糸井重里
・「子を持って知る親の恩」とは、
まぁ、ほんとにそうだよなぁと思います。
これは、「生徒を持って知る先生の恩」だとか、
「後輩を持って知る先輩の恩」だとか、
いろんな立場に置き換えても言えることですが、
ぼくなんかも長くいろいろやってきてるものですから、
「とにかくなにかと、すいません。」です。
先に知ったもの、先にわかったものは、
次に来るものたちに教えたり伝えたりする。
そして、後から学ぶほうのものは、
特に感謝もせず当たり前のように教えてもらうものです。
それはもう、本能に近いようなことかもしれません。
サル山のおサルたちでも、犬でも猫でもやってることです。
人間も、わりと自然にそういうことをくりかえしている。
「親の恩」というと、なにか道徳的なことみたいですが、
もうすこしやわらかく「親の気持ち」というのもあります。
どうして親があんなことしてたのか、言ってたのか。
親になると、こういうことがわかるようにもなります。
小学校の夏休みに、校庭でラジオ体操がありました。
いまでもやってるところでは、やってるんでしょうね。
ぼくも「ハンコ押してもらうカード」を首から下げて、
早起きはめんどうだなぁと思いながら通っていました。
近所の子どもたちと、ただなんとなく小学校に行く。
あるとき、いつも二日酔いで朝は苦手な父が、
「ラジオ体操は健康にいいから、オレも行く」と言って、
学校にやってくることになったのです。
ぼくは親と行くのは、なんだか恥ずかしかったのですが、
ほんのすこしだけうれしいような気持ちもあって、
いっしょに桃井小学校までラジオ体操に行きました。
ただそれだけの思い出なのですが、いまだとわかります。
「健康にいいから」というより、おそらくは、
小学生のぼくのラジオ体操につきあいたかったのです。
子どもといられる機会があるなら、いっしょにいたい。
そういう気持ちで、そうしたのだとわかります。
それは、じぶんもそうだから、わかるようになったのです。
今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。
「親の心、子知らず」ということばもあって、これもいいね。
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