第2回 杉江とゆーないとのマッシュルーム
山下
映画の感想を
言い合う感激団なのですが、
糸井さんが杉江さんの髪形の話も
聞くべきだと。
ダーリン
そう、聞くべき。
さあ、杉ちゃん、どうぞっ!
スギエ
はい。
高校生のとき、わたしは北九州なんですけど、
ローリング・ストーンズが好きで。
北九州のわたしのまわりには、
ビートルズを好きな人さえいなくて、
ストーンズ好きなんかゼロだったんです。
でも、わたしは好きで、
ずっとストーンズのブロマイドを集めてて。
その中に1枚、ブライアン・ジョーンズの
めちゃくちゃかっこいい写真があったんです。
ダーリン
知らない人のために言っておくと、
ブライアン・ジョーンズっていうのは
ローリング・ストーンズ初期のギタリストで
バンドのリーダーだったんだよね。
スギエ
はい。それでわたし、
そのブライアン・ジョーンズの写真を見て、
「これは案外、自分の顔の形に似てるかも」
一同
(笑)
スギエ
ミック・ジャガーのほうが
好きだったんですけど
ブライアンもかっこいいし、顔の形似てるし、
「これならイケるかも」と思って、
そのブロマイドを手に、美容室へ‥‥
ナカバヤシ
行った。
ダーリン
行くんだよ(笑)。
スギエ
行ったんですよ。
でもあんまり高いお店には行けないから。
ダーリン
北九州だしね。
スギエ
北九州だし。
まあまあのところ、そこそこのお店、
高校生でも行けるところに行って、
「これにしてください」って。
ナカバヤシ
言った。
ダーリン
言うんだよ。
スギエ
言ったんですよ。
山川
美容師さんの反応は?
スギエ
「え?」みたいな。「は?」みたいな。
「お客さんの髪質じゃ無理ですね」って。
ダーリン
あー、そのひとこと、言うよなあ。
スギエ
でも、わたしはあきらめなかったんです。
どうしてもブライアンになりたくて。
ゆーないと
なりたくて(笑)。
スギエ
「じゃ、パーマかけてください」と
言いました。
ダーリン
ブロマイドを指さしながら(笑)。
スギエ
はい。そしたら美容師さんが「嫌」って。
一同
(笑)
スギエ
「ならないから、パーマかけても
 そういうふうにならないから」って。
でもわたしは何としてもかけたくて、
「いいから、とにかくかけてさえもらえれば、
 あとは自分でなんとかするから」って。
で、かけてもらったんです。そしたら‥‥
一同
そしたら?
あやや
お〜んもしろ〜い
髪形になっちゃって(笑顔)。
一同
わはははははは!
山川
どういう具合でおもしろくなったんですか?
あやや
要は、ここがぜんぶクリックリに、
巻き込んじゃって、
ぜんぶがこういうふうに。



一同
わはははははは!
あやや
で、それが遠足の前の日で、
えらい状態で遠足の写真に載ってる(笑)。
一同
(笑)
ダーリン
いやぁ、この話はおもしろい。
人が何かを実現しようと夢を持って、
それが捻じ曲げられてくる歴史の話だから。
でも今は、なりたい髪形になれるんだねえ、
技術で。豊かなことですよね。すごいですね。
山下
ありがとうございました。
というわけで、ぼちぼち映画の‥‥
ダーリン
いや、山下さん、まだでしょう。
まだこれ行けるでしょう、まだもったいない。
ゆーないと
しつこい(笑)。
あやや
ゆーないとさんの話は?
ゆーないと
あっし。
ダーリン
いきなさい、話しなさい(笑)。
ゆーないと
あたしは、もともとあこがれてて。
まず前髪を作って、
こうやるのにすごくあこがれてたんですよ。
こーいうふうにつながってるやつに。

