つんく♂さんと接点ができるとは思わなかったなぁと
対談のあとで糸井重里はつぶやいてました。
きっと、つんく♂さんも
同じ気持ちだったのではないでしょうか。
つんく♂さんがプロデュースした
『リズム天国』というゲームをきっかけに実現した
異色といえば異色の対談。
出会ってみれば、互いに相づちを打ち合う
非常に有意義なひとときとなりました。
全10回、どうぞおつき合いください。
きっと、誰しもの生活に当てはまる話です。

  第1回「リズム感は、取り戻せる」
  第2回「説明できることと、説明できないこと」
  第3回「誰でも75点までは取れる」
  第4回「天才っていうのは」
  第5回「客席の水準が上がる」
  第6回「すばらしい人生」
  第7回「願いを持ちづらい時代」
  第8回「『ゆらり‥‥』は無理だろう」
  第9回「ふたたび、リズム論」
最終回「これから、何がしたいですか?」

『リズム天国』についてはこちら
つんく♂さんが語る『リズム天国』
『リズム天国』18の秘密
つんく♂さんHPはこちら

最終回「これから、何がしたいですか?」

いや、いろんな話をしましたけど、
今日はほんと、おもしろかった!
ありがとうございます。
あの‥‥これからどうするんですか。
つんく♂さんは、何がしたいんですか? 
いまの音楽業界に昔のおもしろさが
なくなってきているとしたら、
つんく♂さんはこれからどうするんですか。
基本に戻って考えれば、
音楽をつくることですよ。やっぱり。
つくること。
はい。
音楽、曲をつくるっていうこともそうだし、
環境をつくることもそうだし、
とにかく、つくることだと思います。
音楽の販売の形式が、
これから配信になるのか、プレスするのか、
それはわかりませんけども、
とにかく音楽をつくることに携わって
ポップスや、子どもたちが純粋に喜ぶようなものを
インチキじゃなくつくることだと思うんですよね。
ああ。とにかくつくること、生むこと。
そうですね。
音楽業界の景気が悪くなって、
「コストがかかったらあかん」ていうのだったら
もう、その範囲の中でも絶対やれると。
違う条件の中でも、全力で取り組んでつくれば、
違うものが生まれて楽しいじゃないですか。
それは自分も楽しいものね。
そうですね。
いや、「まずは原点に戻ってつくることです」
っていうのは、いい台詞ですね。
うん、でも、それしかないんじゃないかな。
いまはみんな、つくってないですからね。
過去につくられたコンテンツを
新しいメディアが売り買いしているだけで。
そうですね。
糸井さんは、これから、どうするんですか?
ぼくですか。
そうですね、いまの「つくる」っていう話でいうと、
アーティストという人たちは、
自分では何も考えられないという
危うい面も持ち合わせていると思うんですね。
その、油断するとすぐ
「ゆらり‥‥」に行っちゃうような
危なっかしい人たちが多い。
そうですね(笑)。
そういう人たちを活かすことを
考えなくちゃいけないなあとは思ってますね。
それは、ぼく自身が「ゆらり」に
行っちゃうかもしれないような
危なっかしい場所にいた経験があるから、
できることなんじゃないかなと思うんです。
たとえばつんく♂さんの「リズム論」にしても、
違うふくらませ方をして、
ぼくが知っているお客さんたちに差し出せば
思いもかけないような人たちが
読んでくれるじゃないですか。
それがぼくの仕事だと思ってるんです。
うん、うん。
「つんく♂全集全三巻」みたいなものがあったときに、
ぼくがそこに二巻加えて五巻セットにすれば、
お互いに閉じてないお客さんと会えますよね。
うん、うん、うん、うん。
たぶん、そういうことがしたいんじゃないかな。
いわばコミュニティですね。
糸井さんを中心にするコミュニティ。
ぼくが中心でなくてもいいんですよ。
あと、宗教じゃないから、出入りは自由で。
そういう場だけがあればいいなと思って
「ほぼ日」を始めたわけですから。
何かをやるから集まるわけじゃなくて、
集まること自体が楽しい。
そのこと自体が楽しくないとつまんない。
そういうことですね。
来たくない人がわざわざ来る必要もないし。
で、そういう場ができたら、
背負ってでも売りたいものがあった場合に、
背負わなくてもここに置いておくと
「好きな人、いるはずだよ?」
ってなるんですよ。
ああーー、なるほど。
そういうようなことがやりたいんですよね。
それは、置き薬とは違うんですか。
置き薬は儲かりそうでもあるんですけど、
置き薬やると効かない薬も混じりそうですね。
ああー、それはいかんですね。
うん、ちょっとそこは、危ない。
効かないものをぼく自身が
つい混ぜちゃいそうな気がする。
それ、根本からはずれますね。
「半ゆるり」になっちゃう。
ちょっと危ないと思うんですよね。
だから、まだまだなんですよ。
状況がよくないといわれる音楽業界についても、
なにかぼくらが新しい道を探す
手伝いができたらいいんですけど。
いま、ぼくらは、自分たちで食えてたり、
ちょっと乱暴なことをやっても
潰れないだろうというところまでは
なんとか来てますけれど、
そのレベルだとやっぱり人助けができないですね。
ああ、なるほど。
自分たちが食えるだけじゃなくて、
人助けまでできると、
今度は人に助けてもらえますからね。
だからといって無闇に規模を
大きくしていけばいいっていうわけじゃないし。
そうですね、そこの怖さは重要ですね。
そっちが目的になっちゃうと危ないですよね。
だって、いまやってる「ほぼ日」だって、
最初の日には500人くらいしか
お客さんが来なかったんですけど、
いまは130万とか150万とかアクセスがあるわけで、
そのプロセスで何をしてきたかというと、
突飛なことは何もしてないんですよ。
もっと増えるだろうと思いながら、
自然にやってきただけであって。
だから、今日のつんく♂さんの話なんかを聞くと、
勇気が出ますよね。
あ、そうですか。
うん、その、75点までは
誰でもいけるんだっていう発想は
ぼく、いま、いちばん好きですね。
やるべきことを一生懸命やって75点取った人って、
残りの25点に対する尊敬が生まれるじゃないですか。
その尊敬の気持ちは、
100点を取った人よりも上ですよね、きっと。
そうですね。
75点以上の人を尊敬できるし、
誰かを教える喜びも楽しみも生まれるし。
すばらしい循環になりますよねえ。
いや、だから、いまの自分がその話を聞けて
すごくよかったなと思うんですよ。
ほんと、今日の話はおもしろかったです。
話すことが多すぎましたね(笑)。
うん。また、意味もなく会いましょう。
はい(笑)。
ありがとうございました。
ありがとうございました。


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2006-12-27-WED


(C) HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN