『MOTHER』の音楽は鬼だった。
鈴木慶一×田中宏和×糸井重里、いまさら語る。


第4回
「密室の音楽チーム」


MOTHERに没頭していた小学生の頃を思い出しました。
音楽を聞くためだけに何回も電車に乗ったり、
ライブハウスで何回も「きみらも うたうかね?」に
「はい」と答えたりしました。
(こま)



── 鈴木さんと田中さんのあいだのやり取りは
どういう感じだったんですか?
田中 まず慶一さんからデモテープをもらうんですよ。
で、またそれがほんといいんです(笑)。
ほんとに、いい。
ビーチ・ボーイズの
ブライアン・ウイルソン‥‥
ビートルズのジョン・レノンの
デモテープを聞いているような、
ほんとシンプルな演奏に、
慶一さんの歌が‥‥。
で、メロディを
楽器に置き換えるのが、惜しい。
鈴木 もちろん、田中さんも曲をつくるんだよ。
で、それもいいんだよ。
互いに「いいぞ、いいぞ」と(笑)。
糸井 楽しそうだったよ〜、このふたり。
── その作業はどこで行われてたんですか?
鈴木 俺の家。まだキレイでスペースがあったころ。
ひとり住まいでね。
糸井 いまは「魔窟」と呼ばれて誰も入れない(笑)。
田中さん、慶一くんの家に、
そうとう頻繁に行ってたよね。
田中 そうそうそうそう。
週に3日ずつ行って。
糸井 ラブホテルに泊まってたりもしたんだよね(笑)。
鈴木 そうそう、初めて家に来たときかな。
泊まる場所を探してて、
ウチから近いところっていうんで、
「シャトーなんとか」っていうラブホテルに
ひとりで泊まらされる、というね(笑)。
田中 「ホテル・シャトー・××××!!」
(*ほぼ日より:名前は伏せさせていただきます)
しかも 連泊!!!
奥にスイッチがいっぱい並んでる
小さな 窓がフロントで(笑)。
一同 (笑)
── そこから慶一さんの家に通っていたと。
そこでの作業風景はどんな感じでしたか。
鈴木 最初のころまでさかのぼると、まずあれだ、
「技術的にファミコンのドラムの音は
 どこまでイジれるのか?」
っていうことを、ひろかっちゃんに教わったの。
要するに、バスドラムの音が
どれだけ低くできんのか?
どれだけ重くなれんのか? とか、
そういう、打楽器系の音質を調べた。
あと、音色はどんなのがあるのかって、
ぜんぶ聴かせてもらって。
── へええ〜。
鈴木 で、ゲームの絵ができてるから、
それを見ながら、まず鍵盤やギターで作曲する。
「できたよん」って田中さんに渡すと、
彼がそれをデータ化して、
さらに変形させていくわけだ。
で、そのあいだに、別の曲をつくり出す。
糸井 おもしろい(笑)。
鈴木 たとえばギターの音だったらね、
やっぱりギターらしく、ベンド
(※音程を音符で割り切らずに、
 そのあいだを連続して変える技術)
させたりしていきたいわけだよ。
トゥイーンとかギョイーンとかね。
糸井 ギターのチョーキング
(※弦を指板側の指で押し上げて
 音程を変える技術)
もやったもんね。
鈴木 やったやった、あれには驚いたなあ。
いったいどうやったの、すげーって(笑)。
糸井 あの時代に、ファミコンで
ギターのチョーキングをやってるのを知って、
「こいつら、どうかしてる」と思ったよ(笑)。
田中 (笑)
鈴木 エコーができたときも感動したね。
田中さんに「エコー効果ほしいな」って言うと、
つくるんだな、これが(笑)。
それは、鳴った瞬間に、ちょっとずらして、
もう1コ音を鳴らすっていうワザなんだけど。
── 疑似エコーだ(笑)。
鈴木 疑似エコー(笑)。
というか、ディレイ
(※弾いた音をエフェクターなどの装置を使って
 もう一度やや遅れて鳴らすこと)
なんだけどね、ほんとは。
遅れて鳴った音の音量を、やや小さくするんだ。
糸井 「どうかしてる」よね(笑)。
── 同時に鳴らせる音が3音しかないのに(笑)。
鈴木 ずらせば、何音でも鳴るからね。
同時に鳴らせるのは、
3音と、たしか、もう1コ使えたんだよね?
田中 3音プラス、ノイズの成分
(※ビー、ガーといった音)ですね。
鈴木 ノイズ成分ではパーカッション系が
つくれたんだよね、たしか。
糸井 そんなふうに音楽をつくってるからさ、
メモリ(※絵や音を処理するところ)
をかなり使っちゃうんだよ。
きっと、グラフィック担当者は
ドキドキしてたと思うよ。
当時はメモリの奪い合いだったから。
(※ファミコンのメモリは容量が大きくなかっため、
 一度にたくさんの絵や音を処理できなかった)
鈴木 だから、あのころ「お金」って呼んでたよね、
メモリの使用容量を。
糸井 そうそう。「いくら?」とかって。
田中 あー、そうっすねぇー(笑)。
鈴木 容量が小さいから、音楽に取ると絵に響く。
