YAMADA
おとなの小論文教室。
感じる・考える・伝わる!

Lesson812
    読者の声―想いに忠実な選択



なにが正しい選択か、
まちがっているか、
未来がわからない人間にはわからなくて苦しいけど、

「想いに忠実な選択をしたとき、人は後悔しない。」

自分の想いに気づくと
人は活気をおびる。

「読者は、つぎの1歩をどう出す選択をしたのか?」

きょうは、
ここ数回にいただいた読者のおたよりのうち、
「読者の選択」がかいま見えるものに絞って
紹介しよう。


<想いを言葉にした結果>

私が大学の推薦入試を受けるとき、
面接の練習を、
高校の担任とする度に、

「それは本当にあなたの意見?」

と何十回も聞かれました。

自分を大きく見せたり、最もらしいことを言ったり。
相手によく見られたくて本心を隠す自分を、
自分でも嫌になるほど知りました。
その経験がずっと心にあり、

就活でも自分の素直な気持ちを伝えることを続けました。

そんな態度が原因で
内定をもらえなかった企業もあったと思います。

でも結果、今
私は入りたかった企業の人事部で働いています。

今なら分かります。

自分を隠している人と、
自分の想いを言葉にしている人の違いを。

そして企業はどちらの人に魅力を感じ、選ぶのかを。
(わもん)


<一歩踏み出してわかったこと>

会社員人生も20年を越えようとする現在。

やりたい事が見つかって
やっと自分で活動する勇気がでて、

「会社員と二足のわらじ」

をしております。
想いに忠実な選択に至るまで、
こんなにも長い時間かかるとは思いもしませんでした。

一歩を踏み出す事がこんなにも怖いとは。

「自分を表現して、いろんな人に見てもらいたい」

という反面、

私より何百倍も表現が素晴らしい人と
自分を比べ、卑屈になり、

「もしかしたら諦めてしまうんじゃないか‥‥」
「人に、こんなの可愛くないと言われるんじゃないか‥‥」
「ショックを受けるんじゃないか‥‥」、

怖かったんです。

でも、一歩が踏み出せた途端、
はるか彼方にあったやりたいことが
自分の目の前に来る。

それがわかった時、
自分に感動してしまったんです。

私が表現したモノをみて、
興味ない人もいたけど、

それに対して、

自分の気持ちが意外と落ち込まなかった事も
想像していた事と違っていたんです。

一歩が踏み出せた次の私の課題は、
やりたい事だけで食べていく。

自分が動けばおのずと答えは出てくる。
自分を信じて、自信をもって
このままつき進もうと思います。
(るみお)


<私の言葉で>

私は、今、高校三年生です。
センター試験が終わり、
第一志望の二次試験に向けて準備しているところです。

二次試験には小論文がありますが、
全く手につかない状態だったので、

ズーニーさんの『おとなの小論文教室。』を
借りて読みました。

てっきり、書く上でのテクニックが載っている本と
思っていましたが、全く違くて、
もっと根本的なところに
書けない原因があるということがよくわかりました。
本の中でも、最後の、

「一人称がない」

というのに
去年、部活で
怒られっぱなしの自分がピッタリと当てはまり、
泣きそうになりました。

「どうしたいんだ!」と怒鳴られても答えられない。

何を言ったら先生は喜んでくれるのかばかり
考えてしまいました。

私は一人称を見失ったために、
部活を辞めてしまったのかなとも思いました。

センター試験の結果はよくありませんでした。
第一志望の合格率は20%でした。
気持ちはどん底になりましたが

諦めちゃいけないなと思いました。

「私は入学したいんだ!」

その想いを願書を出すという形で大学に示したい!
そして、小論文には、

“私”がここにいること、
“私”が意見したいことを書きたいと思います。

どんな結果であれ、
その事が大切なんだと思うからです。
(松)


