その2 直径3メートルの世界
  現実問題、売るということだけを考えれば
「みんなで見てください」なんていうことは
やらないほうがいいんです。
ひとりひとりに教えるように
説明しながら接客するというのが
正解なんでしょうけど、
それをやったところで誰も感心しないし、
私を呼んだみなさんだって納得しない。
 
  うん、納得しない(笑)。  
  だからある程度のパフォーマンスとして、
せいぜい直径3メートルくらいですが
「僕らの世界」で勝負させてもらいます。
会場が大きかったりすると、
ただ商品を見せているだけという状況に
なってしまうのですが、
商品を売るんだったら
このくらいの距離感がいいんですよ。
見てくれているお客さんと親密になれるんです。
 
  うんうん。  
  正直言いまして、この手帳で実演販売をやるのは
難しいですよ。
それこそ野菜カッターなんかは
大根持ってりゃ、一目瞭然なわけですけれど、
手帳となるとそういうわけにもいかないですし。
やれ方眼がどうだ、と言ったところで
お客さんにはハッキリ見えないんですよ。
 
  なるほど、そうですね。  
  難しい、と思っているときに
「売らなくていい」っておっしゃっていただける。
それはすごくホッとするんです。
 
  (笑)。
僕、いま聞いててすごく思うのが、
昔とちがっていまの商品って、
3メートルくらいの範囲の人たち、
つまりお客さんがつぎのお客さんに
売ってくれてるんですよ。
商品を買った彼女が
彼氏に薦めて買わせるみたいな図式ですね。
この薦めるときの会話が
いちばん知りたいところなんです。
だから、その3メートルの範囲には
正しいセールスマンを育てるということと
同じ効果があると思うんですよ。
 
  いやいやいや、違うんですよ、
正直言って僕らの商品っていうのは
そんなにいいものじゃないんですよ。
こう、3メートルも離れると忘れちゃうというか、
買う気満々でも3メートル離れると
一気に冷めちゃうとか、
そういう商品なんですって。
 
  おもしろいなぁ。
本気で言ってますもんね(笑)。
 
  冷めたあと家に帰ってから
「あぁ、買わないでよかった」と思えますよ。
 
  (笑)。
これと同じ話を、たとえば島田紳助さんみたいな
商売っ気のある芸人さんと
「島田さん、お願いします」みたいな話を
したとしますよ。
 
  はい。  
  そうしたら、「売ってみせる」という方向に
話を持っていくと思うんですよ。
でも、岡田さんは自分のやっていることを
どんどん低く低く持っていくじゃないですか。
 
  いやいや、そんな(笑)。  
  これ、もう、やられるなぁ。
なんなんでしょうね、それって。
 
  なんなんでしょうね(笑)。
僕らから買うお客さんって、
あの岡田とかいうオヤジがやってたから
俺にもできると思って
買っているみたいなんですよ。
 
  うんうん。  
  たとえば、5個のことができる商品の
実演販売をおこなうときに
僕らは5個やって見せるんですが、
僕らから商品を買ってくれるお客さんって
5個できないんですよ。
できてせいぜい2、3個。
それでも2、3個はできるから、
「まぁいいか」って思ってくれる。
 
  ほぅ。  
  あとは僕らの実演を見て
「そこまでやるんだったら、ひとつつき合うよ」と
買ってくれる。
そんな程度のお客さんが多いんです。
 
  はぁ(笑)。  
  それに対して、この手帳、
ふつうの人がふつうに買っていくでしょう?
 
  うんうん。  
  5個のことがあったら
誰にでも5個のことできちゃいますよ。
何にも聞かなくったって
有効的に使えるというわけですよ。
これはそういう商品だってことです。
 
  ‥‥うわぁ。  
  (笑)。  
  スゴイ。いまの話だけで僕、
手帳買う気になっちゃいました(笑)。
 
(続きます)
2008-12-12-FRI

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