就職するって、どういうこと?
働くことって、なんなんだろう?
ほぼ日刊イトイ新聞では、あらためて
「就職」について考えてみることにしました。
さまざまな職業・肩書きの人たちが登場してくる、
「ほぼ日」なりの就職特集です。




『ほぼ日の就職論』という特集企画の
「まとめ」を書くことになった。

そういう立場で、
これまでのページを読み返したのだけれど、
ここに「すぐ効く処方箋」があるようには思えない。
もともとが、
職を得るためにうまく立ち回るための方法を、
否定したいと考えて、スタートした企画だ。

ただ、この連載のなかで発言してくれた人たちは、
みんな、自分のことばで、
自分の手でつかみとったことを、
飾らずに語ってくれている。
そういう意味では、どこを取っても役に立つ。
大切な糧になるような言葉が、
あちこちに落ちているとも言える。

事情やら、経緯やらを考えすぎると、
自分の歩いていく道を見失いがちになるものだ。
根拠や理由を説明されなくても、
「だいじょうぶだよ」と言われるだけで、
足取りが確かになることもある。

まっ暗な道を行くときにも、
遙か遠くに村の灯が見えたら、
勇気をもって、一歩一歩を踏みだしていける。
その微かな灯みたいな役割を、
ひょっとしたら、
ぼくらの特集は果たせたかもしれない。

詳しそうだったり、大事そうだったりする地図よりも、
遠くの灯のほうが、
人を力づけられるように、ぼくは思う。
「ここに人がいます」
「ここまでは来られますよ」
「ここは、悪くないよ」
そんな声が、灯の下で聞えてくる。
『ほぼ日の就職論』という特集は、
期せずして、そういうものになったと思う。

考えてみれば、ぼくは
就職することを怖れていた子どもだった。
学校だけでもこんなに怒られるんだから、
給料をもらって仕事をする会社なんかに入ったら、
どれだけ失敗して、どれだけつらい思いをするか‥‥。
真剣にそう思って、
布団のなかで泣いたこともあったくらいだ。
しかし、そんな心配性の小学生も、大きくなって、
すべったり転んだりしながら何十年も、
けっこう楽しく働いてこられた。
あの不安はなんだったんだろう。

大人のする仕事というものに、
大人たちが通っていく会社というものに、
わけのわからない不安を持っていた子どもに、
つまり、昔のぼくにも、
この『ほぼ日の就職論』を読ませてやりたいと思う。

読んでくれた、みんな。
元気で。
ぼくも元気で、あなたも元気で、
どこかで、仕事で会えたらいいね。




エンディング挿入歌:『もうひとりの俺』矢沢永吉
コーディネイト:藤田俊文
タイトルキャラクター:しりあがり寿
若者たちの写真:齋藤裕也 「モラトリアム・レクイエム」より
※齋藤裕也さんのポートレイトシリーズ「モラトリアム・レクイエム」は、
実際に就職活動をしていた一般の学生たちをモデルにした作品です。
「モラトリアム・レクイエム」は現在も継続して製作されており、
モデルを随時募集しているとのこと。詳細は齋藤さんのページでどうぞ。


2007-07-18-WED




















(C) HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN