カメラに乗って旅をしてきた。操上和美さんと糸井重里の、いい時間。

第01回 スキャンダルなヌード大行進。

糸井
あっちが「TOBICHI」で
こっちが「TOBICHI2」って言うんです。
操上
もともと、一軒家だったの?
へえ、お墓の上にあって、守られてるね。
糸井
ちょっといいでしょう?(笑)
操上
俺、「お墓探知機」あったんだよね。
糸井
聞いたことあります(笑)。
操上
今はそうでもないんだけど、
とにかく「わかっちゃう」ようになって。

知り合いが引っ越したっていうから
遊びに行ったら、
玄関から入った途端に「うわぁ」と。
で、裏へ行ってパッと見たら
お墓があって「やっぱりあった」と。
糸井
へえ。
操上
いやあ、敏感なときは大変だったなあ。

だって海外ロケでホテルに泊まっても、
何かが「待ってる」んだよ。
糸井
「待ってる」(笑)
操上
バリ島なんかだと、昼間っから待ってる。
気分の問題なんだろうけどね。
糸井
でも、いちどそう思い込んじゃったら
この世なんて
「悪霊だらけの空間」なわけで(笑)。
操上
そうそう。
糸井
ちなみに「クッキリ」なんですか?
写真家だし。
操上
クッキリ、ハッキリ。
糸井
イヤだなあ(笑)。

写真や絵の下手な人だったら
「ピンぼけ」してるのかもしれないけど、
操上さんの場合、
細部まで「クッキリ、ハッキリ」(笑)。
操上
ホテルの壁をじーっと見てたりするとさ、
日の高いうちから
「うーん、そこに何かがいるなぁ。
 もう帰ってよ」と‥‥。

ま、今日はそういう話じゃないんでしょ?
糸井
ええ、その話でもいいんですが(笑)、
ぼくが、あらためて
操上さんと話したいなあと思っていて。
写真
操上
それは、光栄です。
糸井
あの、ちょっと前まで、「ほぼ日」で
若手から中堅くらいの写真家が
たくさん出てくる特集をやってたんです。

それが、すごくおもしろくて。
操上
ああ、おもしろいでしょう。
糸井
写真家どうしの会話って
案外、聞いたことなかったんですよね。

たとえば「どうやって食えてるのか?」
みたいなリアルな話。
操上さんは若い写真家、知ってますか。
操上
知ってますよ。大森克己とか。

でも、若い写真家どうしなら
そういう話、するんじゃないですかね。
糸井
若くない人はしない?
操上
若いころはしてたと思うよ、みんな。

売れる前とかにさ、
「今に見てろよ」みたいな感じでね。
で、ちょっと売れてくると
「俺らの時代だ」とか何とか(笑)。
糸井
操上さんたちの若いころっていえば、
「APA」って、ありましたよね?
操上
日本広告写真家協会ね。

今もあるけど、
俺、そこの展覧会の委員長に推薦されて、
やったことあるんだ。
糸井
操上委員長。70年代?
操上
そう。九州・大阪・札幌‥‥とか
全国各支部をまわって
「今年はこういうテーマで展覧会します。
 つきましては、
 みなさんどうぞ協力してください」
というようなね、
そういう役まわりをやったことある。

で、展覧会のタイトルを
「スキャンダル」にしたんだけど‥‥。
糸井
ええ、覚えてますよ。
操上
そのとき、当時の顔役の人に呼ばれてさ、
「お前さあ、百貨店でやる展覧会で
 『スキャンダル』はないだろ。
 『華麗なるスキャンダル』に変えろよ」
とかって言われたわけ。
糸井
そうなんですか。
操上
俺もまだ若かったから
「スキャンダルはスキャンダルでしょう?
 イヤです」って、突っ張って。
糸井
でも、タイトル変えたらダメですよね。
操上
せっかく「スキャンダル」ってつけたのにさ、
「華麗なるスキャンダル」じゃ、
そんなの「スキャンダル」じゃないじゃない?
糸井
うん、ぼくが覚えてるのは、
かつて南千住にあった東京スタジアムで、
ヌードの女の人が、たくさん‥‥。
操上
100人ね。
糸井
そうそう。
操上
あれは「スキャンダル」の前の年かな。

たしか「ヌード大行進」ってタイトルで、
新宿とかいろんな街から
100人の女の子を、バスで集めてきて。
写真
糸井
ええ。
操上
その100人のヌードの女の人に、
真夜中のスタジアムを突っ走ってもらって
俺らも一緒になって走って、
一人じゃ無理だから大勢で撮ってね。

そんなバカなこと、やってたな。
糸井
それ、誰にも「深い考え」ないですよね。
操上
ない、ない。ただの「ヌード大行進」。
糸井
それ自体が「スキャンダル」ですよ。
操上
そんなことばっかり、やってました。

<続きます>