『MOTHER』の音楽は鬼だった。
鈴木慶一×田中宏和×糸井重里、いまさら語る。
いまなお、多くの人の心をとらえて離さない
『MOTHER』シリーズの音楽。
その音を紡いだのが鈴木慶一さんと田中宏和さん。
開発者の糸井重里を交えて
たっぷりとひもといてもらいましょう。
その経緯を。とっておきの秘密を。込めた情熱を。
一見のほほんとした「おじさん」たちは、あのとき、
あきらかにムキになって戦っていた!鬼だった!
なお、ときたま登場する「ムケてない」ということばは
「大人になりきれていない」という意味で使います。
あまり余計なことなど想像せぬように。



糸井重里
(いとい・しげさと)
『MOTHER』、
『MOTHER2』を
つくった人。あと、
ほぼ日刊イトイ新聞
というものも
つくっているらしい。
世界でただひとりの
「どせいさん語」
翻訳家でもある。
田中宏和
(たなか・ひろかず)
『MOTHER』、
『MOTHER2』の
音楽を担当。
任天堂を経て、
現在は株式会社
クリーチャーズ
代表取締役社長。
ちなみに、
『感心力が
 ビジネスを〜』
の田中宏和さんとは
別人です。
鈴木慶一
(すずき・けいいち)
『MOTHER』、
『MOTHER2』の
音楽を担当。
ミュージシャン。
音楽職人軍団
ムーンライダーズを
率いる。
近年は舞台や映画の
音楽なども手がける。

番外編
『MOTHER』音楽チームからみなさまへ


全12回にわたってお届けしてきた
「『MOTHER』の音楽は鬼だった。」、
いかがでしたでしょうか。

当時「子どものもの」としか認識されてなかったゲームに
3人の「おとなたち」がいかに本気で取り組んでいたか、
少しでも伝わったならうれしく思います。

さて、充実した連載のおしまいに、
3人の「おとなたち」からみなさまに
ちょっとしたおくりものを。

直接『MOTHER』の音楽を手がけた
鈴木慶一さんと田中宏和さんからは
「『MOTHER』ファンにささげる5枚」
と題して、おすすめのCDを挙げてもらいました。
もしも『MOTHER』の音楽が大好きな人なら、
これらの音楽のうちの何かが
胸に響くのではないでしょうか。
おふたりが寄せたコメントも必見です。

音楽に限らず
『MOTHER』のすべてに関わった糸井重里さんからは、
ユーザーに対してのメッセージをいただきました。
それは、あるメールに対する返事という形をとっています。
けれど、大きなものを含むメッセージですので
ぜひみなさんに読んでほしいと思います。

『MOTHER1+2』の発売まであと数日となりました。
わくわくしているみなさんに、
『MOTHER』の音楽チームから
連載のおしまいに素敵なデザートを贈ります。



鈴木慶一から
『MOTHER』
ファンのみなさまへ」


“これ聞いとくと、『MOTHER』が
 面白くなるかもよ?”アルバム5選(+α)。

(現在入手できるものはジャケット画像から
 販売ページにリンクしました。
 クリックしてみてくださいね)

■ジョン・レノン 
■『ジョンの魂』
John Lennon
" Plastic Ono Band"

糸井さんが『MOTHER』というゲームを
作ると聞いた時に、実に短絡的に、
このアルバムの事を思った。
このアルバムの、そぎ落とした無駄のないサウンドは、
ゲーム音楽を作る上で、
そう、音数を少なくしなければならないという状況で、
励みになった。

■ビーチ・ボーイズ
■『スマイリー・スマイル』
The Beach Boys
"Smily Smile"

本来は完成されなかったアルバム
『スマイル』をあげようと思ったが、
伝説のアルバムより、一応は正式に発売された、
このアルバムの持っている、
断片を強引に作品化したところを買おう。
で、アメリカの明るさと暗さが詰め込まれている、
ほとんどドラムレスの不思議なアルバムです。
パーカッションの使い方が、ゲームに影響大。

