バブー&とのまりこの パリこれ! 住んでみてわかった、パリのあれこれ。


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「日本人激減のフランス。
 でも観光アピールも‥?!」

 
     
バブー&とのまりこの パリこれ! 住んでみてわかった、パリのあれこれ。
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「日本人激減のフランス。
でも観光アピールも‥?!」

バブー

8月中旬のパリ。
長いバカンスの中でもいちばんのピークで
パリに住んでいる人が最も少なくなる月。

エッフェル塔やノートルダムなんかの
一部の観光地をのぞいて、
ほとんど人がいなくなるんだよ。

みんながバカンスに行っているのに
どんどん静かになっていくパリに残っているのが
ちょっと寂しい気もしながら(→今年のボク)
この時期の静かなパリがいちばん好き
っていう人が実は多くて。

いつもだったら
「今度のバカンス、どこ行くの?」
が口癖なフランス人が
いま口にするのは
「この時期のパリはいちばんよね。
 静かで人がいなくて。」
ってことなんだ。

とのまりこ

そんな、1年で最も
観光客しか目につかなくなるような
8月のパリだけど。
ヨーロッパで相次ぐテロ事件の影響か、
日本人の姿は激減していて
前のようにパリの街中で
日本人観光客を見かけなくなってしまいました。

2015年1月にパリで起こった
シャルリー・エブド襲撃事件。
11月の同時多発テロ事件。
そしてつい先日、
7月14日のパリ祭の日に起こった
南仏ニースでのテロ事件。

その他にも毎週のように
目にするようになってしまった
ヨーロッパ各地でのテロ事件の影響か、
あんなに、
「この街はどこの国だっけ?!」
なんて錯覚してしまうほど
日本人が多かったパリ、
そしてフランス各地の街から
日本人が消えてしまっているのが
今のフランスの現状です。

バブー
数日前、フランスへの日本人観光客が
約半分に激減しているというニュースが
日本でも流れていたようだけれど、
体感的にはもっともっと激減しているんだ。

パリに着陸する飛行機の乗客の
ほとんどは乗り継ぎ。
荷物待ちのターンテーブルで
両手で数えるほどしか日本人がいないことにも
観光客が減っているのを実感するし。

パリからフランスの地方へ。
世界遺産でもある、
圧倒的にいちばんの観光地。
モンサンミッシェルもテロ以前までは、
日本人をファインダーの中にいれないで
撮影するなんて不可能なほど
歩いている人の半分以上が日本人。
なんていう場所だったのに、
今は日本人とすれ違うと
「あっ! 日本人いた!」
なんて思っちゃうくらい少ないからね。

とのまりこ
こんな現状のフランスで、
日本のお客さまが激減しているのは、
実際に私自身にも、観光業界など
様々な分野で働く友人・知人たちにも大打撃。

「憧れの花の都・パリ」
という扱われ方しかしなかったパリなのに、
ネガティブなニュースが多くなってしまったのは
本当に本当に残念なので、
1日も早く前のパリに戻って欲しいというのが
切実な願いではあるけれど‥‥。

ここ数ヶ月、
激減している観光客を取り戻そうと、
必死すぎるほどプラスのことをアピールしている
政府がらみのツイートや
記事や番組が多すぎることに
正直ちょっとビックリしています。

バブー
ヨーロッパに住んでいる人には
あんなにしょっちゅう「注意喚起」のメールが
日本大使館から届くのに。
そういうPRの場所では
危険そうなことなんて
一言も発信されないじゃない?!

フランスは警備強化しているから安全ですよ〜。
パリだけじゃなくて、地方も素敵ですよ〜。
を前面に押し出した、
観光客取り戻し作戦が
ちょっとわざとらしすぎて。
ボクは、ちょっと心配です。

とのまりこ
かといって、フランスは危険だよ
ってことを言いたいとか
そういうことでは全くなくて、

「テロだって、地震だって
 どこにいても避けようがないもの。
 注意しようたって、
 運にしか任せられないもの。

 だから、フランスに来ることは危険ですよ。
 ってことなんて1ミリもなくて、
 どんどんみんなに来て欲しいけれど、
 でも絶対に安全。対策をしているから安全。
 ってことはないよ。

 警備もマックス強化して、
 フランスは安全ですってことを
 やたらとアピールしているけれど、
 こんな警備でテロを防げるなら
 今までも何も起こらなかったはずよね‥‥。
 どんなに警部強化しても、
 自爆されたらおしまいだもんね‥‥。」

実際に、住んでいる人たちも、
地下鉄の中で
大きなスーツケースを持った人をみれば
なんとなく嫌な気持ちがして
違う車両に乗ったり、
デパートや美術館など
ありとあらゆる場所で
荷物検査をされるようになったのを
複雑な気持ちで見ているというのが
本当のところ。

と、いうのを伝えられたらなあと、
最近「フランス安全ぜひ来てね」
観光アピールを目にするたびに思うのです。

バブー
パリで毎月恒例になり始めていた
月1回のシャンゼリゼ大通り
歩行者天国イベントも
8月は中止になったし。

みんなが毎年楽しみにしている
野外映画上映イベントも中止になったし。

世界中から人が集まる
ヨーロッパ最大のリールでの
大きな大きな蚤の市イベントも
中止になったし。

テロの影響でたくさんの楽しいことが
中止になっていたりするんだ‥‥。

とのまりこ
朝から夜中まで、
みんなの散歩道だったエッフェル塔の真下も、
鉄のフェンスで覆われて
入る時も出る時も
セキュリティーチェックが必要に。

いつでも真下から見上げていたエッフェル塔は
ちょっと遠い存在になってしまいました。

テロを未然に防止するために
大切なことだとわかってはいるものの、
どんどんどんどん
前のパリの姿が消えていくのはすごく悲しい。

バブー
でもね、これが今のパリの現状なんだ。
普段はいつも通り、今ままでと変わらぬ
生活をしているけれど、
スーパーに入る時、
デパートに入る時、
エッフェル塔の下を通る時、
何もかもに監視がついて、
カバンの中をチェックされて、
機関銃を持った兵士や警察官が
ウヨウヨしている中をお散歩して。

だからこそ安全だよ。
ってことも大きな声で言いたいけれど。
そんなことじゃ安全とは言えないよ。
正直、テロに遭遇するかしないか、
ただただ運の世界だよ。
パリっ子も、目には見えない恐怖と戦っているよ。
ってことも大きな声で言いたい。

フランスへの日本人観光客激減問題で、
やたらと「素敵」をアピールする姿を
見る今だからこそ、
ちょこっとみんなに伝えたかった
今のパリの現状です。

 


※この連載を再編集し、
 書き下ろしも入れて新潮文庫になりました。
 こちらをぜひご覧ください!

 

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2016-08-16-TUE


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illustration:Jérôme Cointre