ナカバヤシ
きれいなマッシュルームに。
ゆーないと
でも、
顔がまん丸だから似合わないと思ってて。
で、ある日、友だちが家に泊まりに来て、
「ちょっとさ、切ったほうがよくない?」
とか言われて、
「あ、切っちゃおうか」って調子に乗って、
なんか切って、それで、
「あれ? これイケる?」と思って。
一同
(笑)
ゆーないと
で、いつも行ってる美容室に行って、
「自分で切っちゃったんですけど、
 マッシュルーム的にしたいんで、
 きれいにしてください」って言ったら、
「まあ、いいけど‥‥」とか言われて。
ダーリン
先方(美容師)は乗り気じゃないんだ。
ゆーないと
そう、
それから1年くらいこの髪形なんだけど
いまだに先方は乗り気じゃないんですよ。
この前なんか、
「面倒くさいんだよね」とか言われたし。
一同
ええー(笑)。
ダーリン
言っちゃった。
ゆーないと
きれいに整えるのは
けっこう面倒くさいって。
そのくせ「いいでしょう、このライン」とか、
すごく自負するんです、先方。
ナカバヤシ
自負(笑)。
ゆーないと
でも最近ね、
きてるじゃないですか、きのこが。
山下
流行ってますね、
局地的にかもしれないけど。
ダーリン
いやいやそうじゃない、
局地じゃない。
明らかに局地じゃないんです。
ひとつの典型は、宮沢りえちゃんですよ。
山下
あ、一般的に流行ってる‥‥?
ダーリン
きてるんだよ。
ゆーないと
そう。だから、
「いま、きてるから、これ、もうちょっと
 続けたほうがいいと思うんですよね」って
あたしが美容師さんに言うんだけど‥‥
ダーリン
どんな会話だ(笑)。
ゆーないと
先方は「そうかなぁ」って言うから、
「いや、きてますよ、世の中見てください、
 木村カエラちゃんもそうですよ」
ダーリン
あ、カエラちゃんもそうだ。な?
山下
ほんとに流行ってるんだ‥‥。
あやや
あと「モテないですよ?」って言われない?
ゆーないと
言われる言われる! 美容師さんに!
「自分の彼女にはさせたくない」って。
女の人としてマッシュルームは嫌だって。
ナカバヤシ
ひどい(笑)。
あやや
わたしは
「おもしろくなるけどいいんですか?」
って、念を押されるんですよ。
ゆーないと
「丸顔に丸い髪形ですよ?」
あやや
「丸に丸はおもしろくなりますよ?
 女芸人みたくなりますよ? 
 モテませんよ?」
ゆーないと
よけいなお世話(笑)。
ダーリン
すごい会話してるよ、この人たち。
だって昔さ、ゆーないとさんなんか
「モテる髪形にしてください」っていうのを
書いたりしてたじゃん。
ゆーないと
そう、かつてはモテるために(笑)。
おなじ美容師さんなんですよ。
ダーリン
そうか、だから先方も乗り気じゃないんだ。
ゆーないと
ですねえ。
モテる髪にしていた俺が、
なんでモテないように
切らなきゃいけないんだっていう。
あやや
そう、複雑な心境だと思う。
ダーリン
すっごい重厚だな、この話。
一同
(笑)
あやや
美容師さんもすごい葛藤ですよね。
かわいくするのが自分の仕事だったのに、
似合うように似合うようにって考えてたのに、
あえて似合わない髪形をつくらされて、
なおかつ技術がないと、
このバランスにならないわけじゃないですか。
それはすごいハードル高いと思う。
山川
むずかしそお。
山下
似合う似合わないですらないんですね。
ダーリン
それって、すごく新しいし、なんかこう、
コム・デ・ギャルソンの
コンセプトみたいだね。
ナカバヤシ
ああー。
ダーリン
女らしいかわいさとか、
そういうのをぜんぶはずしちゃった上で、
それを選ぶんだから。
ゆーないと
ほんとだー。
ダーリン
「まるで少年のように」っていうのと
同じようなことじゃないですか。
だからついに、川久保玲のコンセプトに
世の髪形が届くようになったっていうか‥‥。
山下
あの‥‥すみません、
できればぼちぼち、映画のお話を‥‥。
ダーリン
ええ?!
中林さんの話を聞かないで?!
山下
ま、まだいきますか?
ダーリン
いくべきでしょう。
(つ、つづきます)
2008-11-25-TUE
 
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ナカバヤシ ゆーないと 山下


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