■ヴァン・ダイク・パークス
■『ソング・サイクル』
Van Dyke Parks
"Song Cycle"

『スマイル』をブライアンと共同で作ろうとし、
失敗に終わった、ヴァン・ダイク・パークスの
ファーストアルバム。
またしても大失敗作と言われる。
アメリカのユーモアと、霧の中のようなサウンド、
レイ・ブラッドベリ的とでもいうかな、
そんな音が『MOTHER』の音楽を作る時に重要だった。
当時60年代末の西海岸、
ワーナー、バーバンク系サウンドは、
アメリカを代表する音楽を作っていたと思うが。
ランディ・ニューマンも含めて。

■アンディ・パートリッジ 
■『ミスター・パートリッジ:
  テイク・アウェイ』
Andy Partridge
" Mr. Partridge: Take Away
/ The Lure of Salvage"

XTCのアンディ・パートリッジ、
1980年の初ソロ・アルバム。
その後22年もソロは、なしだからなあ。
このアルバムのダブ的音の処理や、実験性は、
ひろかっちゃんのダブ趣味と、からんで、
かなり意識した。

■ゴドレイ&クレーム
■『ギズモ・ファンタジア』
Godley & Creme
" Consequences"

10CCを抜けた半分、実験工房派の
ロル・クレームとケビン・ゴドレイのファーストアルバム。
アナログで3枚組(CDは2枚組)。ギズモという、
ギターの弦をこすって持続音を出すエフェクターを使って
作られたという、大作。
『ロスト・ウィークエンド』と言う曲では、
サラ・ヴォーンがジャージーに歌ってる。
この感じ出したかったんです、ゲームで。
エレキ・ギターの弦をこする音で、
ストリングスの音を出すって発想がすごいけど、
当時のゲーム内音源に実は近い音だったりして。
ロスト・ウィークエンドと言えば、
ジョン・レノンが、ヨーコと一時別れていた時を、
そう呼ぶんだな。
ロスト・ウィークエンド時代。
西海岸でハリー・ニルソンと酒ばっか飲んでた。
ニルソンといえば、
『ニルソン・シングス・ニューマン』。


ランディ・ニューマンの曲だけを
ニルソンが歌ったアルバム。これもいい。


映画『失われた週末』のレイ・ミランドの
アルコール中毒の演技もいいし、
ミクロス・ローザの音楽も怖い。
と、どんどん話は脱線していくので、
このへんで、チャオ。

鈴木慶一


田中宏和から
『MOTHER』
ファンのみなさまへ

“大きな意味でマザーの音楽に通じる
 アーティスト&バンド。
 5枚に絞りきれずにスミマセン!”


当然『MOTHER2』(94年)以前に
録音されたものをあげました。
外資系のCDショップの店頭においてある
試聴機の「推薦版」のような意味あいは、
ぜんぜんないです。
あと、読者として、こういう人達に向かって書いてる‥‥
みたいな事も、ぜんぜんなく書いています。
(そのわりにはこっちの方が聞きやすいか‥‥
 とか考えたり、たまに、してます(笑))
ほんとーに「独り言」に近い
個人的な見解だと考えてください。

音楽を作る、ゲームを演出する側からは、
「プロです」(?)と言えるかもしれませんが‥‥
いざ作られた物を語る側に立つと僕は
「ど・し・ろ・う・と」です。痛感しました。

(現在入手できるものはジャケット画像から
 販売ページにリンクしました。
 クリックしてみてくださいね)



【MOTHER以前】

■ランディ・ニューマン
■『リトル・クリミナルズ』
Randy Newman
"Little Criminals"
■ランディ・ニューマン
■『ランド・オブ・ドリームス』
Randy Newman
"Land of Dreams"

