ほぼ日刊イトイ新聞

この旅も、ことしで4年目。
「ほぼ日」と伊勢丹新宿店のみなさん、
シャツメーカーのHITOYOSHIのみなさん、
そして、白いシャツをつくっている
いろいろなブランドのかたがたといっしょに、
「いま、着たいシャツ」を探します。
ことしの取材を通して、
「いいシャツを買うってどういうことだろう」
「ながく着るってどんな意味があるんだろう」
そんなテーマにも、
すこしだけ触れられたような気がします。
また「なんとなく似合わないな」を解決する、
いいヒントも教わってきましたよ。
10回の連載、たっぷりおたのしみください!

その2
似合う白、似合わない白。
そしてHITOYOSHI SHIRTでつくった
ことしのレディスシャツは。

「白いシャツ・似合う&似合わない」をテーマに
バイヤーの栗田さん、
アシスタントマネージャーの古田さん、
販売担当マネージャーの松本さんと、
白いシャツをめぐる、いろんなお話をしています。
話題は、体型のことから
「白という色」のことへうつりました。
同じように見える白という色に、
人によって似合う・似合わないがある?!

松本さんが言います。

「白、とひとくちに言っても、
いろいろな白がありますよね。
それによって似合う・似合わないがあるんです。
白には、すごくざっくり分けると4つの白があります。
いわゆる漂白精練をした『真っ白』、
アイボリー系の白、
黄色が強いクリームのような白、
そして青い絵の具を1滴落としたような白。
これが、お肌の色との相性があるので、
店頭では、お客さまによって、
こちらがお似合いですよというアドバイスを
さしあげています。

でも、今回のラインナップもそうなると思うんですが、
『白いシャツ』はいわゆる『真っ白』か、
すこしクリームがかった白のどちらかですよね。
ほんとうにざっくり説明しますが、
みなさん、掌(てのひら)を見せていただけますか?」

はーい、と、一同、掌を出しました。

黄色がかった色味の人と、
ピンク、赤っぽい色味の人がいるのがわかりますか。

▲みごとに「黄色っぽい」「ピンクっぽい」に分かれました。

「ピンク系の掌の人は、
真っ白や、青みがかった白が似合います。
黄色がかった掌の人は、
アイボリーやクリーム系の白が似合います。
ざっくり、そう考えてください」

おおなるほど、たしかにぼく(黄色い手)は、
クリーム色系のほうを、わりと選びます。
なんとなくこっちが似合うと感じているのかも。
でも! ちょっと青っぽいけど、
かたちがすごく気に入っている、
というシャツだって、ありますよ。
そういうシャツも着たいなあ。

「そうなんです。そこが悩みどころですよね。
そういうときは、自分が持っている要素の色と
よく合う色のアクセサリーや
小物を足すといいですよ。
かんたんに言いますと、
黄色がかった掌の人はゴールドを、
ピンクの掌の人はシルバーを足します」

身体と、白いシャツのあいだに、
ひとつ「つなぐもの」を入れるんだ。

「シルバー、ゴールドだけじゃなく、
黄色い手の人は、インナーにアイボリーをつけると、
真っ白なシャツを着ても、
顔うつりがいいですよ」

うわあ、これは知らなかった。
朝、鏡を見て「なんかおかしいなあ」ということが
あるんですが、色が原因のこともあるんですね。
よかった、これで「このシャツは似合わない人がいます」
って書かなくて済みます。
ちょっと違和感を感じるときは、
そんなふうに工夫をしてみれば、いいのですね。

ことしの「ほぼ日」×伊勢丹のシャツは?

前置きがだいぶ長くなりましたが、
この会話、ことしの「白いシャツをめぐる旅。」の
企画ミーティングのときのもの。
そんな会話から、ことしの“オリジナル”の
白いシャツがうまれていきました。
バイヤーのみなさんと、
九州の「HITOYOSHI」のみなさん、
そして「ほぼ日」とで考えたことしのシャツ。
それは体型に左右されず、色味にも左右されず、
なりたい自分になる、ということをテーマにしています。

▲こちらHITOYOSHIの松岡さんと大坪さんです。
オリジナルシャツづくりを担当していただきました。

ふっくらした人でも、
ほっそりした人でも、
好きなシルエットが着たい気持ちは同じ。
ならば同じディテールで、
サイズではなくシルエットに変化をもたせ、
「どちらの人が、どちらを選んでも」
すてきに着られるシャツをめざそう、
ということになりました。

ここから、冬のあいだに何度もおこなった
ミーティングの話は省きます。
何度もサンプルをつくっては検討し、
微調整をしていったのですが、
一気に「完成形」をお見せしちゃいますね。
ことしのレディスのオリジナルシャツは、
3つの型で5つのシルエットがありますよ。

▲HITOYOSHI丸衿シャツとバンドカラーシャツの、レギュラータイプ。

こちらは、セットインで
ピシッときれいに着たいときのための、
いわゆる「しゅっとしたかたちのシャツ」です。
丸衿とバンドカラー、2つの型があります。
背中にダーツが入っていることで、
ウエストが、ほんのすこし絞った印象になっています。

細く見えますが、バストの豊かな人でも、
このダーツの工夫でセクシーになりすぎず、
きれいに胸からストンと落ちる印象に。
姿勢のよいシルエットとなり、
こと後ろ姿が、とてもきれいなんですよ。

