HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN
ひとのしあわせを読む仕事。
手相観 日笠雅水さん プロフィールは、こちら。
20代のとき、糸井重里に
「きみは手相を観ることを仕事にしなさい」
と言われた、もとYMOのマネジャーのマーコさん。
いま「手相観の日笠雅水さん」として知られる彼女と、
ひさしぶりに、長い時間、話しました。
人によろこんでもらえることって、なんだろう。
それが仕事になったら、どんなにいいだろう。
じぶんのやるべきことって、これなのかな。
きっとみんなが悩んでいることに、
もしかしたらヒントになるかもしれない対談です。
いままでの「ひとのしあわせを読む仕事。」」
今日のお話。
第1回
糸井重里、マーコさんに
20年ぶりに手相を観てもらう。
最終回 人って、自分の思ってることを自分が一番知らない。手相は、自分が思ってることを知る旅。
── きょうは、まず糸井重里の手相を
日笠さんに観ていただこうと思います。
糸井 はい、じゃ、手を出したほうがいいですか。
え、それで穴をあけたり
するんじゃないでしょうね、
まさか私に(笑)。
向かい合ってていいんですか。
日笠 (笑)あ、向かい合ってていいです。
糸井 僕はマーコに今まで
何回観てもらったことだろう。
多分、マーコは僕の手を
30代半ばぐらいから観てないですよね。
日笠 多分、私が30ぐらいのときから
観てないんじゃないでしょうか。
糸井さんは6つお兄さんだから、
それぐらいですね。
糸井 それぐらいですよね。
だから、多分そこからまた
ゴチャゴチャとあって、
何回か生まれ変わってるんでしょうね、
‥‥きっと。
日笠 変わってるようですね。
──ずいぶんやっぱり、優しい、穏やかな、
いい手になってらっしゃいますよ。
やっぱり前は、勢いが、
ダーッとある手だったですもん。
この運命線って、中指に向かっていく線、
まずここでちょっと
多少の切替えがありますよね。
ここと、こことか、こことか、
‥‥こことか、あとこことか。
糸井 はい。
日笠 これは何か人生における
切替えっていうふうに見てるんですね。
で、34歳のときに
まず1回目の切替えがありました。
次にその流れでダーッと来たものが、
45歳なんですね。そして47歳で
穏やかで広がる世界に入ってきている。
ひとつの道だけをダーッじゃなくて、
力でドッ、じゃなくて、
ここから広がりっていうのが
始まってきてるわけです。
1本の強かった線だったのが、
これも、これも、これも、これも、
運命線になってるわけです。
今年59歳になられるってことは、
今ちょうどそんなふうな時期に
あるってことなんですね。
糸井 僕、59になるんですか。
日笠 昭和23年生まれの59歳ですよ。
糸井 あ、そうか、はい。
すいません(笑)。
日笠 線としては、若い頃の線に比べたら、
流れは薄いんですけど、
細かい線が広範囲にあります。
例えば太陽線なんかも──、
これは“ひとつ”の
明るさとか知名度だとか、
成功だとかっていうんじゃなくて、
細かなものが合わさって
ワーッと広がってきてる感じ。
例えば、1本の強い急流が
ダーッていうんじゃなくて、
例えばメコン川の河口堰みたいな、
いっぱいの枝葉のような‥‥
糸井 毛細血管みたいになってるの?
日笠 そう、毛細血管状態です。
糸井 いいじゃないですか。
日笠 だから、ひとつの道、ひとつの場所、
ひとつの肩書きでっていうんじゃなくて、
いろんな意味合いのいろんな線が
たくさん集まって
太陽線とか運命線って形になってますね。
糸井 それ僕、理想です。
日笠 そして、穏やかだし、
ここが、ほら、すごくあいているってことは、
本当にオープンマインドであるし、
我(が)を張らなくなってる。
そういう手なんですよ。
我を押し出してない感じがしますね。
だから、ある意味、この言葉は悪い意味ではなくて、
「どうでもいい」っていう感じがすごくして、
──なんだか、しおらしい感じが。
糸井 もうそのとおりですよ。
日笠 きれいです。
これが二重生命線になってますから
住居を2つ持ち、まだまだちゃんと
しっかり長生きできていきます。
糸井 本当ですか。
日笠 うん、まだ全然長生きします。
糸井 来年ガンが発見されるとか、
そういうことはないですか。
日笠 ガンはならないでしょう。
ガンはね、目の周りをいつも
自分で気をつけて見ていてください。
黒目の周りにちょっと虹のように
丸いわっかみたいなのが出てきたり、
手相の線が妙にエビ茶色っぽく‥‥
糸井 エビちゃん。
日笠 エビちゃん。エビ茶ちゃん。
そうしたときっていうのは
ちょっと気をつけたほうが
いいかもしれないですけれど。
でもね、糸井さんは、
元気いっぱい! っていう感じでは、
実は、なくて、
穏やかー、な感じです。
なんか“ご隠居願望”みたいなのが
強くなってきていますね。
糸井 ‥‥!
