HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN https://www.1101.com/home.html   「大坊珈琲店」 大坊勝次さんの38年            書籍『大坊珈琲店』刊行記念対談

第6回 ダイボーズ VS スピリッツ・オブ・ブルーマウンテン
山下 糸井さん、
お店の最初のころから通ってたのに、
大坊さんとはずっと会話がなかったんですか。
糸井 うん。
「あ、どうも」
「こんにちは」とか。
そんなもんですよね?
大坊 (笑)
糸井 こんなに大坊さんとお話するのは、
はじめてです。
山下 38年間、
「あ、どうも」
「こんにちは」
だけだったんですか?
糸井 そうですよ。
福田 草野球をいっしょにやるときもですか?
山下 あ、そうそう! そのお話。
大坊さん、
野球をいっしょにしてたそうで、20代のころ。
大坊 はい、していました。
福田 野球場でお話はしないんですか。
糸井 やることは野球ですからねぇ‥‥。

大坊さんのチーム、上手なのよ。
もちろん大坊さんも上手。
大坊 いや、そんなに上手では‥‥。
糸井 セカンドですよね。
大坊 セカンドです。
糸井 小柄な人はセカンドなの。
山下 へぇーー。
糸井 ぼくはぜんぜんだめ。
すーぐ、突き指するし。
あと、日射病で気持ち悪くなった(笑)。
一同 (笑)
糸井 でも、ホームラン打ったんですよ、多摩川で。
大坊 多摩川で。
サングラスをしていましたよね?
糸井 はい、サングラスしてました。
福田 サングラスしてホームラン!
かっこいいですね。
糸井 そこだけを聞くとね(笑)。
山下 糸井さんのチームは
どういう人たちのチームだったんですか?
糸井 江島任さんのデザイン事務所の人たちと。

(※江島任さん/雑誌『装苑』や『ミセス』の
 エディトリアルデザインを経て、
 『月刊プレイボーイ』や『四季食彩』の
 アートディレクションをされた方です)

山下 デザイナーさんたちのチーム。
糸井 あるとき江島さんのところに行ったら、
「お前のユニフォームも作っておいたから」
って言われて(笑)。
大坊 糸井さんのほうのチームは、
「スピリッツ・オブ・ブルーマウンテン」
っていう名前でした。
糸井 そうです、そうです。
福田 ブルーマウンテン?
山下 コーヒー豆の銘柄ですね。
喫茶店のチームと対戦するから、
そういう名前にしたとか?
糸井 青山のチームだからです。
山下 え‥‥?
‥‥‥‥あ、ああー! そうかぁ。
福田 青山、青い山、ブルーマウンテン!
糸井 山なんです、青山は。
海抜が高いんです。
大坊 みんな、「スピリッツ」と呼んでいました。
糸井 大坊さんのチームは「ダイボーズ」ですね。
大坊 「ダイボーズ」です。
糸井 よく対戦をしましたよね。
そのころはお互い、
ほかに対戦するチームがないから(笑)。
山下 「ダイボーズ」のメンバーは、
どんな方々なんですか?
大坊 当時はお客さんが中心でした。
福田 腕に覚えのあるお客様が。
糸井 「ダイボーズ」はちゃんとしてるんだよ。
スピリッツはちゃんとしてない。
みんな、二日酔いとかでくるから。
それで、「盗塁禁止にしない?」とか言ってるの。
一同 (笑)
糸井 ひどいんだよ。
大坊 「ダイボーズ」、
いまでも野球チームがありますよ。
糸井 ダイボーズ? あるんですか。
大坊 あります。
いまはお店のお客さん中心ではないですが。
糸井 へぇーー、そうですかぁ、すごいなぁ。
大坊 その野球チームをつくったころに、
野球部の連中がお店のカウンターにこう、
何人か集まって
コーヒーを飲んだり
ビールを飲んだりしているんです。
それで、私にこんなことを言うんですよ。
「大坊、お前は常連を大事にしない」って。
糸井 おおー(笑)。
大坊 「我々がこうやっていつも来てやってるのに、
 お前は俺たちに冷たい」って。
糸井 いいですねぇ(笑)。
大坊 「冷たい」と言われましても‥‥。
私とすれば、なるべくその連中を
相手にしないようにしていました。

私は‥‥‥‥静かにしていたいんです。
一同 (笑)
大坊 口では言いませんでしたけども。
山下 一貫してますねぇ‥‥
やっぱり、すばらしくみずくさい(笑)。
一同 (笑)
糸井 それは大坊さん、おみごとです(笑)。
そこですごく仲良くなりすぎちゃって、
だめになっちゃうお店は山ほどありますから。
山下 いわゆる常連さんのお店。
糸井 うん。
それはそれで良さはあるんだけどね。
やっぱり、入りづらくなりますから。
だから‥‥ああ!
そうですよ、その判断。
大坊さんは経営者なんですよ(笑)。
大坊 ‥‥そんなことを言われたのは初めてです(笑)。
糸井 ぼくはいま、
複数の人と仕事をやってますけど、
もともとはひとりですから
経営者じゃなかったんです。
で、ちょっと勉強をするようになって、
「あ、そうか」って気づいたのは、
「市場って何?」ということ。
すごく大事なのはそれだけなんですね。

常連さんが市場のすべてだったなら、
常連さんを大事にするべきです。
でも、大坊さんはそうじゃない。
「大坊珈琲店」の市場はきっと、
コーヒーを飲んでホッとしたい人、ぜんぶです。
だったら、常連さんを大事にしすぎていたら、
それは経営者ではないですよね。
‥‥というふうに考えれば、
大坊さんの冷たさは、
ものすごく正しい経営方針です。
大坊 ‥‥経営者ですか。
糸井 経営者です。
大坊 そうですか。
糸井 まちがいないと思います。
(近くにいらっしゃる奥様に)
奥さん、ご主人はちゃんと経営者ですよ。
奥様 ぜんぜん気づきませんでした(笑)。
‥‥(大坊さんに)よかったね。
一同 (笑)

(最終回につづきます)
2014-07-24-THU

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