開発スタート当時、糸井さんとの『MOTHER』の
打ち合わせの後。アメリカ、ETの街並‥‥などなど
いろんなキーワードから思い浮かんだのが、まず
「ランデイ・ニューマン」。
アメリカのシンガーソングライターです。
最近では映画「トイ・ストーリー」
「モンスターズ・インク」の音楽やってましたね。

『リトル・クリミナルズ』の『short peaple』、
『ランド・オブ・ドリームス』の
『I want you to hurt like I do』といい
(英語、あまりできないのですが‥‥笑)
んー、外人になって聞くとどんな印象なのだろう。
とにかく歌詞がユニーク。
コード進行、アレンジが特に好き。
んー深いです。大きいなあ。あこがれです。
当初『MOTHER』の中心には
こんな音世界を置きたい‥‥という気持ちが
強くありました。

■ブライアン・ウイルソン
■『ブライアン・ウイルソン』
Brian Wilson
"Brian Wilson"

ビーチボーイズは、
いままでの対談で何度もでてきてますが
ブライアン・ウィルソンのソロアルバムです。
このCD、『MOTHER』の開発で
世田谷の慶一さんのお宅におじゃまする道中
いつも聞いてました。
ちょっと早く着きすぎた時は
これ聞きながら近所をブラブラと‥‥。
田中、個人的には、これを聞くと
『MOTHER』を思い出します。
特に
1)love and mercy
3)melt away
4)baby let your hair grow long
7)there's so many
彼のソングライティングは、一見、
普通に見えるんだけどね、
なんでしょうね‥‥言葉にならないですね‥‥。
詩もわかると、もっとキ!ます。
んーー客観的に書けないや‥‥‥‥。

(新しくDelux Edition がでてて、
 デモが入ってて、それがまたねぇ、
 ‥‥くぅーー‥‥)

■スタックリッジ
■『ミスター・ミック』
Stackridge
"Mr.Mick"

ビートルズの匂いをただよわすバンドは多いですが
彼らもその一つです。イギリスのバンドです。
知名度は低いかもしれません。
たまたまラストアルバムあげましたけども
1、2、3枚目と、どれも好き。
3枚目が代表作にあげられる事が多く
あのジョージ・マーティンがプロデュースしてます。
(ジョージ・マーティンは
 ビートルズのプロデューサーやってた人。)
表にはでてないかもしれませんが
このバンドの持ってたセンスは
『MOTHER』の音楽に通じる部分、
多いのではないでしょうか。
彼らの初期の頃は、イギリスのトラッド色でてます。

イギリスのフォークソング、アイルランドのケルト音楽は
自分の中で特別な位置にあります。
そういう音楽のちょっともの悲しく、
切ない匂いは『MOTHER』的。
ブリテッシュトラッド、ケルト音楽を知りたい場合は
入門に「チーフタンズ」がいいかも。

■ウエザー・リポート
■『8:30』
Wether Report
"8:30"
■リターン・トゥ・フォーエバー
■『ノー・ミステリー』
Return to Forever
featuring Chick Corea
"No Mystery"

いきなり音楽のジャンルが変わります。
ゲーム中の歌メロじゃない部分に影響大。
共にCD屋だとジャズのコーナーにあります
でも4ビートのジャスではありません。
で、演奏のみ。

『8:30』は
「えっ? どこが『MOTHER』と?」
と言われそうな内容ですが。
メンバーの即興演奏以外の部分を感じてもらえると。
不協和音、ノイズ(打楽器)
リズムの上の空間の埋め方‥‥そういう部分で。
『a remark you made』はほんと美しい!
特に注目してほしいのは、
ジョー・ザビヌルのキーボードの使い方、音色。
とても『MOTHER』的。
個人的に私はここから、ラテン音楽、アフリカ音楽、
ブラジル音楽、フリージャズを聞く切っ掛けになりました。
ほんとはファーストをあげるつもりでしたが、
ベスト版的意味合いもあり、こっちに。

