- 糸井
- 学校なんかでも
できるだけ無菌状態にして、
知識をたくさん持ってる人を
たくさん育てることが、良しとされてきましたけど、
そのとき、「詰め込み教育」が、
いちばんいい方法だと思われていた。
で、そんな人たちが
社会を引っぱっていくんだ、って
「詰め込んでない人たち」も思っていた。 - 養老
- ええ。
- 糸井
- 僕は、詰め込んでなかったほうの人だから、
ずっと、詰め込んだ人のことをね、
なるべく尊敬しようと思ってたんですよ。
でも、そういう人たちのおかげで
迷惑することが多いなぁってことに、
最近こう、気づいたわけです(笑)。
だから、そういった意味でも
「詰め込み」ってダメだったんじゃないか、
って思わざるを得なくなったんですよね。 - 養老
- そうですね。
- 糸井
- 芸術人類学の中沢新一さんが
大学院生のときにチベットへ行って、
「すごい人たち」に会った、と。
で、その「すごい人たち」は、
世界の国際情勢も知らなければ、
ストックオプションも知らないのに、
中沢さんに「すごい!」と言わせたわけですよ。 - 養老
- うん。
- 糸井
- だから、きっと僕も
「すごい!」って感じると思うんですよ、
その人たちに会ったら。
だとしたら、
そういう「すごい!」の基準も
あるじゃないか、と。 - 養老
- 偏差値やテストの点数とか
いわゆる「競争」の結果ではなくて、
さっきの話でいえば
郵便ポストを作った大工さんのすごさ、
ってことですよね。 - 糸井
- そうそう。
でも、いまは「成果主義」とかいって
おなじ会社の中でも
敵同士だったりするわけでしょう? - 養老
- そんな競争、競争っていうなら
いっそ別会社にしてしまえば
いいじゃないか、と思うけど(笑)。 - 糸井
- 競争でしか
うまく進まないっていうように
いつから思い始めちゃったんだろうね。 - 養老
- 確かにね。
だから、頭の良し悪しが
生まれつき決まってるとしたら、
全員がつらい思いをして勉強することなんかない。
何にもしなくたって、結果は同じなんだからって
僕は以前から言ってるんですけど(笑)。
それを、必死に勉強して
少しでも自分の方が上へ行こうと思うから、
みーんなが、つらくなっちゃうんですよ。 - 糸井
- そうですね。
- 養老
- いちにのさん! で全員がやめたらね、
受験の弊害だとか、
そんなこと言われなくなるよ。 - 糸井
- 今日の朝、
最高にいいアイデアを思いついたんです。
受験の「団体戦」。 - 養老
- ははは!
- 糸井
- 大学を受験するときに、
「あのさ、
俺とチーム組まない?」って。 - 養老
- あはははは!
おもしろいね! - 糸井
- 例えば、
5人くらいでチームを組んで申し込む。
そうすれば、
「チームに呼ばれる」能力さえあれば、
勉強が全然できない人でも、受かる。
個人では落ちたけど、
団体では受かった、とかね(笑)。 - 養老
- わっはっはっは!
‥‥でもそれは、逆に言うと、
人とコミュニケーションをとる能力がないと、
どんなに勉強ができても、合格できないってこと。 - 糸井
- または、
勉強の全然できないひとでも
人を集めるちからがあれば、
合格できるチームをつくれるんですよ。 - 養老
- うん、うん。
- 糸井
- ようするに、
暗記や計算が苦手でも、
「人に聞くちから」とか「呼ばれる才能」、
「集める能力」とか‥‥。
つまり、コミュニケーション能力の高い人は優れてる、
っていう基準ですよね。