三谷幸喜脚本の8時間ドラマ 『わが家の歴史』を、 観ると決めた。

糸井 うーん、なるほど、なるほど。
いや、だいぶ、場もあったまってきましたから、
そろそろ、行っちゃいましょうかね。
えー、本日、お集まりいただいた理由は‥‥。
三谷 いまからですか。
重岡 いまからですか。
一同 (笑)
糸井 えー、このたび、三谷さんが
『わが家の歴史』という、
3夜連続、合計8時間にわたるドラマの
脚本を手がけられまして、
これが、まぁ、プロットと
キャスティングを見るだけでも
そうとうわくわくさせられるもので。
三谷 ありがとうございます。
重岡 ありがとうございます。
糸井 それを一足はやく、
鑑賞させていただけるということで
ぜひ、と手をあげたわけです。
三谷 まだ、音楽や合成カットが
未完成なものですが、
いちおう、現時点で、関係者以外で観たのは、
世界で糸井さんだけですよね。
糸井 え?
重岡 そうですね。
糸井 最初のひとりでしたか‥‥。
三谷 ですから、とても重要な。
糸井 はぁ‥‥。
重岡 どうぞ、よろしくお願いします。
糸井 いや‥‥それはそれは‥‥。
『わが家の歴史』とは?

3夜連続、トータル放映時間8時間。
激動の昭和を生き抜いた架空の一家の物語
‥‥というスペックよりも、
三谷幸喜さんが書きおろした
8時間のホームドラマで、
西田敏行さんや佐藤浩市さんや柴咲コウさんや
松本潤さんや佐藤隆太さんや堀北真希さんや
榮倉奈々さんや長澤まさみさんや大泉洋さんや
玉山鉄二さんや鈴木砂羽さんや天海祐希さん、
といった、たんに豪華なだけではない、
「グッとくるメンツ」がそろっているドラマ。
だってね、あの三谷幸喜さんが、
「ぼくがいままで観てきたドラマの
 わくわくした部分をぜんぶ取り入れました」
とまで言ってるんですから、黙ってられません。
なんでこんなものすごい企画が突然?
と思ったらフジテレビの開局50周年企画だとか。
三谷 まだ、スタッフの方たちも
ご覧になってないんですよね?
糸井 まだ、ぼくだけですね。
最後まで観たのは。
重岡 最後までご覧に‥‥?
糸井 観ました。もちろん。8時間。
いや、もちろん、多少の不安はあったんです。
だって、8時間ですからね。
「仕事です。8時間のドラマを観なさい」
っていわれたら、正直、
困ったなって感じると思うんです。
三谷 まぁ、そうでしょうね。
糸井 たとえばこれが小説だったら、
なんていうか、早く読む方法があるというか、
急ごうと思ったら急げると思うんですけど、
ドラマを観るとなると、
8時間のものは、8時間かかりますからね。
三谷 うん。
糸井 もう時効だろうということで白状すると、
かつてぼくは『ネバーエンディングストーリー』
という映画を観て感想を書く仕事のときに、
どうしても時間の都合をつけられなくて
早送りで観たことがあるんです。
時間がないから早く終わらせたくて
早送りした映画のタイトルが
『ネバーエンディングストーリー』だった
というのはたいへん皮肉な話ですが‥‥。
三谷 はっはっはっはっ。
糸井 それはさておき。
三谷 それはさておき。
糸井 早送りしたその映画を、ぼくは当時、
それほどおもしろがってなかったんですけど、
あとで観たらおもしろかったんですよ。
三谷 そうそうそう、
早回しで観ると、筋はわかっても
必ずつまらなくなりますよね。
糸井 絶対、つまんないですよね。
なんでなんですかね。
三谷 なんでなんですかね。
それも、さておきましょうかね。
糸井 さておきましょう、さておきましょう。
ま、そういうことを経験したので、
以来、ぼくは、早送りで映画を観るという
失礼なことは二度としないんです。
三谷 つまり、8時間のドラマを
8時間かけて観ました、と。