リターン・トゥ・フォーエバーは
ジャズピアニスト、チック・コリアのバンドです。
(当時 私は高校生)
ロック色濃いです。
コード進行、コードのボイシングに
すごく影響うけてます。
あとドラムとベースとのコンビネーションも。
音と音との絡み具合、という事です。
日本ではこういう音楽をテクニックに走りすぎとか
ハートがないよとかよく言われてました。
えっ、こんなに生き生き!楽しそうなのに‥‥と、
いつもそういう日本の音楽メディアの論調に不満でした。

注)コードのボイシング
  音の重ね方のこと、たとえば
  コードCは基本はド・ミ・ソですが
  それを ミ・ド・ソにしてもいいわけ。

■ヤビー・ユー 
■『キング・タビーズ
  ・プロフェシー・オブ・ダブ』
Yabby U
"King Tubby's Prophesy of Dub"
■フライング・リザーズ
■『ザ・シークレット・ダブ・ライフ
  ・オブ・ザ・フライング・リザーズ』
The Flying Lizards
"The Secret Dub Life
of The Flying Lizards"

でましたレゲエ男!
最初レゲエのどこを好きになったか?というと
同じ曲なのに歌詞違いがたくさんあったり
ある曲が流行るとその曲の替え歌が3日後に売り出される!
「ああずるい、それ俺の曲!」とかない。
演奏が一緒でメロが一緒でも
キミが歌えばキミ!オマエが歌えばオマエ!
というようなタフさ!ラフさ!を感じたから。
レコードの真ん中の穴はずれてるし、
レコード版の溝にはゴミが埋まってるとか。
それをいいかげんじゃなく
それを許容する側もふくめ
そういう状況から生まれた音楽が好きだった。
ポジティブ!に感じた。力強い。
そんな中からダブと呼ばれるミックスの手法も生まれた。

DUBとは簡単に言うと歌入りのレゲエの曲から歌を抜き
(これはカラオケね、その事をVersionっていってます)
各楽器パートを入れたり出したり、
またエコー、リバーブの音響処理してます。
『キング・タビーズ・プロフェシー・オブ・ダブ』は
正調ジャマイカのダブ。ミックスはキング・タビー。
音楽のミックスにルールなどない。
ちゃんと人間が機械を支配し、
人の感情、感覚をダイレクトに反映させた音は
原曲を超えて!聴く人を激しく揺さぶります。
プリミティブ!
ベース好き、低音好きはこのレゲエから。

『The Secret Dub Life of The Flying Lizards』は
デビッド・カンニンガムのダブ。
彼はアイルランド生まれ。79につくった
フライングリザーズは既成の音楽にとわられない
自由な発想の音楽で非常に好きでした。
またCD『MOTHER』のエイトメロディーズの
編曲者でもあるマイケル・ナイマンの
プロデューサーもやってます。
彼の参加したアルバムはいつも買ってます。
そうとう影響受けてます。
『MOTHER2』の中ではいろんな場所で。

【『MOTHER2』直前】

■プリンス&レヴォリューション
■『アラウンド・ザ・ワールド
  ・イン・ア・デイ』
Prince &The Revolution
"Around the World in a day"
■プリンス
■『サイン・オブ・ザ・タイムズ』
Prince
"Sign o' the Times"

んー、今でこそ陰薄くなってしまいましたが、
いろんなジャンルの音楽がまざり
まさにプリンス!になってます。
そういう意味では『MOTHER』もそう。
彼の動く姿が好きで
VIDEO映像を猿のようにみてました。
音を作り込んでいくうえでの集中力、瞬発力はものすごい。
ゲーム中ファンク色は表面的には感じませんが
ベースのフレーズ、リズムとかたまに顔を出します。
マザーの中で小ファンクなノリ!を感じたらこの系統。