日笠 どうも61、2ぐらいから、
いい意味でのご隠居生活を楽しむために
今、準備をしている。
体力もご隠居に向けて、
穏やかに暮らすために
体の内部を作ってる感じですね。
これからますます頑張るために体鍛えるとか
1万歩歩くとかっていうんじゃなくて、
‥‥何と言ったらいいんだろう、
強い抵抗力というんじゃなくて、
柔らかい穏やかーな抵抗力がついてくるような
力のつけ方のような気がしますね。
糸井 いいですね、それは。
日笠 健康線だとか生命線とか
いろいろ観ていって──、
全然病気の気配が出ていない。
ただ、ほんの薄ーく腸にちょっと炎症が。
多分2、3週間ぐらい前にちょっと何か‥‥
糸井 お腹はしょっちゅう、ですよ。
日笠 そうですか。
これはちょっとした腸の炎症の跡ですね。
今は炎症が治まった感じです。
ではてのひらを表に返して、
爪を見せてください。
 
糸井 はい。
日笠 そうですよ、この手ですよ!
糸井 え?
日笠 大好きなの、この形が(笑)。
あぁ、もう全然大丈夫。
爪の色つや、半月の出方、全然OK。
いい手ですね。
爪っていうのは、
健康状態とかだけじゃなくて
ストレスとかもわかるんです。
糸井 (自分の手を見ながら)
でも、だいぶん年取ったよね、思えば。
日笠 でも、いやー、
58でこの手はきれいです。
きれい、きれい。
糸井 あ、そうですか。
日笠 うん、きれいです。
いい意味で女性化してきてるからいいですね。
糸井 あ、それ自覚があります(笑)、アタシ。
日笠 (笑)でも、ほどよい感じ。
全然、力みもないし。
手相っていうのは
別に線だけで見ていくんじゃなくて、
指のどこにどう力が入っていくかとか、
指の姿勢とかすべて含めて観ていくので。
糸井 「感じ」だね。
日笠 うん、そうです。糸井さんはすごく穏やかだし、
力をケチって温存してるわけじゃなくて、
先に向けてゆっくりと
何か深いところを鍛えながら、
「フフフフフ!」という感じです。
糸井 今の、歌ですか(笑)。
日笠 いや、なんか、心の笑い。
糸井 あ、心の笑い(笑)。
僕は、それは全部嬉しいです。
日笠 そしてそのご隠居生活が
ものすごく、また違う展開を
見せるというか‥‥
糸井 僕の夢です、それは。
日笠 仕事をやめちゃうとか、
もう経済活動をしないってご隠居じゃなくて、
何か新しいご隠居スタイルを
作っていかれるって感じがしますね。
糸井 ぜひそうしたいと、今、強く願ってますね。
会社に邪魔しに来るおやじになりたいってのが
僕の夢ですから。
会社はちゃんとやってて、
どうなったか知らないけど、俺が来ると
「イヤなんだよな」と言われるような(笑)。
日笠 それぐらいになってくれればいいですねえ、
本当に。
 
糸井 「イヤなんだよな」って言うけども、
そのままよりも退屈しないから、
結果的にはよかった、みたいなのが理想ですね。
日笠 それになれれば一番いいでしょうねえ。
ずいぶん前はやっぱり勢いがあって、
戦うっていうんじゃないけれども、
ターッと行く青年だったんですよ。
もちろん年齢的にも青年だったですけど、
そう、なんか、優しい手になりましたね。
(つづきます!)
2007-04-03-TUE
Illustrated by 酒井うらら