カイエ・ソバージュ』の内容を、
いい会場、きれいな座席、長丁場で、語りつくす!

イベントがどんなにおもしろくなるか、
想像できそうな、打ちあわせの会話を、
「ほぼ日」では、連載してゆきますね。

糸井 イヤがらせをされても
平気ぶってるというか、
悪口を読んじゃった後、
「……平気だい!」
といってるときには
もう負けてるんだよね。
タモリ 「なーにを」
っつった時には負けてる。
だから読まない。見ない。
糸井 勝とうとする人もいますよね。
中沢 ダメダメ。
勝とうとすると、
さっきのウナギと一緒になる。
タモリ さばかれて、焼かれちゃう。
中沢 (笑)
糸井 タモリさんの
「絶対見ない」という方針は、
すごいはやくから決めてるんでしょうね。
タモリ いっさい見ません。
中沢 俺なんか、バカだから、読んじゃったなぁ。
糸井 中沢くんは強いんだよ。
中沢 いや、しょげたよ、やっぱり。
糸井 しょげた?
中沢 ひどいこと書かれるわけじゃない?
糸井 これに対しては
こう反論できるとか考えませんか?
中沢 それやったら負けだと思う。
糸井 そうだね。
反論を用意してる時間には、
「インドネシアのことを研究しよう!」
と思うときの力強さはないわけだよね。
中沢 ダメダメ。
しゅんとなってくるのね。
「インドネシアじゃなくて
 沖縄ぐらいにしとこうか」とか(笑)。
タモリ (笑)だんだん、そうなる!
中沢 雄大なものがなくなってきますよ。
糸井 なくなるなくなる。
タモリ それが極地にくると、
「あぁ、俺は、
 いつもこうやって
 失敗してきたんだなぁ」
とか、なりかねないもん。
中沢 (笑)あはははは。
タモリ 過去を否定していくよね。
中沢 「そういえばあのとき」ね(笑)。
タモリ 「あいつと
 ケンカしたときもそうだった」
ものすごく落ちこむよね。
糸井 「もともと俺は
 これくらいの背丈じゃないか」
みたいな気分にさせられるし……。
タモリ やっぱり、
その状態は能力は絶対出ないよ。
糸井 出ないですよね?

能力が出てる人って、
やっぱりじょうずに
ほめられてる人だよ。
中沢 うん。
それと、読まない人ね。
ぼくもある時期からは
そういうのを一切、
気にしないことにした。
糸井 痛い目に遭わないと
「読まない」に気づけないんですよね。
中沢 だから、さばかれちゃっていたら
おしまいだったけど……。
糸井 そうか、中沢くん、苦労したんだもんね。
いちばんたいへんだった時はどうだった?
中沢 そのころは元気がなかったです。
糸井 「ぼくは何でもないです」
という顏をするだけで疲れるよね。
中沢 疲れる。
糸井 どのぐらいつづいた?
中沢 二年ぐらい。
糸井 そうか……
そのときは仕事は何をしていたの?
中沢 講義した。
講義して、ためて、
それが本になったわけですね。
あれ、忍耐でしたよ。
タモリ ふつう、へこむよ。
何の能力も出なくなるよね。
糸井 学校があったのは
ありがたかったね。
それと中沢くんは
大衆の支持があったでしょ。
だから簡単につぶせないし。
中沢 それがおおきかった。
糸井 そうか。
『カイエ・ソバージュ』という傑作は、
そういう、静かにしているときに
準備していたものなんだ。
中沢 うん。
たまっていたものが、出てるんです。
それで、だいたい、
ブラックマジックも終わるじゃない?
そうすると、
パワー全開になりますよね。
「脱した!」と──。


(明日に、つづきます)

2005-09-26-MON

(C)Hobo Nikkan Itoi Shinbun