プリンスが影響を受けた
ジェームス・ブラウン、ラーリー・グラハム、
スライ・ストーンなど、
特ににこういうブラックアメリカンな人達の音楽は
CDからだけだと本当の音楽の50〜60%しか
伝わらない‥‥と痛感します。
(というか他の音楽もいえてますけど)
こういうポリリズムの「うねり」って
その一つ一つは割とシンプル。
たからその音を出してる人のノリ!
動き(からだ)のひとつひとつに意味がある。
‥‥というか注目したい。
「耳」だけをたよりにしてちゃあほんと駄目。

■ラロ・ロドリゲス
■『ウン・ヌエボ・デスペルタール』
Lalo Rodriguez
"Un Nvevo Despertar"
■ラロ・ロドリゲス・コン・
 マキート・イ・ス・オルケスタ
■『ファイヤーワークス』
Lalo con Machito y Su Orquesta
"Fireworks"

サルサのCDもたくさんありますが、
あえてプエルト・リコ出身のラロ・ロドリゲス!!
標準的な選択ではないかも(笑)。
とにかく歌がいい、いい、いい!ほれぼれします。
演奏もすばらしい。
サルサはキューバの音楽が元になり
ニューヨークで生まれました。
ミニマルでエレクトロニックな音楽が好きな反面
こういう人の汗、生活を感じる大衆的な音楽も
非常に好きです。
(この2つのジャンル、一般的には距離があるように
 おもわれるでしょうけども)
とにかくダイナミックです。生で見ると腰砕けます。
リズムがうねり、このまま永遠につづいてほしい、
と感じます。
サルサはエンターテイメント!
バンドマスターがその場(時間)を仕切ってる。
で、いつもバンマスはお客さんを見てる。
見てる‥‥といっても目じゃなく、体で。
お客さんが反応しだすとうれしそう。
「じゃあ、つぎはギアートップにいれますよ」
「ついてこれますか?」とか
「その調子 その調子!」
「この辺でちょっとクールダウンね‥‥」とか。
何も言わずやってくれる。
で絶対ロックのような自虐的な破綻はない。
破綻しそうに見せかけて、すぐ戻ってきてくれる。
ほんと楽しい時間をつくってくれる。
独りよがりは存在しない。

しかしそういう音楽が生み出された原因は
レゲエの場合もそうだけども
やっぱその音楽が生みだされた当時の社会環境、
歴史的な背景が大きく影響してる。
貧困、差別。だからこそエネルギーに満ちあふれてる。
今はカルチャーセンターの
ダンススクールのような所でしか耳にしない。
(いやサルサファンがたくさんいるの知ってますけど)
自分はいいタイミングで出会ったなと痛感。
音楽も出会いはタイミング。音楽も生き物!

『MOTHER2』の中でもフォーサイド、
写真屋さんなど、小サルサな感じ。


■ア・トライブ・コールド・クエスト
■『ピープルズ・インスティンクティヴ
  ・トラヴェルズ・アンド・ザ・
   パシズ・オブ・リズム』
A Tribe Called Quest
"Peaple's Instinctive Travels
and the Paths of Rhythm"

ヒップホップです。探求という名の部族!?です(笑)
とにかく かっこいいです。
ブレイクビーツのループの選び方、音使い、ラップ、
どれをとってもかっこいい!
他のヒップホップの人達とはひと味違いました。
実はこのCD中の曲と『MOTHER2』の中の曲に
ちっちゃぁーい秘密があります。でも内緒です。
わかります??
はずかしながら私も当時は
クラブへ夜な夜な出かけてました。
ああいう場所で鳴ってた音楽、
主に音の質感は、戦闘、ダンジョン系に影響与えてます。

あと当時だとJungle Brothers! De La Soul

■マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン
■『ラヴレス』
My Bloody Valentine
" Loveless"

通称「マイブラ」!ノイズ混じりの不安定に鳴り続ける
騒音のようなギター、消えそうな歌、打ち込みのリズム。
もう好き好き好き。未だにこのフォロアー的音を出す
バンドを探し聞き続けてます。
『MOTHER2』の音楽の持ってる「揺れ」は
このバンドからの影響大。
あと「糸井さんの深夜のキーボード」。
ギーグにも。

このマイブラとあとニルヴァーナの出会いは
その後に大きく影響しました。
別に歪んだラウドなロックを聴く切っ掛けになったとか
そんなんじゃぜんぜんなく。
自分に音楽史があるとすると
ニルヴァーナ以前・以降がある、と言っていいくらい。
それぐらいカートコバーンは象徴的。
「よーぉーいーー、ドン!」の自分にとって
「ドン!」でした。

ポーキーとの戦闘で、
8小節、小ニルバーナ炸裂!!