<残り少ない大学生活を>

私は大学4年生、ゼミの先生の元で、
卒業論文を製作しています。

先生は、
頭の回転が速く引き出しも豊富、
論理的で、人一倍努力家、行動力もあります。

けれど口が悪く身勝手でもあり、

大学組織内では非協力だと批判が多い「一匹狼」、
他の先生や学生からは煙たがられることが
圧倒的に多いです。

周りは止めたけれど、
興味のある分野なので、
私は、この先生のゼミに決めました。

先生は、やる気がある学生に、
学びや経験の場を提供してくれる反面、

学生のダメな部分への批判的な発言ばかり。

私は、先生と距離が近くならないよう
気をつけていました。

先生の考えに染まってしまい、
何がよくて何がわるいか、
判断できなくなってしまいそうで怖かったから。

いざ卒論にとりかかると

テーマを何回か発表しても認めてくれず、
そのたび先生に何度も言われた方向で、
テーマを決めました。

文章を提出しても、
批判・ダメ出しをされるのみ。
あとは先生自身の考えを
3時間、6時間と、ひたすら聞くのみです。

ふと周りを見てみると、

私のゼミにいる他の学生たちも、
先生のアイディアでほぼ卒論が構成されています。

先生の権力で、
エライ人に卒論を発表する機会も与えられます。

でもそれは、自分の力ではない。

私は、「私ってすごい!」と勘違いしないよう、
自分でも行動し学ぶよう、
心がけていました。

周りの学生を見ていると、
素直に従っていて‥‥とても異様な光景。怖いです。

「もう従うほうが楽なのか」

先生は先回りした回答をこちらに投げてきます。

私の考えを述べようとすれば遮られ、否定のみ。

否定ばかりだと心が折れます。
もう先生に反論する気力もありません。

いくら内容が良くても、
私はもうこの論文が、
自分のものだと胸を張って言うことができません。

もう全てが嫌になってしまったとき、

このコラムのバックナンバー
「曇りの教室」(2015年5月13日付)を読み、
わんわん泣きました。
考えなければ楽だと思ったけれど、
それ以上に

「考えることを諦めてはダメだ」

と痛感しました。

自分自身がそこで止まっちゃうから。

卒業まであと少し。
いろんな人がいるんだなと
身をもって経験することができて
良かったのかもしれません。
そう前向きに受け止めて、
これからも自分としっかり向き合いたいと思います。
(卒論制作中の大学4年生)


<大切な人には>

最近、謙虚っぽい人や謙遜してるっぽい人に
違和感を感じることが多いです。

テニスで、対戦相手に試合前
「◯◯さんみたいなお強い方と対戦できるだけで光栄です。
1ポイントでも取れるように頑張ります。」
なんて言っておきながら、
実際に試合をすると勝ってしまっている人もいます。

人は人に、

まず「自分レベル保険」をかけてから
対人関係を作ろうとしているのかもしれません。

「ぼくは頑張ってもこんなものです。
だから変に期待しないでください。」

という風に。
でも最近、

その保険は、作らないで生きていけたらいいなあ

と感じています。

他人の世界で生きない。

特に、
伝えたいこと!信頼している人!大切な人!に対しては
自分から余計なことは考えずに接していければいいなあ
とおもいます。
(優 35歳 会社員)


<鍛え続ける選択>

私の高校時代、
国語の先生は、
毎週欠かさずに新聞の切り抜きを貼って、
原稿用紙一枚分の感想文を書かせました。

私は、一度も欠かさなかったということで、
辞書をもらった記憶があります。

「書くことを続ける」ことと、「新聞を読む」、
そして「自分で考える」ということを
身につけさせてくれたなあ、と感謝しています。

面白い記事を見つけては、
「これをどう感想文として書くか」と考える癖もついて
私には楽しかったです。

「自分が思ったことを、人にどう伝えるのか。」

私は海外生活が15年近くになりますが、

日本人同士の「わかるでしょ」的なものがあまりなく、
日常生活の中でも、頻繁に

「あなたはどう思うか?」

ということをカジュアルに聞かれます。

日々、「自分」はどう思うのか、

それを人にどう伝えるのかを考える訓練をしているのと
そうでないのでは、ずいぶん違いが出ると思います。
(hana)


<これからは>

私は、ある日突然、
病気で片耳が難聴になりました。

難聴。

しかも片方は正常。

しかし、人の位置によっては、
話が半分しか理解できず、自分で愕然としました。

どうも聞き取りにくい領域があるようなのです。
また、日によって、体調によって、
聞こえも違うのが厄介です。

外から見えない、ということが
こんなに大変だとはおもいませんでした。

つい自分で「予測変換」して話を合わせてしまうことも。

「人が話しているのはわかるが、内容がわからない」
まさにこれなのです。

一生懸命聞こうとするためか、
大人数の会食、会議がとても疲れます。
そのため、ついつい断れる会合は
断ってしまうことも増えました。

仕事ができなくなるかもしれない。
まったく聞こえなくなるかもしれない。
正常の耳も、聞こえなくなったらどうしよう。
…この不安からなかなか抜け出せないでいます。

このコラムの「お母さんの耳」の回に寄せられた
いろいろな方のメール
をみて(2016年12月21日付)

ちょっとうちにこもってしまっていたかなあ、

これ以上悪くなっても良くなることはないから
この状態とずっと付き合っていかなくてはならない。

「予測変換」じゃなくて、
もうちょっと勇気出して聞き返してみようかな、
と思います。
「聞こえてない」私をわかってもらおうと思います。
(リラ)



自分を見失いそうなとき、

具体的に何がどうなるわけでもなく、
誰かが救ってくれるわけでもなく、
いっこうに問題は解決されないまま、

という状態でも、

「自分の想いのありか」

に気づくと、
人はほんとに生き生きしてくるのだなあ!
と、読者のおたよりを見て、
あらためて勇気づけられる。

想いに忠実な選択は、

たいへんだと思われがちだけど、
次のような身近な小さな小さなことから、
「言葉」で、いますぐ、
はじめられる。

このおたよりを紹介して
きょうは終わろう。


<ちいさな選択>

小さな機会が来たとき、

小さく逃げず、小さくごまかさず、

小さい勇気を出して‥‥。

仕事でわからないとき、
「なぜわからないか」伝えるようにしました。

会議で結局どうなるんだ?とわからないことも、
誰もきかないけど、
「わかってないのは私だけなのですが、」
と聞き直しました。

いつもは小さな子供がいるから、
という理由で断っていた会社の忘年会に、
家族に「行きたい」、と言って出席しました。

ずっと○○さん、と呼んでいたママ友に、
「名前で呼ぶね」、と伝えました。
(くにこんにゃく)


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2017-01-25-WED

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