第5回 やっと映画のお話を
山下
映画の感想を言い合う
感激団なのですが‥‥。
前回は
「ニワトリはなぜ毎日タマゴ産むか」
という話題で終わりました。
ダーリン
いや、ごめん、
すまないと思ってる(笑)。
いくらなんでも飛ばしすぎた。
山下
糸井さん、たしかこのあと
予定が入ってましたよね。
ダーリン
うん、もうすぐ行かなきゃ。
山下
わかりました‥‥。
とにかく乗組員のあいだで、
マッシュルームカットの話題が
盛り上がっていて
それがどうしてこの感激団になったのか‥‥
ぼくはもう、わけがわからなくなっています。
ナカバヤシ
(笑)では、わたしから。
まずわたしが、
宮崎でマッシュルームカットにしたことを
社内にメールで回しまして。
それで、以前からマッシュルームだった
杉江さんやゆーないとさんのあいだでは、
「マッシュルームカットはむずかしいらしい
 というが、それは本当なのだろうか」
という疑問があったりして、
ネットで検索したら
見知らぬ美容師さんのブログに
「難しいんだよ」と。
で、その見知らぬ美容師さんの好きな映画が、
『バーバー吉野』と書いてあって‥‥
山下
出た! 
やっと、やっと出てきました、
『バーバー吉野』というタイトルが!
ゆーないと
なんか、ひさびさな感じー(笑)。
あやや
出ました〜。
一同
ぱちぱちぱちぱち(拍手)。
ナカバヤシ
で、そのブログに
「バーバー吉野に出てくる
 マッシュルームカットの技術はすごい」
って書いてあって、
「ほお〜」と思って、
そのブログのこともみんなに教えたら、
やまかわみっちゃんが‥‥
ダーリン
「わたし、その映画観ました」って。
山川
はい、おもしろかったので、
みなさんも観られるといいなあと。
山下
さあ、感想です!
そんな、いちばん最初に
『バーバー吉野』を観たという、
みっちゃんの感想を聞かせてください。
山川
わたしが
いちばんおもしろいと思ったのは、
DVDの特典映像なんですけど。
山下
特典映像?
山川
カットをする
メイキングシーンがあるんです。
男の子の頭を整えるシーンが、
こう、子どもたちを一列に並べて。
それがですね、
地毛でマッシュにできる子は
ほぼ、いないんですよ。
ダーリン
へえええ〜。
ナカバヤシ
髪の長さが足りないんだ。
山川
ええ、おそらく。
で、全員、
こういうウィッグを、かつらを、
最初にかぶらされて、それを切るんです。
ダーリン
そうか、まずはロン毛からなんだ。
でも、ただ全部を伸ばしていくと、
落ち武者になっちゃうんだ。
整えるんだ。
山下
‥‥あの、みっちゃん、
いちばんおもしろかったのは、そこ?
山川
え?
ナカバヤシ
髪形の話にもどりそう(笑)。
山川
あ。
山下
映画の本編、本編は?
山川
すみません!
あの髪型が印象的だったんで、
ついメイキングのそういう話に‥‥。
で、本編では、きのこ頭だけの学校に
すごいかっこいい男の子が
都会から転校してきますよね。
山下
きます、ロン毛っぽいの男子が。
山川
町をあげての
大騒ぎみたいになっちゃって。
クリンとした頭の男の子たちが、
「おれたちの頭は変なのか」
みたいに真剣に悩むところが、
すごいいいなーと思って。
ナカバヤシ
転校生と子どもたちが
うちとける理由がいいですよね(笑)。
山下
そう、転校生がその、
エッチな本を持っていたという(笑)。
ダーリン
ああ、そうでしたね。
枝葉ではなくて、幹の部分でしたね。
ボディでわかり合ったというか。
人間誰しも‥‥みたいなところに行きました。
山下
ぼくはそこがすごく印象的でした。
ダーリン
都会から来た子は
情報を武器に対抗をしますよね。
山川
でも、エッチな本持ってるくせに、
「髪型は自由だ」みたいな思想的な、
ちょっと難しい言葉を使うところも
かわいいなと思いました。
ダーリン
ストーリーの最後も
強烈なハッピーエンドではなくて。
なんというか、
髪型いっこの中に、いろんなの問題を
とにかく押し込めた映画ですよね。
で、観た後で、みんなでこうやって
話してるんだから、大成功かもしれない。
山下
ああ、そうですねえ。
あやや
単純な感想かもしれないんですが、
この監督の映画は、タイトルがいいです。
ダーリン
うん、この人、タイトルで勝負してます。