■フランク・ザッパ
■『メイク・ア・ジャズ・ノイズ・ヒア』
Frank Zappa
"Make a jazz noise here"

うーん、フランク・ザッパ。
うかつに語れない‥‥です、なので、最後まで
名前出そうかどうか迷ってました。
これはライブの演奏だけを集めた2枚組。超強烈。
タイトルにあるようにジャズぽいアレンジのものが多い。
『MOTHER2』のどこに‥‥と言われると困る。
イタメシ好きな寿司屋の職人が中華料理を食べながら
アラスカのエスキモーの家族の前で
インド料理について語っている‥‥と思ってもらえると。

音楽のジャンルの壁などどこにもなく
予定調和もなく‥‥まるで打ち上げ花火のよう。
どんどんわき出て流れてゆく音の洪水!!

タイトルデモとか
エンディングのキャストロールのような
原曲のメロがありそれをモチーフにどんどん曲調が変化し
いろんな曲がつながって行くというような曲を
もしライブで演奏してもらうなら
もしザッパが生きていたなら
この2曲はぜったい彼のバンドにアレンジと演奏を
お願いしたい。
当然、私、リハーサルは舞台そでにて見学、
本番はもちろん真ん中の2、3列目で
しっかり楽しみたい‥‥。

■オムニバス
■『ワイアード・マガジン・プレゼンツ
 :ミュージック・フューチャリスツ』
Various Artists
"Wired Magazine Presents:
Music Futurists"

これはDJ的な視点で
(といっても踊るというイメージでなく)
集められたオムニバスです。
一曲一曲が、という事でなく
一見バラバラに見える人選ですが、つながってる。
で、『MOTHER』『MOTHER2』で
さまざまな素材、音楽を束ねて行った時のセンスの視点と
このアルバムの曲といい人選といい
相当近いものを感じました。
まさに『MOTHER』的!こんなメンバー!!
Esquivel/Sun Ra/Steve Reich/ Can/Todd Rundgren/
Braian Eno/Devo / Tangerine Dream/Laurie Anderson/
Thomas Dolby/Godley & Creme / Sonic Youth/Beck/
DJ Spooky/Ben Neill
(慶一さんも多分納得してくれるはず‥‥)

最後の曲はBen Neill、ニール・ヤングのカバーで
『After The Gold Rush』!!
しかもアンビエント!!

あとハル・ウィルナーのお仕事。

■ハル・ウィルナー
■『ロスト・イン・ザ・スターズ
  ──クルト・ワイルの世界』
Hal Willner
"Lost in the Stars
--The Music of Kurt Wei"
■ハル・ウィルナー
■『ステイ・アウェイク』
Hal Willner
"STAY AWAKE:
Various Interpretations of Music
from Vintage Disney Film"

彼はミュージシャンじゃなくプロデューサー。
ここにあげたものはそれぞれ「クルト・ワイル」
「ウォルト・ディズニー」のトリビュート版。
他にもいろいろコンピュレーションアルバム作ってます。
とにかく人選がいい。とびきりです。
これも「MOTHER的」と呼びたい。
いや‥‥呼ばしていただきたい。
いや‥‥そう呼ぶことを
一度だけでもいいから許してほしい。