糸井 そのとおりです。
まぁ、CM部分の
なにも入ってないところは、
さすがに早送りしましたけど‥‥。
三谷 あ。それ、やっちゃったんですか?
糸井 はい‥‥‥‥えっ?
一同 (笑)
三谷 あのCMの時間が大事なんですよ。
一同 (爆笑)
糸井 そう‥‥でしたか。
つまり、その時間も‥‥。
三谷 はい、CMも飛ばさずに。
糸井 そこはCMが流れている時間だとして、
その、トイレに行くだとか。
三谷 そうそう、それが大事なんですよ。
糸井 な、なるほど‥‥。
いや、でもね、三谷さん、
そこ、画面、真っ暗ですからね!
だったらCMを入れておいてください。
一同 (笑)
三谷 やっぱり真っ暗でしたか。
糸井 さすがに真っ暗な画面は
飛ばしちゃうでしょ、ふつう。
三谷 それはさておき。
糸井 それはさておき。
まぁ、8時間を観たわけです。
が、まったく退屈しませんでした。
思わず観おわったとき、
三谷さんにメールを
入れちゃったくらいなんですが、
ほんとにおもしろかったです。
観はじめたら、あっという間というか、
8時間を一気に‥‥
ま、実際には、一気にじゃなくて
2日に分けて観たんですけど。
三谷 ええっ!
糸井 ‥‥え?
三谷 2日に分けて観ちゃいましたか‥‥。
一同 (笑)
糸井 まずかったですか‥‥
やはり、一気に?
三谷 とんでもない!3夜連続のドラマなんですから、
3日に分けて観てもらわないと‥‥。
糸井 ああっ!
一同 (爆笑)
三谷 1回ずつ、観おわって、
「つぎはどうなるんだろう?」という気持ちで
1日待つっていうのが大事なんですよ。
糸井 たしかに、たしかに。
そう観られることを想定して
書かれているわけですもんね。
三谷 そうです‥‥はぁ‥‥。
だけどまぁ、しょうがないですね。
2日で観てしまったものは。
糸井 いや、3日に分けることも考えたんですけどね、
その、翌日から社員旅行だったりもして‥‥。
三谷 社員旅行なら、しょうがないです。
一同 (笑)
糸井 このつぎに、こういった機会があれば、
かならず、意向に沿ったかたちで
観たいと思いますが、それはさておき。
三谷 それはさておき。
糸井 まったく退屈せずに、おもしろく観ました。
で、なんていうんですかね、明らかに、
感想言うために観てるわけじゃないんですよ。
つまり、ひとりのお客さんとして観てた。
三谷 はい。
糸井 あのねー、なんていうか、
ずぅーっと相手してもらってる
っていう感じなんですよ。
ドラマがずっとこっちを向いてくれてる。
だから、8時間がすぐに過ぎる。
で、最初に大ざっぱに言っちゃいますけど、
とうとう最後まで観て、涙がぽろぽろと出ました。
途中、ほろりとすることはあっても、
ほろりで済んでたんですけど、
最後はぽろぽろぽろぽろ涙が出てきた。
それは、最後の場面についての涙じゃなくて、
それまでに溜めといたぶんが出たんだと思います。
あの、作品に対して「泣いた」ってことは、
ほめ言葉じゃないってのはわかってるんですけど、
なんていうのかな、「泣けた」っていう要素も
ありがとうございます、という感じです。
まずは、大きく、そんな感想です。
三谷 あー、うれしいです。
重岡 ありがたいですね。
三谷 なにしろ、糸井さんは
世界で最初にご覧になった方ですからね。
糸井 (笑)
三谷 酷評されたら全否定ですから。
重岡 でも、幸い、肯定(笑)。
糸井 つまり、全肯定です。
世界中が肯定しています。
いまのところ。
三谷 いやぁ、よかった、ホッとしました。
最初のお客さんがほめてくれて。
糸井 いやぁ、すみませんね‥‥
世界で最初の観客なのに、
CMはとばすわ、3日に分けないわで。
一同 (笑)
(つづきます)


2010-04-04-SUN