第6回サルメ

カルストゥラからバスに乗り
ヘルシンキ行きの電車の乗り換え地
ユヴァスキュラにあるヨウニの家におじゃました。
妻のタルヤと娘のエリサと森の中に暮らす彼は
日本車のメーカーで電子工学?発明?のような
仕事をしているといっていた。

眼がぎょろっとしたヨウニは
身のこなしが ゆったりしていて
ハグの仕方も とってもスロー。
慣れないわたしはちょっと及び腰になってしまう。
椅子を引いて座らせてくれたり 数分おきに
『カオル、たのしんでいるかい?』
なんて聞いてくれる 気遣いを忘れぬ紳士だ。
紳士なのだが なんというか 悪い意味ではなく
“とろっ”から“どろっ”の変わり目のような人だった。

昔の駅舎かなにかをそのまま移築したという家は
まだ内装工事の途中だったけれど
どこが途中なのかよくわからなかったくらい
もう充分素敵で その内装に関わっていたのが
パジャマのお直し依頼主 カティだった。

撮影させてもらえるだけでもありがたいのに
彼らは美しいテーブルセッティングと
おいしい食事を用意し 出迎えてくれた。
メインは庭の森にある屋外キッチンで
(変な言い方だが 庭が森なのだ。森が庭なのか。)
薪を使って ヨウニが焼くクレープ。
だったのだが そのクレープがなかなか焼けず
おまけに雨まで降ってきて 散々な状態に…
そんな中でも懸命にクレープを焼くヨウニの姿に
自分の残念体質を重ねあわせ
若干のシンパシーすら感じてしまった。

いつもシャツのポッケにペンをさすのだろう
ポッケ口やペン先のあたる底に穴があいていた。
キノコを編んで穴から生やす。

ヨウニがクレープをのんびり焼いてくれている間
娘のエリサが案内してくれた森には
たくさんのキノコが生えていた。
赤いレインコートのフードをかぶり
苔むす岩の上に立ち こちらを振り返ったエリサは
ベニテングダケの精のようで とてもかわいかった。

2015-04-02-THU

  • TOP