で、主な人を掲げると、
『ロスト・イン・ザ・スターズ
 ──クルト・ワイルの世界』は
スティング&ドミニク・マルドウニー、
ザ・フォウラー・ブラザース、
マリアンヌ・フェイスフル&クリス・スペディング、
ヴァン・ダイク・パークス、ジョン・ゾーン、
ルー・リード、カーラ・ブレイ&フィル・ウッズ、
トム・ウェイツ、エリオット・シャープ、
ダグマー・クラウゼ、
トッド・ラングレン&ゲイリー・ウインド、
チャーリー・ヘイデン&シャロン・フリーマン等。
『ステイ・アウェイク』は
ビル・フリゼール&ウェイン・ホロヴィッツ、
マイケル・スタンプ、ロス・ロボス、ボニー・レイット、
トム・ウェイツ、スザンヌ・ヴェガ、シド・ストロウ、
アーロン・ネヴィル、ベティ・カーター、
シンニード・オコーナー、サン・ラ、
ハリー・ニルソン、ジェームス・テイラー、
リンゴ・スター等。

くぅーーー、これには参りました。
他にもありますがこの2枚が楽しい。

『ステイ・アウェイク』は『MOTHER2』の開発時
こんな風に‥‥という憧れがありました。

最後の最後に これは はずせません。

■はちみつぱい
■『センチメンタル通り』

僕がはじめて鈴木慶一さんと出会った作品です。
中学3年生でした。
いつも夜更かししながら明け方になると
いつもこれ聞いてました。
とにかくいい曲ばかり!
歌詞がサウンドとともに体に染み込んで行きます。
トータルに流れできくとなおいい!
聞き終わったあとも何故か後ろ髪をひかれるような
魅力あるメロディー。
そんなメロディーは『MOTHER』
『MOTHER2』にも受け継がれています。

あと『MOTHER』のサルダンジョンとか
『MOTHER2』のどせいさんの曲とかの
メロデイーのなんとも言えない妙な奇天烈さも
慶一さんならでは(笑)。
あと『MOTHER』のサウンドトラックも凄い。
私はルイ・フィリップと歌ってる
フライングマンの曲の軽やかさが好き。



いやーやれやれ‥‥ふー。

田中宏和


☆田中さんのリストを見た
 慶一さんからのメール


Subject: やられたー
Date: Mon, 16 Jun 2003 12:37:11 +0900
From: スズキケイイチ


わーすげーひろかっちゃん。
でも、ランディ・ニューマンの
「I want you to hurt like I do」が
あがってるのを見ただけで、
ひろかっちゃんと一緒に、
いい音楽が作れた理由がわかったよ。
スタックリッジもね。
一緒にロンドンレコーディング
行けてたらよかったなあ。

=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=
K E I I C H I  S U Z U K I




糸井重里から
『MOTHER』
ファンのみなさまへ」


こんにちは、初めてメールします。
このサイトで「MOTHER1+2」が発売される事を聞いて、
今から6月が待ち遠しい奴です。
どせいさん好きなので(笑)、
彼らに再び会えるのが嬉しいです。
私がMOTHERとMOTHER2をした時から、
ずっとずっと引っかかっていた事を、
ここでこっそりと吐き出す事をお許し下さい。
「あなたのMOTHERの気持ち。」を読んで、
ああやっぱり、音も物語に深く関わっていたんだなあと
ちょっぴり切なくなりました。
もちろんひとつのゲームとして、
MOTHER1+2はとても思い入れが深いです。
糸井さんのインタビューを読んで、
「ああ、そういうことあった、あったよ!」
と嬉しくなったりしました。
プレイした時の事を思い出して、
数年ぶりにMOTHER好きの友達にメールして
ちょこっと盛り上がったりとかして、
「やっぱりすごいよねMOTHER」となったり。
そして同時に、切ない事も思い出してしまって、
いてもたってもいられず、こうしてメールしてしまいます。
糸井さんに、また「MOTHER」について
取材する事がありましたら。
もし叶うことならば、
「音」のイメージを尋ねていただけないでしょうか?
我がままだなあと、自分でも実感しています。
ただ、耳が聞こえない私にとって、
ゲームの中の彼らが音を取得するシーン。
いつも切なくなりました。
「ガチャン ツーツーツー」があるだけに、余計。
すみません、私情だけのメールになってしまいました。
どうぞ読み終えましたら、このまま捨てて下さい。
でも矛盾しているようですが、送る事はお許し下さい。
それでも私がMOTHERを好きなのは、本当です。
最後まで読んで下さって、ありがとうございました。
失礼いたします。
(katan)