第1ボタンと第2ボタンの位置関係も、
こまかく調整をしました。
きちんと上で留めたときや、
ひとつ開けたときのうつくしさはもちろん、
ふたつ開けたときでも、
胸が見え過ぎないようになっています。

丸衿のシャツについて
「ちょっとかわいすぎるかも」と
思われるかたもいらっしゃるかもしれませんが、
こちらもメンズ由来のかたちですから、甘過ぎません。
とくにかっこよく着たいときは、
チノパンやウォッシュのかかったデニムをあわせ、
靴をヒールにする、というような
大人っぽい着こなしもできますよ。

バンドカラーについては、
首周りの開き具合を細かく検討し、
何度も何度もやり直しをしました。
ふつう、女性のブラウスの首周りは38センチが主流。
けれどもこのシャツはあえて
42センチまで拡げています。
ボタンを留めたときでも余裕があり、
そのことで首が細く、長く見える効果がうまれました。

そのため、丸衿とバンドカラーのシャツは、
同じボディーではなく、
前身、左右、ヨーク、全部のパターンを変え、
それでもサイズ感が統一されるように工夫しています。

▲HITOYOSHI丸衿シャツとバンドカラーシャツの、オフショルダータイプ。

包まれるような着心地をたのしみたいときのために、
オフショルダーで丈も身幅もたっぷりの
ビッグシルエットのシャツをつくりました。
こちらも丸衿とバンドカラーの2型。
背中にセンターボックスを入れることで、
よりゆったりとしたシルエットになり、
HITOYOSHIが得意とする
メンズシャツのディテールも、しっかり残しています。

オフショルダーでビッグシルエットのシャツは、
体型によっては「あまりに大き過ぎる」と感じる人も。
そんなときは、腕まくりをして手首を出すことで
(手首というのは、あんがい、みんな、細めなんです)、
見た目の重心を上にするとともに、
華奢な印象と、かろやかさが出ます。
小柄なかたは、前できゅっと結ぶのもいいですよ。
「そういう着方、むかーし、流行りましたね!」
そうなんです、その着こなしが、いま、
もどってきているんですって。

また何度もこのコンテンツで伝えてきた
「衿をぐっと後ろに抜く」着方ですが、
とても一般的になってきたとはいえ、
かならずしもそうしなくてはいけない、
ということはありません。
きちんとセットインして着るのもよし、
外に出して着るのもよし。
前のボタンを留めずに羽織る、というのもいいと思います。

ちなみに素材ですが、
バンドカラーのシャツは経糸・緯糸ともに
良質なコットンを使った100双のツイル。
光沢があり、きれいに見える生地です。
洗うごとにだんだんやわらかく、独特の風合いが出ます。
アイロンをかけて着ていただくと、
そのうつくしさがきわだちます。

丸衿のシャツの生地は、
「タイプライター」と呼ばれるもの。
経糸(たていと)と緯糸(よこいと)の両方に
「ギザ88」というエジプトの超長綿を使い、
うんと高密度に織っています。
洗いじわも、こまかく、大きく、たくさん出ますから、
洗って干したらそのまま、
しわをたのしんで、着ていただくのもおすすめです。

▲HITOYOSHIロングシャツワンピース。

そしてもうひとつ、うーんと丈の長い
「ロングシャツワンピース」もつくりました。
前身ごろのデザインにボザムを取り入れ
(メンズの礼装用のドレスシャツの装飾です)、
しぜんなAラインのかたち。
タックは入っていませんが、
背筋をのばして着ると、
背中にきれいなドレープがうまれる、
余裕のあるつくりです。

メンズシャツのかたちが基本ですけれど、
ビッグシルエットにして、身幅を広く、
そして肩を落としています。
(縦が長いのでわかりにくいですが、
じつはかなり、大きいのです。)
衿をワイド気味にすることで、
全体の印象をやわらかく。
ボザムのかたちを細く長くすることで、
着たときにタテのラインを強調し
すっきりと、縦長のイメージにしています。

そのまま、すとんと着てもさまになるシャツです。
ワンピースとして、カラフルなタイツを着たり、
素足にショートブーツで、ざっくり羽織ったり。
ベルトをして、ふんわりとブラウジングさせて、
ワイドパンツを合わせてももかわいい。
また、秋冬は丈の短めのセーターを重ねるなどの
重ね着もたのしめそうです。

背の低いかたは、ポイントを上に。
ベストを合わせてもいいですよね。
背の高いかたは、逆に、
ロングカーディガンを羽織り、
縦のラインを強調する着方をするとステキです。

このロングシャツの生地は、
昨年「素材」の特集でお世話になった
浜松のフジボウがつくっている
シャツ用のコットン生地。

専門的なことを言いますと、
経糸(たていと)と緯糸(よこいと)を、
S撚りとZ撚りというふうに、
撚り方を逆にしています。
撚りの異なる糸どうしが重なり、
反発してふくらみを持つため、
柔らかな表情が出ます。
着れば着るほどに柔らかな肌触りが持続する
ポプリン(うね織りにした、柔らかな織物)生地です。

‥‥って、なんだか連載2回目で
こんなに長くなっちゃいました。
じつはHITOYOSHIさんとは、メンズのシャツ
(レディスとしても着られます)もつくりましたが、
その話は連載後半でお伝えします。

次回はことし初登場となる
「INDIVIDUALIZED SHIRTS」をご紹介します!

2018-05-13-SUN