すばらしき梅酢の世界。 飯島さんといっしょに、
大阪府立大学の中野先生のところへ、
うめ酢の健康効果を聞きに。

フードスタイリストであり、
栄養士の資格をもつ
飯島奈美さんプロデュースで、
「ほぼ日」でもずっと販売を続けている
「紀州の、うめ酢」。
料理をおいしくする調味料としての優秀さだけじゃなく、
うめ酢の健康効果にも注目してきた飯島さん、
くわしい話をうかがいに、
3月上旬に、大阪府立大学の名誉教授である
中野長久先生をたずねました。
学内でも「ほんとに76歳?」といぶかしがられるほど
元気だという中野先生、
そのひけつは「食」にもあるようです。
うめ酢の健康効果について
わかりやすく解説をしてくださった先生ですが、
ご自分でも料理をするとのこと。
そこで、先生からの新商品の提案も‥‥?

1クエン酸はえらい。

中野おお、これが、飯島さんのうめ酢ですか。
薄めておられるのかな。

飯島いえ、薄めてないんです。原液なんですよ。
塩分が20%ぐらいあるので、
塩や醤油のかわりに使えるんですよ。

中野なるほど。

飯島ところが「うめ酢」というのは
「酢」という言葉が入っていて、
しかも酸味が強いので、
お酢と間違える方もいらっしゃるんですね。
そんな方に使い方を知ってもらいたくて、
レシピブックも作っているんです。

中野うめぼし、うめ酢、うめ塩などは、
疲労回復効果があることは経験的に知られていますよね。
つまり、クエン酸が豊富だということなんですが、
和歌山の大学の先生が研究をなさって()。
*和歌山県立医科大学の
宇都宮洋才准教授による研究論文をもとに、
梅のクエン酸の疲労回復効果が認定され、
2019年7月、和歌山産のあるうめぼしが、
消費者庁の機能性表示食品に認定された。

飯島クエン酸っていうのは、
レモンなどに入っている‥‥。

中野そうですね。クエン酸は、
「TCAサイクル」といって、
僕たちの体がエネルギーを作り出していく回路において、
とても大事なものです。

飯島それは、代謝が良くなるとか、
疲労回復、食欲増進にもいいと。

中野そうですね。

飯島たとえば、脳にいいとか、
そういうことはあるんでしょうか。

中野脳というのはたくさんエネルギーを使うんですが、
僕たちが1日に摂るエネルギーは、
少なくても1500から1600キロカロリー、
普通2000キロカロリーですけれど、
その20%は脳が使うんです。
脳はたったの1キロ位しかないわけで、
体重から考えたら、小ささがわかりますよね。
その脳が20%を必要としているわけです。
クエン酸もその大きなサイクルの中に
入っているわけです。
でもね、クエン酸がそのまま脳まで行くかっていったら、
そうではなく、その前に、
お腹の中の微生物(腸内フローラ)と相互作用して、
健康管理をしてくれている。

飯島直接じゃないけれども、
クエン酸を摂ると、お腹の微生物が活性化されて、
元気の源をつくる、ということですか。

中野そうですね。
いま、腸が第二の脳って言われてますでしょう。
だけど、僕たちはこう言うんです、
「腸こそが、第一の脳なんだよ」って。
それくらい大事ですよという意味ですね。
なにしろ、腸内細菌があって初めて
僕たちの体は機能している。
病気になるのも、免疫機能を上げて病気を治すのも、
僕たちの健康環境を維持してくれるのは腸、
それが僕たちの考え方です。
そのためにも、うめ酢って、
すごくいい食品だと言えますよ。

飯島うれしいです! 
うめぼしや、うめ酢は、
アルカリ性食品なんですよね?
酸っぱくて、
クエン酸がいっぱい入っているから、
酸性食品かと思いきや、
アルカリ性食品だと聞きました。

中野そこが間違いやすいのだけれど、
「アルカリ性」と「アルカリ性食品」は違います。
うめぼしやうめ酢そのものは、酸性を示します。
うめぼしにはクエン酸が7%、入っていますからね。
それが身体のなかに入り、
クエン酸が燃焼し、消費された後に
残ったものがアルカリ性を示すことになる。
だから「アルカリ性食品」なんです。
アルカリ性食品は、お腹に入ると、
環境をコントロールする食品として機能するんですね。
たとえば、お肉は酸性食品ですが、
アルカリ性食品である野菜やうめぼしを食べると、
身体が酸性にかたむくところを、
バランスをとってくれるわけです。

飯島ずっとうめぼしやうめ酢を
「アルカリ性」だと思っていました!

