第1回 衝撃の「出なかった理由」。


── 衝撃でした。

「ネコ出にネコが出なかった理由」が
「かわいいネコが描けなかったから」
であるというのは‥‥。
ラヂヲ 最後まで悩みました。
── ネコを出すか、出さないかで。
ラヂヲ うん。「本当に、出なくていいのか?」と。
── かわいく描けないからって。
ラヂヲ そう。

でもやはり、
読者をガッカリさせてはいけない
と思い直したんです。
── つまり
「かわいくないネコを出すくらいなら
 いっそ出さないほうが」と?
ラヂヲ 苦渋の決断です。
── ‥‥先生、ぼくたちの知らないところで
そんな思いをされていたんですね。
ラヂヲ 苦しみました。
── 胆石のように。
ラヂヲ ように‥‥ね。
── それでは、あらためて
「ネコが出ますよ。」とは何だったのか、
振り返っていきたいのですが。
ラヂヲ わかりました。
── いかがでしょう、連載を終えて。
ラヂヲ そうですねえ。
── われわれとしては
「4年間、お疲れさまでした」という思いで
いっぱいなのですが、
最終回を描き終えたときの思い‥‥というか。
ラヂヲ はい。
── 静かに筆を置いたときの気持ち‥‥というか。
ラヂヲ まあ、ああいうタイプのマンガなので
ウルウルきちゃったとか
がんばった自分を褒めてあげたいとか
そういう、感無量な気分にこそ
なりませんでしたが‥‥。
── ええ。
ラヂヲ この話を映像化するのは不可能だな
とは思いましたね。

描き終えた時点で。
── ははは。

でも、どこかの地方都市にニョッキリ生える
巨大キノコの実写映像とか見てみたいです。
ラヂヲ その場面から、急に「特撮」風になるよね。
── 読者も、それまでは
このマンガはギャグなのかギャグじゃないのか
計りかねていたものが‥‥。
ラヂヲ ギャグですよ。
── は、失礼しました。

ただ、ギャグはギャグでも
非常にアーティスティックといいましょうか、
高踏的といいましょうか。
ラヂヲ そもそもマンガっぽくしたくなかったんです。
── なるほど。
ラヂヲ というか、マンガ描けないからな、オレ。
── そんなことないでしょう(笑)。
ラヂヲ いや、描けないんですよ、マンガは。
つまり「マンガらしいマンガ」が描けないの。
── ‥‥それは、技法的な部分で?
ラヂヲ そうそう、そのとおりです。
すごい「集中線」のコマとかないし。
── なるほど、たしかにありませんね。
先生のマンガに、そういった激しいコマは。

ちなみに「集中線」というのは、
迫力とかスピード感を出したりするときの
線をいっぱい描く、アレですね。
ラヂヲ オレ、マンガの基本テクみたいなものを
勉強してないから。
── つまり「独自の画風」であると。
ラヂヲ それは、うまいこと言いすぎましたね。

つまり、マンガというのは、
マンガの方程式にのっとって描かれているから
マンガに見えるんです。
── ははあ‥‥。
ラヂヲ そういうこともあって、この『ネコ出』は
「マンガのようで、マンガでない」
みたいな、
「内容があるようで、実はゼロ」
みたいな物語にしようと思っていたんです。
── でも実際「ものすごいおもしろい回」とか
あるわけじゃないですか。
ラヂヲ そりゃあるわい。
── あ、いや、すみません! 少々、表現が。
ラヂヲ ま、いいです。

ともかくそんなわけで、描き終えた時点では
映像化はともかく
単行本にするのが大変だなぁと思いました。
── でも、そちらのほうは、本気で。
ラヂヲ やりますよ。大幅に描き変えますけどね。
── おお、それは楽しみ!
ラヂヲ うん。
── ‥‥「描き変える」?
先生「描き変える」とおっしゃいました?
ラヂヲ 言いましたよ。
── それも「大幅に」と?
ラヂヲ だって、いろいろ辻褄が合ってないでしょ。
放ったらかしのことだってあるし。
── たしかに‥‥。
ラヂヲ そのへんをね、ま、チョイチョイと。
── それってアレですか、具体的には
「野球部カントクの娘さんの行方」とか?
ラヂヲ 春菜のね。まあ、たとえば。
── トランシーバーをカツラに偽装している
清水さんって、いったい誰なのとか‥‥。
ラヂヲ もちろん、そのあたりの謎も。
── 解けますか?
ラヂヲ バッチリ解けます。
── カツラ型のトランシーバーで
タマタの秘書とひそかに通信するなど
どこかあやしい清水さんですが
描かれかただけを見たら
「創業80年を誇るタマタの大玉に衝突されて
 入院してしまったばかりか
 その衝撃でスッ飛んだカツラを
 通りがかりの犬チャペスに持っていかれてしまった
 可哀想なおじさん」
でしかないわけですよね、いまのところ。
ラヂヲ 背後関係、わかんないでしょ?
── まったくわからないです。
ラヂヲ ま、俺もわかんないんだけど、
これからイースト・プレスで打ち合わせして
方向性を決めてきますんで。
── カツラの清水さんの、方向性を。
ラヂヲ うん。
── ‥‥今からですか。連載終了後の、今から。
ラヂオ うん。わかるようになると思う。
── じゃあ、巨大キノコの謎なども‥‥。
ラヂヲ ま、あれはキノコです。ただの、巨大な。
謎はないです。

── はー‥‥じゃあ「タマタの社長」が
途中から「会長」になったりする経緯も?
ラヂヲ え?
── いつの間にか、肩書きが変わったじゃないですか。
「昇進」なのか「勇退」なのか、わかりませんが。

「社長」から「会長」に。
ラヂヲ それは‥‥「誤植」ですね。
── ‥‥は。
ラヂヲ それは「誤植」です。謎ではなく。

<つづきます>


前へ 最新のページへ 次へ

2013-03-27-WED



メールを送る ツイートする