いつも、そこにテーマが書いてあるんだよ。
ナカバヤシ
『バーバー吉野』
山川
『かもめ食堂』
ゆーないと
『めがね』
山下
どの作品もゆったりしてて、
ストーリーが
どんどん展開するわけじゃなくて。
ナカバヤシ
それだけに読者に
オススメするポイントが
なかなかむずかしいのかもしれませんが‥‥。
ダーリン
1枚の絵があったとするじゃない?
その絵について感激団をやっても、
そんなに長くしゃべれないと思うんですよ。
でも、いっぱいしゃべることはなくても
おすすめしたいとか「よかったよ」って、
それはけっこう言えることで。
映画の場合にも、そういうことが
あるんじゃないかと思うんですよね。
1枚の絵みたいに扱っていいんじゃないかと。
山下
なるほど、なるほど。
ダーリン
ストーリーのほうばかりに
映画を追い込みすぎても、ね。
ナカバヤシ
大どんでん返しみたいなのがなくても。
山下
複雑な複線をたのしむとか、
それはそれとして。
ダーリン
うん。ゆっくりとこう、
魚を焼いていくみたいに素材を網にかけて、
こう、ゆっくり焦がしていくような。
この監督の作品はそういう楽しみでしょう。
山下
そうですね。
『めがね』なんかもそうでした。
ダーリン
で、あんまり退屈しそうなところには
変なもの出して。
ゆずぽんみたいなアクセント入れてみたりさ。
山川
ときどき変なモチーフが入ってきますよね。
体操とか太極拳とか(笑)。
ダーリン
それと、いい意味で閉じてるでしょ、
荻上監督の映画って。
『バーバー吉野』なら、あの村だし、
あとは旅館とか食堂とか。
あの閉じた感じがないとつくれない。
そういうのは何かというと、民話なんですよ。
ナカバヤシ
民話。
ダーリン
本当にあったことが
元っていうか、こう‥‥
人が生きてることの
すごみみたいなのがさ、
やっぱりね、あるんだよ民話には。
そういう気配みたいなものを
見つけてくるのが、
この監督はけっこう上手で‥‥。
軽くやってるんだけど、どこか1点だけ、
ピンスポットで、その気配があるんだよ。
山下
気配が。
ダーリン
そう、気配。
あとおもしろかったのは、
その閉じた村では信仰の対象として
「天狗」とかじゃなくて
「ハレルヤ」があったでしょ。
山川
子どもたちが賛美歌を歌う。
ダーリン
そう、それって
異教徒の文化じゃないですか。
山下
はい、「なんで?」って
ちょっと思いました。
ダーリン
その「なんで?」は
「なんで?」のままで
終わっちゃってる。
あやや
謎解きとか、ないですもんね。
ダーリン
それって
「これは嘘の話ですよ」っていう、
サインなのかもしれない。
一同
ああ〜。
ダーリン
その辺は、いいですよね。
「嘘のお話ですよ」って
ちゃんと言うことは、
全体を本気にさせますから。
山川
そういう効果が‥‥。
ダーリン

「なんで?」っていうのは
そのままにしとくのが
いいのかもしれないね。
丸顔の人がさ
似合わないマッシュルームにするのは、
「なんで?」なんだけど、
それは正解なのかもしれない。

一同
(笑)
ダーリン
いや、
それは本当にそうなんだよ、きっと。
‥‥おもしろいな。
山下
‥‥はい。
なんだか不思議な感激団になりましたが。
一同
(笑)
ダーリン
髪型ひとつで、これだけ話す場を
与えてくれたっていうことは、
この映画はやっぱり成功で、
そして、この座談会はおもしろかった。
これほんとに、やってよかったわ。
山下
はい。
ダーリン
じゃ、おれは時間がきたので去るよ。(去る)
ゆーないと
‥‥社長、いっちゃいました。
ナカバヤシ
はあ〜、おもしろかった。
あやや
いろんな意味で濃かった(笑)。
山川
なんか、すごかったですよね(笑)。
山下
なにはともあれ、
最後に映画のお話ができて
ほんとうによかったです!
(おわります!)
2008-11-28-FRI
 
協力

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今回の感激団メンバー
ダーリン 山川 スギエ
ナカバヤシ ゆーないと 山下


感激団による
『バーバー吉野』のああらすじ
 
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