和田ラヂヲ先生に訊く、似顔絵とは何か(とか)。

ほぼ日刊イトイ新聞

第1回 似顔絵は、いろいろ深い。

──
これまでの人生で、
「似顔絵」を描いていただいた経験が、
2度ほどあるんですが、
どちらも、すごく、大事にしています。
和田
ええ。
──
知人や同僚には照れくさいんですが、
遠慮のいらない家族などには、
もうれつに、じまんしてやりたくなります。
和田
よければ遺影も描きますよ。
──
ええーっと、遺影を‥‥似顔絵で?(笑)
それは、自分の一存では。
和田
有名な人に描いてもらったら、
もしかしたら、アリかもしれないですよ。
──
そうですかね。
和田
たとえば荒木飛呂彦さんに描いてもらう、
「ジョジョ風の遺影」とか。
──
ああー、
部長、スタンド使いだったもんなあとか?
和田
原哲夫さんの描いた遺影で、
「おまえはすでに死んでいる」とか。

ただね、ぼくの場合、
あまり大きく描いちゃうとバレるんです。
──
バレるというと、何が‥‥。
和田
いろいろと。
──
なるほど。大きく描くといろいろバレる。
それが、似顔絵。
和田
あくまで、ぼくの場合ですけどね。
あと、描けば描くほど似なくなるんです。

同じ人を描く場合も、
1回目より2回目、2回目より3回目のほうが、
うまく描こうという煩悩がはたらくのか、
邪念に邪魔されるのか、どんどん似なくなって。
──
深いです。
和田
だから、一発目に描いた似顔絵が、
いちばん似てる気がする。

ああ、ちょっと失敗したなとか言って、
変に描き直したりすると、
泥沼にズブズブ嵌まっていくんですよ。
──
それって、なんでですかね。
和田
うーん、思えばマンガの場合も同じで、
最初のペン入れがいちばんよくて、
描き直すにつれ、
だんだんおかしくなっていって、
最後は、イヤになっちゃうんだよなあ。
──
何かファースト・インプレッション的な、
そういうことがあるんでしょうか。
和田
ミュージシャンの人にも、
いわゆる「一発録り」って、あるじゃない。

結局、あれこれやるより、
そっちのほうが勢いがあっていいみたいな、
あれに近いのかなあ。
──
一回目は、筆がイキイキしていると。
和田
そう。描けば描くほど、
目が、どんどん死んでいくんですよ。

結局、職人さんみたいに
作品を練り上げていくタイプじゃないから。
ビギナーズ・ラックだけを頼りに、
ここまできてるから。デビューのころから。
──
そんなことないですよ。
和田
まあ、仮に似てなくても、最終的には、
その人の「名前」を入れたら、
不思議と似てくるってテクもあります。
──
大技だなあ(笑)。
和田
さらに言えば、名前のあとに「年齢」を
「(38)」とか入れたら、
もう、その人以外には見えなくなります。

まあ、これはナイショのテクですけどね。
──
すでに世界に公開してしまっていますが‥‥、
でも、ラヂヲ先生の場合、
似てりゃいいってモンでもないですよね。
和田
そうなんですよ。よくわかってますね。

ただ似てたって、おもしろくないんですよ。
それだと笑えないし、
似顔絵って、ある意味「ギャグ」なので。
──
どこか、コロッケさんのデフォルメ芸にも、
通じるものがありそうですね。

ちなみに先生、こちらをおぼえていますか。
和田
あー。ああー。おぼえてる(笑)。
むかし、吉田(戦車)さんと描いたやつだ。
──
そうです、2009年のことですが、
吉田戦車先生と和田ラヂヲ先生のお二人に、
巣鴨のとげぬき地蔵尊のあたりで
スペシャル対談をしていただいたんですが、
そのとき描いていただいた、
「それぞれのシルベスター・スタローン」。

その、貴重な原画です。
和田
何にも見ないで、せーので描いたんだよね。
──
このときラヂヲ先生がおっしゃった言葉を、
いまも忘れることができません。

「ああー。俺のスタローン、
 ジャッキー・チェンになっちゃったよ」
と。
和田
ああー。なってる(笑)。ジャッキーに。

しかも、最近のジャッキーっぽい。
ハリウッドで成功してからのジャッキー。
──
これは「似顔絵」ではないですが、
これも「ただ単に似ているだけ」だったら、
こんなには、おもしろくないです。
和田
そうそう、吉田さんのスタローンだって、
上手ですけど、
この人本当にスタローンかって言ったら、
ちょっとちがうと思うんですよ。
──
よだれ垂らしてるし‥‥。
和田
デビュー当時のスタローンは、
たしか「イタリアの種馬」とか何とかって
言われてたんだよね。
──
え、へぇ、それは、キャッチコピーとかで。
和田
正式なコピーかどうかは知らないけど。
──
すごい表現ですね、それ。
和田
とんでもないよ。
──
まあ、往年のアイドルのキャッチコピーも、
現代の感覚からすると、
なかなか、味わい深いものがありますよね。

中森明菜さんなどは、
ちょっとエッチな美新人娘(ミルキーっこ)、
という打ち出しでしたし。
和田
それを言い出したら、吉田拓郎さんなんか
正確には覚えてないけど、
「乾いた砂漠に、ホースで水をまく男」
みたいな感じだったよね。
──
便利な時代ですから、検索してみましょうか。

あー‥‥すぐに出てきました。
「荒れ果てた荒野に、太いホースで水をまく」
和田
でしょ。
──
乾ききった現代人の心に染み込む歌の歌い手、
というような意味合いでしょうか。
和田
うん。本当に水をまいてたはずはないもんね。
これは何の話ですかね?
< つづきます >
2018-05-29-TUE
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描いてくださるのは、ロビン西さん、
イマガワノブヒロさん、和田ラヂヲさん、
矢部太郎さん、そして下田昌克さん!

そんな豪華な似顔絵のお店が、
6月7日(木)から11日まで開催される
「生活のたのしみ展」に出現します。

店の名は、NIGAOESKÝ(ニガオエスキー)。

われらが和田ラヂヲ先生をはじめとし、
おなじくマンガ家で
『マインド・ゲーム』のロビン西さん、
『Mother3』のキャラクターを手がけた、
ドット絵のイマガワノブヒロさん、
漫画『大家さんとぼく』が大ヒットした
カラテカの矢部太郎さん、
そして、色鉛筆による似顔絵作品で有名な
アーティストの下田昌克さん。

肩書も、作風も、何に似顔絵を描くかも、
みごとなまでにバラバラな5人が、
日替わりで似顔絵を描いてくださいます。

登場の日程や料金や整理券についてなど、
こちらのページで、
詳細を、ぜひチェックしてみてください!

和田ラヂヲさんが描いた、乗組員奥野の似顔絵。

イマガワノブヒロさんが描いた、乗組員奥野のドット絵。

下田昌克さんが描いた、乗組員山下の似顔絵。
※下田さん、当日は別の画材となります。
(ただいま相談中です)

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