ある日ほぼ日手帳の打ち合わせ中に 糸井重里は言いました。 「今度のロフト巡業で  手帳の実演販売をやるってどうかなぁ」。 実演販売といえばマーフィー岡田さん。 テレビでもそのお姿はお見受けできます。 あれよあれよというあいだに話は進んで 直接お会いしての打ち合わせとなりました。 録音しておいてよかった、と心底思える とっても濃くて深い打ち合わせでした。 その濃さをみなさんにも。 いや、この方、スゴイです。

その1 なんでまた、僕なんかに?
  はじめまして。  
  あぁ、どうも、はじめまして。  
  このたびはこの手帳の実演販売を
引き受けてくださってありがとうございます。
 
  いえいえいえいえ。
しっかし、なんでまた、
僕なんかに?
 
  いや‥‥こう言っちゃうとアレなんですが、
単に思いついたんですよ。
 
  (笑) 。  
  僕には広告屋という肩書きはあるんですが、
いまは広告をやらなくても売れる商品が
いちばんいい商品だ、と思っていて、
どんどん広告をやらない方向へ考えが
向かってるんです。
「ほぼ日」は、広告は出さずに事実だけを伝える
という方法で商品を売ってますからね。
 
  そうなんですね。  
  そういう考えの中で、
岡田さんの実演販売って、
その商品のいちばんいい事実だけを
積み重ねて見せていくという方法だから、
売る手段として新しかったと思ったんです。
それで、「岡田さんがやったらどうなるかなぁ」
っていうくらいの思いつきで(笑)。
 
  なるほど(笑)。  
  こんな根拠ですよ。  
  いやね、僕のところに声をかけてくれる方は、
しゃべって物を売るということに対して、
ある種の思い入れを
持っていらっしゃる世代なんですね。
子どものころにどこかでいろいろ見てたり。
 
  あぁ、そうですそうです(笑)。  
  それこそ、商品を買って
だまされたことがあるとか(笑)。
そういう思い入れを持っている方々が
「これやってみないか?」とか
「ここでやらない?」というふうに
いろいろと声をかけてくださるんです。
 
  うんうん。  
  えげつないことを言うこともあるんです。
お客をつかまえて「もってけ泥棒」とかね。
ただね、どういうわけか僕が言ってると
叱られないみたいなことがあるようなんです。
まえに僕よりも少し年上の
「広告批評」主催者の天野祐吉さんから
「おまえは客を泥棒扱いする。
 でも、それが許される存在なのだ」と、
へんなところを認めていただいたことも
ありましたね。
 
  あぁ、そういう感じありますもん。  
  そういう世界でずっとやってきたんです。
でも、僕のところに来る商品なんて
「これ、売るの無理だろう」っていう商品が
集まってくるんですね。
自分で苦労して作ってはみたものの売れなくて、
僕のところに持ってくるっていうパターンなんです。
そのうち8割は絶対に売れない商品ですから。
 
  8割ですか。
はぁー、そうなんだ。
 
  だから、この手帳みたいに
「置いておけば売れる商品」っていうのは
絶対に僕らのところには回ってこない。
置いておけば売れるんですから、
僕らはいらないんです、邪魔なんです。
 
  (笑)。  
  僕らを使えばマージンなりなんなりが
発生しますから、邪魔な存在でしかないんです。
だから、今回のこの依頼というのは
完璧な糸井さんの「洒落」だと思ってますよ。
 
  はい(笑)。
やっぱり僕にもしゃべって物を売ることへの
思い入れがあるんだと思いますね。
 
  どうせ売れてるんだから、
洒落とか余禄とかって思っていただけたら
僕のほうも気が楽です(笑)。
 
  目的はハッキリしてます。
これで売り上げが上がるとか、認知してもらう
ということを期待しているのではなく、
「売る」という行為をお客さんに
いちばん近いところでやってきた方が、
どういうことを言って
お客さんと接点を持つのかが知りたいんです。
 
  なるほど。  
  家庭用調理器具なんかだと、
説明書に書いてある、
誰が読んでもわかるようなことを
おっしゃってるはずなのにお客さんが食いつく。
何をお客さんがおもしろいと思うか、
という部分をつかんでいらっしゃると思うんです。
でも、手帳というものは目立つ機能なんてない
いわば「黙っている商品」。
この「黙っている商品」の
どの部分をどういう言葉でもって
お客さんをときめかせるのかが気になってます。
 
  いやいやいや(笑)。  
  僕ね、いまでも覚えてるんですけど、
タマネギを薄切りにする器具で
岡田さんがシャーっとやってひと言、
「イヤリングにもなる」。
もうたまんなかったですもの。
僕はその言葉にときめいたわけですよ。
 
  そこですか(笑) 。  
  それこそ、そのしゃべりの善し悪しを
「こんなことを言っても、
 きっと誰にも聞こえてこないよ」といった
取捨選択の判断でしているはずなんですよ。
今回、その判断部分が知りたいというのが本音です。
 
(続きます)
2008-12-11-THU

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更新の予定

11月中旬から下旬にかけて行われた
「期待しないでおたのしみに!
 糸井重里販売見習いツアー」。
その池袋ロフトと天神ロフトでは
マーフィー岡田さんの実演販売がありました。
これがね、やっぱり感心したんです。
おもしろかったんです。

このおもしろさをみなさんにも
味わっていただきたいと思い、
11月12日の池袋ロフトでの模様を
ムービーにて公開いたします。
ぜひ、「見て! 見て! 見て!」。