勝川俊雄+糸井重里 対談
日本の魚は「世界一」じゃない!?
 
第8回
やっぱり魚が好きだから。
糸井 勝川さんのお話を聞いていると
いちいち「もっともだ」と思うんですけど
資源管理について
現場の漁師さん以外の反対意見というのは?
勝川 「魚は減っていない」という人も、います。
糸井 あ、そうなんですか。
勝川 水産庁とか。
糸井 それは‥‥そうなんだ。
勝川 「魚は減っていません。
 日本近海の資源は、総じて良好です」
と、言っていますので。
糸井 見解が、まったくちがうんですか。
勝川 現場の漁師の9割が
魚は減ってるって言ってるのに。
糸井 ぼくは、だいたいいつも
まず、どっちの意見にも耳を貸そうって
立場なんですけど
「魚が減っていない」というのは‥‥。
勝川 ぼくが漁村で漁師から聞いている現実と、
180度、ちがいますからね。
糸井 はぁー‥‥どうしましょう。
勝川 困っちゃいますよね(笑)。
糸井 でも、勝川さんって
水産庁主宰の勉強会とかに呼ばれたりも
してるじゃないですか。
勝川 ええ。
糸井 あれは、どういう人選なんですか?
勝川 まあ、水産庁に頼まれて
資源管理のありかたを検討する会の委員を
やっているんですけど、
なぜ、ぼくみたいに
現状の漁業に批判的な人間が呼ばれたか。
糸井 ええ。
勝川 まだ、はっきりとはわかりませんけど
ようやく「個別漁獲枠制度」についても
真剣に考えはじめてるのかな、と。
糸井 ほう。
勝川 いま「アベノミクスの三本の矢」で、
成長戦略を国家として打ち出してますよね。

当然、水産庁にもその動きがありますが、
「成長戦略」と言ったって
海に魚がいないのに、成長できないです。
糸井 それは‥‥そうです。
勝川 だから「資源管理」で魚を増やすことしか
方法はないと思うんですよ。
糸井 つまり、可能性が出てきた‥‥と?
勝川 実現に近づいたら、いいなと思います。

ぼく、10年くらい
「資源管理、資源管理」って言ってますが
長年、言い続けてたら
少しは聞いてもらえるのかなあと(笑)。
糸井 実感としては、注目度も上がってますか?
勝川 これまででしたら
検討会なんて誰も傍聴に来ないんですけど
最近では「山盛り」いらして‥‥。
糸井 山盛り(笑)って‥‥誰が?
勝川 マスコミのみなさんはじめ。
糸井 いや、ぼくも行こうと思いましたもん。
勝川 いつもの部屋には入りきらず、
講堂にも入りきらなくて、別の建物に。
糸井 すごいじゃないですか。
勝川 関心は、高まってるんだと思います。

10年前に「資源管理」を言いはじめたとき
手当たり次第に「批判」をしたんですね。
糸井 ええ。
勝川 でも、結局それじゃ、何も変わらなかった。

「なんで、わかってくれないんだ!
 どうして資源管理をしないんだ!」
って大声を出しても、まあ、ダメなんです。
糸井 うん、うん。
勝川 だから「北風と太陽」みたいに、
もう、コートを脱がなきゃいけない状況を
「世論」でつくっていこうと。

「日本の漁業をよくしようよ」と言って。
糸井 ぼくは、いつも思うんですけど、
結局みんな、
心がうれしい場所にしか来ないですもんね。
勝川 そうそう、そうなんです。

冷静に考えてもらったら、
現状の「分捕りゲーム」みたいなものより、
資源を管理したほうが
絶対に、状況はよくなるんです。
糸井 うん。
勝川 いまの枠組みだと「もたない」です。

だから、漁業が本当にダメになってしまう前に
方向転換できたらいいな、と。
糸井 勝川さん‥‥見えますよ。
バックに魚の応援団がついているのが。
会場 (笑)
勝川 あ、ありがとうございます(笑)。
糸井 いや、やっぱり、そういうものだと思う。

いま、犬や猫の愛護団体の手伝いを
やってるんですけど、
やっぱり、うまくいってる人の後ろには
「動物」がついてますもん。
勝川 そうですか。
糸井 勝川さんのお話も、
国民世論だとか成長戦略だとか言う前に
もっと、生き物として
「魚がおいしい」みたいな話でしょうし。
勝川 そうなんですよね。

結局、われわれ日本人は魚が好きですし、
やっぱり
「魚がおいしい」ことが、重要ですよね。
糸井 思ったとおり「希望の話」になったなあ。
いやあ、ありがとうございました。

会場から質問とか感想とか‥‥いかがですか。
いちばん前の、
気仙沼からお越しの小野寺さん、どうですか。
小野寺 はい、ありがとうございます(笑)。

北大西洋のマグロと、ミナミインドマグロが
個別割り当てで
いま、資源が豊富になっていると聞きました。

そういう実例が気仙沼にもあるので、
漁師さんはじめ
まわりの人にも広めていけると思いながら
うかがっていました。
糸井 ああ、そうなんですか。
小野寺 わたしたち、漁業の「後継者不足」を
目の当たりにしてるので、
がんばっている漁師さんのお給料が増えて、
漁師になりたい人が増えて、
もっと、若い人が来てくれる町にしたくて‥‥
それでカレンダーをつくったりとか、
いろいろ、やっているんです。
糸井 「漁師カレンダー」って知ってます?
勝川 研究室に飾ってあります(笑)。
小野寺 わあ、ありがとうございます!

漁師さんが
漁師という職業を選んで本当によかったと
思えるような環境にしたいです。
糸井 小野寺さんは、
もう、気仙沼の漁師の大ファンですものね。

斉吉商店の和枝さんは、どうですか。
和枝 私も、本当におもしろかったです。
もうなんか、呼吸しないで聞いたような。
糸井 ねえ。
斉藤 お話の後半になっていくにつれて
本当に、希望を感じました。

福島の漁業とかも
絶対、何かできるんじゃないかと思って、
ワクワクして聞いていました。
糸井 そうですか。
和枝 今日のお話をうかがったことで
やりたいことを、
またひとつ、増やしていただいたなって。
糸井 それは、よかったです。
勝川先生、今日はありがとうございました。
勝川 こちらこそ、ありがとうございました。
<おわります>
2014-06-25-WED
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