中野「アルカリ性食品」、ですね。

飯島夏は汗をかくので、
「塩分を摂りなさい」って言われますよね。
そのときに、直接、塩を摂るよりも、
うめ酢を薄めて飲んだらいんじゃないかなと
思っているんです。
ハチミツを混ぜて水で溶くと、
とてもおいしいんですよ。

中野僕はこれをね、水筒に少し入れて、
登山なんかの時、
湧き水で薄めて飲んでいますよ。

飯島先生も!

中野そう。疲れがなおる感じがありますよね。
特に化学的にもクエン酸は
疲労回復効果が認められてますね。
ただ、まだ論争中で、
腸内微生物との相互作用が
ほとんど検討されていません。
疲れているときに、水を飲みたくなりますが、
水だけを飲むのはダメですよ。
僕たちの体液は、0.9%の塩分濃度の血液が
身体中を回っている。
それが薄まると僕たちの身体はダウンします。
だから、うめ酢を薄めたかたちで飲むんです。

飯島私は、水分やイオンを補給する
スポーツドリンクや
健康飲料のかわりに、飲んでいるんです。

中野いいと思いますよ。
スポーツドリンクや健康飲料と
同じぐらいの効果がありますよ。

飯島ごくごく飲むには、
濃すぎたら、いけないでしょうけれど。

中野逆に言うと、うめ酢は塩分濃度が濃いから、
最初におっしゃったように、
調味料として料理に使えるわけですよね。
味付けができますでしょう。
僕もよく使いますよ。

飯島先生もうめ酢を調理に使われるんですね。

中野うん、使います。

飯島私は、きんぴらを作るとき、
しょうゆの代わりに使ったり、
鶏肉を浸して焼いたりします。
焼いたササミの食感が、
保湿作用があるのかなっていうぐらい、
しっとりしているんです。

中野保湿作用、ありますよ。
うめ酢に含まれているマグネシウムの効果ですね。
マグネシウムは人の必須ミネラルです。

飯島マグネシウムもですか。
ミネラルが豊富だと聞きました。
カリウムや鉄も入っていますよね。

中野そう。僕たちの身体の中は、
ナトリウムとカリウムが
バランス良くないといけないのだけれど、
うめ酢にはカリウムが入ってるから、いいんですよ。

飯島そうですよね。
あの、料理をするものとして、
先生にお聞きしたいことがあるんです。
うめ酢を少し、米に混ぜて炊くと、
まんべんなく行き渡りますよね。
夏場、傷みにくくなるように思うんです。

中野それはうめ酢のクエン酸のせいだと思います。
クエン酸には抗菌効果があるから。

飯島じゃあ、入れて炊くのは、いいですよね。

中野いいと思います。ちょっと入れたら。

飯島抗菌効果という意味で、
仕事などで海外に行ったとき、
生の貝を食べたりすると、
ちょっと心配になりますよね。
そういうとき、うめ酢を薄めて飲むんですが、
それって気休めなんでしょうか? 
それとも多少は‥‥。

中野たしかにそういう時は心配ですね、
僕だったら食べませんが(笑)、
料理の方は、それもお仕事ですもんね。
そういうときにうめ酢を薄めてというのは、
意味はあると思いますよ。
絶対に大丈夫ですよとは言えませんが、
要するに、クエン酸自身に
キレート効果っていうのがあるんですね。

飯島キレート効果?

中野キレートは「蟹のハサミ」のことで、
切り取って除くことを指すんです。
例えば、クエン酸には
マグネシウムとかカルシウムをグッとキレートする、
そういう効果があります。
微生物にとっては、カルシウムもマグネシウムも亜鉛も
ミネラルとして必須なんですね。
それをうめぼしやうめ酢のクエン酸が奪い取る。
そういう意味での抗菌効果があると言えるんです。
食べ物で心配なときは、うめぼしやうめ酢ですね。
その場合は、うめぼしをそのまま食べるほうが
よりよいと思いますけれども。

飯島成分は基本的にはうめぼしもうめ酢も
近いものがあるんですか? 
あるいは、梅酒とか。

中野梅酒にはクエン酸は
そんなにはないと思いますよ。
少しはあるけど、アルコールにつけてあるから、
薄まっている。

飯島じゃあ、クエン酸はうめぼしがトップで、
次いでうめ酢という感じでしょうか。
でも、うめぼしにも、最近は減塩のため
水で塩を抜いたりしているものがあります。

中野お菓子のようなうめぼしもありますからね。
あれはもう、酸っぱいのが苦手な人にも
食べられるようにということなんだろうけれど、
成分としては薄まってしまっていますね。

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