【耳からの『MOTHER』】

『MOTHER』と『MOTHER2』をたのしんでくださって、
ほんとうにありがとうございます。
まず、このゲームでの、
音のイメージをどう考えていたか、
ということについて、お答えしますね。
これは、けっこう何度も言ってきたことなのですが、
『MOTHER』『MOTHER2』については、
他のゲームよりも、
もっと耳からの情報を大事にしようと思っていました。
論理よりも感情に訴える力とか、
いっきに、あるイメージを想像させる力とかについては、
耳からの情報というのは、
とてもいい役割を担ってくれます。
単純に、質問への答えはこれだけなのですが、
もうひとつの、問題がありますね。
耳の不自由な人にとって、
「耳からの情報」に力を注いでつくったゲームは、
どんな意味を持つのだろうか、ということ。
このことについての、ぼくの考えを少し書きます。

まず、まったく逆さにも考えてみましょう。
耳の不自由な人の感じた『MOTHER』への感情は、
耳の聞こえる人には、味わえないということです。
そういうことも、言えると思うのです。

もちろん、耳からの情報を
送り手としてのぼくらは、
ゲームのなかに入れ込みました。
たくさんの人が、それを受け取って
たのしんでくれています。
でも、音楽や音のことなんて、気にしてもいなかった、
という人も、たぶんいると思います。
また、目が不自由で耳のよく聞こえる人には、
ゲームの画面からの情報は、受け取りにくいでしょう。
同じように、しつこく考えていくと、
フランス人がフランス人のためにつくったソフトを、
ぼくら日本人が受け取っても、
フランス文化圏の人たちのように、
多くのものを受け取ることは、むつかしいでしょう。
その逆も、ありますね。

こうして考えていって、誰も彼もに
すべてを伝えたいと考えてしまうと、
作り手は、袋小路に入ってしまうと思うのです。
で、いつごろからか、ぼくが思ったのは、
まず自分の持っているものを、
最大限に出すようにしよう、ということでした。
走り回る仔犬は、とてもかわいいけれど、
足の不自由な人が散歩に連れていくのは
難しいですよね。
赤ん坊は、となりにいるお母さんが風邪をひいて
熱があるときでも、おっぱいをくれと泣き叫びますね。
仔犬も、赤ん坊も、自分の力を最大にするようにしか
生きられないわけです。
せいいっぱいに生きる、ということを、
何かモノをつくるときには
やったほうがいいと、思ったのです。

できることをせいいっぱいする。
これを、みんながやることが答えなのではないかと、
ぼくは考えています。

人は、世界中のすべての情報を
自分のものにできないし、
永遠に生きられるわけでもない。
でも、できる範囲で、せいいっぱいに、
発信したり受信したりをくりかえしていれば、
それぞれに生まれて生きていることのよろこびを、
得られるのではないかと、思います。

もちろん、それでも、
よりたくさんの人やモノやコトと
コミュニケーションしたいと思うのも、
じぶんの「できることをせいいっぱい」のなかに、
入っているはずです。
それが、全部の力を発揮することのなかに、
入っていたら、最高なんですけどね。

最後に、katanさんが感じてきた
『MOTHER』の世界は、
他の誰にもない、たったひとつの世界でもあります。
それを、大切にしてください。
katanが、「できることをせいいっぱい」できる
毎日が送れるよう、祈ります。

ガチャン ツーツーツー。

糸井重里





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2003-06-16-MON

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