だから、こっちの持ち金が決まってるわけだ。
つまり、予算があらかじめ決められている。
決められてるんだけど、ところどころ、
「ここに、やっぱし違う音が欲しい!」
っていう場面が出てきたりするんだよ。
そうなると、絵の人たちに
お願いしなくちゃならない。
糸井 ふたりは絶対言わないだろうから、
俺が注釈しておくけど、
『MOTHER』をつくり始めるとき、
音楽には、特別扱いともいえる量の
「お金」を渡してたんだよ。
── ふつうのゲームよりも、
音楽に割り当てられたメモリの量が
『MOTHER』ではずっと多かったと。
特別予算が組まれてたわけですね。
鈴木 そう。ゲームとしては特別だよね。
糸井 ほかのゲームの開発者が見たら、あれ、怒るよね。
でも、それは、ぼくらの方針だったんで。
で、なおかつ偉いのは、絵を描く側のヤツも、
「それはわかる」っていうことで、
必要なところでは音楽に譲ったんだよ、最終的に。
田中 あ、あと手紙事件がありましたね。
鈴木 ああ、あったねえ。
1作目の『MOTHER』のときだ。
どうしても違う音楽を鳴らしたくて、
絵の人たちにお願いしないといけなかったわけ。
そこで俺はどうしたかというと、
手紙を書いたんだ。手書きで(笑)
さすがに「お金を下さい」とは書かないけど──。
糸井 「メモリを下さい」と(笑)。
鈴木 「メモリを下さい、お願いします、
 これ以上、ぶんどりませんから」って(笑)。
それを、ひろかっちゃんが直接持ってって、
「お金」をもらうことができたんだよ。
糸井 メールなんかないからね。
鈴木 手紙を書いたわけだよ(笑)。
もちろん、やりたい放題やってたわけじゃなくて
どうやったらメモリを食わずにつくれるかを
ひろかっちゃんが
つねに研究しながらつくってたんだけどね。
── なるほど。糸井さんは、基本的に、
音楽チームにお任せだったんですか?
糸井 だって、そこはブラック・ボックスですよ。
ひとりの頭の中に近いようなことを
ふたりでやってたわけですから。
鈴木 できると、聴いてもらってた。
で、新しい絵ができると、その絵を見ながら、
「じゃあ、こうかなぁ?」とか。
でも、ひろかっちゃんは、
この曲は別の場所のほうが似合ってるかなあ、
とかまで考えてたと思う。
糸井 その都度、キーワードは投げてたね。
「ここはテックス・メックス
(※メキシコと南西アメリカの融合音楽)で」とか。
田中 うん。画面ごとに提案がありましたね。
鈴木 「ライブ・ハウスの音」とかね。
糸井 「だったら、ここはもう
 露骨にロックン・ロールを入れたらどうだ」
とか、そういう話をしていたよね。
離れて仕事してるチームだったんだけど、
意外にどっかから共有ができてましたよね。
思えば、メールのない時代にね、
離れたところでゲームつくってたんだねえ。
いまじゃ、あんな方法でつくるのって、
ちょっと難しいね。
鈴木 危険は危険だよね。
糸井 いま思うと、信じらんない。
鈴木 でも、そのぶん、想像力を働かせるわけで。
「ああ、こういうこと考えてるんじゃないの?」
って思いながら、一生懸命つくるわけだよ。
糸井さんと密に会うわけじゃないけど、
ときどきは会って。
つくるのは密室作業だったけど、
ひろかっちゃんと、ふたりで、
「糸井さん、なんて言うかな?」って気にしながら。
糸井 でも、音楽づくりが進行してからは、
オレは全部ゴーゴーゴーだったですよね。
もうね、来るもの来るもの、笑うのよ、オレ。
「どぉしてこういうことするの?」って。
── 驚きながら喜んであきれるっていう(笑)。
糸井 そうそう。ぜんぜん問題なかったですね。
「これは違う!」っていうのは、
1コぐらいあったのかなぁ?
鈴木 1コぐらいはあったかな(笑)。
糸井 ……あ! あった!
あれですよ、いっちばん悩んだのは、
『エイト・メロディーズ』です。
鈴木 うん。
田中 ああ、そうそう、
ほんと決まったのは
開発の最後の方でしたね。



小学校4年の時、まだクリアしてない友達から
マザー2借りてクリアして返して(笑)
それ以来いつもマザー2好きな友達と
マザー2の話してたり授業中マザー2の音楽
口ずさんだりしてました。
マザー2は返しちゃったからずっとやってなかったんですが
去年友達がマザー2の最初のボスの音楽で
ロックに目覚めたって言ってきて
しばらくマザー2話で盛り上がってたら
やりたくなって中古屋さんで買って
サントラもなぜか売ってたから買ってハマリ直しました。
2回しかやってないけど
こんなに愛着があるゲーム他にありません!
(たかゆき)

(続きます!)

2003-06-03-TUE

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