4月からはじまった「ほぼ日」の就職論特集。
最後は、この方の登場です!
矢沢永吉! E.YAZAWA! 永ちゃん!
あちらをたてればこちらがたたず、
決めねばならぬが決めかねるという
就職のもやもやした状況を、
スカッと吹っ飛ばしてもらいましょう!
『成りあがり』『アー・ユー・ハッピー?』の
2冊でタッグを組んだ、盟友・糸井重里が
働くことについて、永ちゃんに訊きます。



2007-06-01 予告
2007-06-06 第1回 10年前の俺らは
2007-06-07 第2回 子分になる才能がない
2007-06-08 第3回 なにがストレスって「人間関係」だね
2007-06-11 第4回 プラスとマイナスはセット
2007-06-12 第5回 矢沢は、誰にも教わってない。
2007-06-13 第6回 クソ真面目な矢沢
2007-06-14 第7回 矢沢の就職論。
2007-06-15 第8回 そういう生き方に憧れてたんだ
2007-06-18 第9回 がんばりすぎちゃったかな
最終回 上がりたかったんだ。


最終回 上がりたかったんだ。
糸井 じゃあ、最後にひとつ。
この「就職論」という特集の中で、
就職についてすごく詳しい人としゃべってたら、
けっきょく面接のときに、いちばん知りたいことは、
「あなたがいちばん大事にしてきたものは何?」
っていうこと。それだけなんだって言うんです。
それがちゃんと聞ければ、
その人と仕事したいかどうか、
だいたい、わかるって言ってた。
永ちゃん、そういうもの思いつく?
ずっと大事にしてきたもの。
矢沢 大事にしてきたもの‥‥若いときから‥‥。
それはやっぱり、これまで
言ってきたようなことなんじゃないのかな。
表現のしかたは、若いときと、いまとで、
違うかもしれないけど、
自分が思ってることは変わってないと思うんだ。
どういうことかというと、
上に行きたいと思ったわけだよ。
「金持ちになりたい」とか、
「えらくなりたい」とか、
言い方はいろいろあるけど、
上に行きたいと思ったわけだよ。
糸井 上がりたかったんだね。
矢沢 上がりたかったんだよ。
「上がりたい!」と思ってたもん。
といってもね、
泥棒して上がってもしょうがねえな、と。
糸井 ああ。
矢沢 みっともないことして上がっても
上がったことには、ならないし、気持ちもよくない。
自分の力で、上がりたかったんだろうね。
上がりたいってことは、変わってないね。
糸井 それは、きっと、立場が違っても
同じように思えることだろうね。
音楽家だろうと、会社員だろうと。
科学者だってそうなんだろうね。
顕微鏡覗いてる人でも、
その世界で上がりたいんだろうね。
矢沢 そうよ。
「上がりたい」ってことば、いいね。
糸井 うん。金だとか、役職じゃなくて、あるよね。
「上がりたい」はね。
矢沢 金持ちになりたいとか、いい暮らしがしたいとか、
いろいろ言うけど、あれは、ほんとは、
「上がりたい」って言ってるんだよね。
「上がりたいんだ」って言ってるんだよ。
糸井 そうかもしれないね。
バンドで武道館でやりたいっていうのも、
全部そうだもんね。
矢沢 そうなのよ。
武道館じゃなくて、渋谷公会堂でもいいじゃん?
でも、武道館は日本のロックの殿堂、
みたいなこと言うから、
「じゃあ、武道館まで上がりたい」
って思うわけでさ。
糸井 なるほど。
矢沢 もうひとついえることは、あれなんじゃないかな。
これは糸井が言ったことだけど、
たのしいと思うか、やらされてると思うか
っていうので、全然違ってくるからね。
だって、「仕事がたのしくて」って言うやつ
いっぱいいるわけじゃない?
糸井 ステージの永ちゃんも、
苦しいとか言うけど、
たのしいでしょ、やっぱり。
矢沢 たのしいよ。
糸井だって、イトイ新聞立ち上げて、
どれだけたいへんだったか、わかんないけど、
やりがいがあったから、たのしかったから、
今日まで続いたんじゃないですか。
ぼくだって、ぶーぶー言いながら、
声出ねぇよーって言いながら、
ワンツーワンツーって言いながらさ、
町から町行って、きめたその夜のビールなんかが
絶対うまいからやってるわけでさ。
糸井 やっぱりステージの永ちゃんって、
うれしそうだしね。
矢沢 うん。
だから、歌やステージをつくってる矢沢、
新聞や情報をつくってる糸井、
のみならず、タイムカード押してお勤めして、
企業の中の一つの力としてかんばってる人、
その人なりのスタンスって、
ぼくは、たくさんあると思うよ。
行き着くところ、どんな職種だって、
やらされてる、働かされてると思って
だらだら気分悪くやってるのと、
これ、俺のテリトリーなんだと思って
プライド持ってやるのとでは、全然違うからね。
糸井 永ちゃんって、いまでも拍手うれしいでしょ?
矢沢 そりゃうれしいよ。
糸井 あんだけ、毎日ライブやって、
端から見れば拍手が来るに決まってる思うけど、
それでも、拍手はうれしいんだよね。
矢沢 うれしいねえ。
だって、俺、「今日うけた?」って
かならず訊くじゃない?
糸井 心配そうに訊くね。
矢沢 「うけた?」「のってた?」ってね。
糸井 まだ言うか、と思うよね。
おもしろいね。
矢沢 毎日拍手が来るかわかんなくて、
毎日拍手がうれしいからいいんじゃない?
糸井 やめられないね。
矢沢 やめられないね。やめられないよ。
57歳になって、まだこういうところに立ててる。
最高じゃない。
いいだの、悪いだの、ってまだやってる。
ドキドキしてんだもん。
音楽家として、36年やってこれて、
ほんとに幸せだなと思いますね。
糸井 うん。どうもありがとう。
おもしろかった。
異色の就職論が聞けて、よかった(笑)。
矢沢 ほんと? 大丈夫?
糸井 大丈夫(笑)!

(矢沢さんと糸井の対談は今回で終わりです。
 お読みいただき、どうもありがとうございました)




写真:富永よしえ [Mild inc.]




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2007-06-19-TUE