バルミューダのパンが
焼けるまで。
バルミューダ株式会社 寺尾玄 × 糸井重里
第4回 「泥棒」のままの出発。
寺尾
音楽の道で挫折しそうになった私は
高杉晋作の墓を訪ねることにしました。
幕末の彼らと同じように
東海道を歩いて訪ねる決意です。
でも、あいにく数週間後に
都内でライブの予定が入っていました。
糸井
レコードの話は棚上げになっても、
音楽活動は続けておられたんですね。
寺尾
そうです。
こりゃ、歩いていったら
ライブ出れねぇな、ということになり‥‥。
糸井
時間的に無理、と。
寺尾
自転車で行くことにしました。
でも私は自転車を持っていなかったんです。
糸井
またまた難題ですね。
寺尾
そうしたら、当時のマネージャーが、町内会の福引で
「マウンテンバイク当たったぞ!」
と言うんで、
「ちょっとそれ貸してくれ!」
と声をかけました。
そして、彼の家のある浦安まで
自転車を取りに行きました。
糸井
高杉晋作に会いに行くのに、
まず浦安に向かったんですか。
寺尾
そうなんです。
でも、直前にそいつから電話がかかってきて、
「用事ができて出かけなきゃいけなくなったから
 実家のガレージに置いてある自転車に
 そのまま乗ってってくれ」
と言われました。

そうかそうか、と思って、
そいつの家のガレージのシャッターを
ガラガラと開けて、
「ああ、あれが福引きの自転車だな」
と、自転車にまたがりました。
すると2階の窓がバッと開き、
そいつの親父が顔出して
「ドロボー!」って叫ぶんです。
一同
(笑)
寺尾
あぁぁーーー、きっとこの人たち面倒くさいな、
と思って、
泥棒呼ばわりのまま、
旅に出ました。
糸井
見送りの挨拶は‥‥
「泥棒」!
寺尾
そうなんです。
糸井さんは「泥棒」って
言われたことないですよね。
ふつうありませんよね。
あれ、けっこうショックなんですよ。
糸井
「泥棒」は、ないですね。
寺尾
「泥棒!」って叫ばれて、
そこからさらに、逃げていく。
これは自分でも、かなり衝撃でした。
糸井
悔しいから停まるとか、
しなかったんですね。
寺尾
はい、もうそれは、面倒で。
説明に30分はかかると思ったので、
逃げちゃいました。
糸井
それは「痴漢!」と言われることの次に
きついですね。
それもチャリ1台で。
寺尾
しかも、当たったやつですよ?
買ってないじゃないですか。
まぁ、関係ないかもしれないですけど、いや、でも。
糸井
わはははは。
寺尾
そうして、初の泥棒呼ばわりのまま、
高杉晋作の墓へ自転車で行きました。
25歳のときです。
糸井
墓まで何日かかりました?
寺尾
2週間です。
自転車って、死にものぐるいでこぐと、
膝を痛めてしまうんですね。
いちばんきつかったのは箱根です。
箱根、さすが天下の険です。
お正月に駅伝を見ていると、ランナーたちが
とっとことっとこ登ってくんで
簡単そうに見えるんですけども。
糸井
いやぁ、あそこを走るのは山の神ですからね。
自転車では、さぞきついでしょう。
寺尾
箱根を越えたら名古屋です。
東海道って国道なので、
車通りが多く、危ないんです。
歩道がない自動車道路もあって、
スレスレのとこをダンプがブワッと通り過ぎます。
その風で自転車が車に引き寄せられて、
「あ、これ死ぬわ」と思いました。
糸井
危ないですね。
それで、2週間。
きつそうだけど‥‥でも、楽しそう。
寺尾
はい。
楽しかったし、らくでした。
糸井
うん、わかります。
要するに、やることはそれしかないから。
寺尾
おっしゃるとおりです。
「それさえしていればOK」の日々って、
私、人生でその期間しかありませんでした。
いまも昔も、
「どれだけのことを創造できるか」を
つねにつきつけられています。
しかしその2週間だけは、
走れば許される日々でした。
あれはあれで、よかった。
糸井
それをその若さで発見したのはすごいですね。
「これをやってれば大丈夫」みたいなものって、
ふだんは、ほんとうはないんです。
みんなそれを望んでいるのかもしれないけど、
じつはない。
寺尾
帰りは新幹線に乗りました。
自転車をバラして、
宅急便で浦安に送りまして。
糸井
浦安にね。
親父、ビックリですよね(笑)。
寺尾
「盗まれた自転車、送られてきた」
糸井
「やっぱり罪の意識があったんだろう」
一同
(笑)
糸井
高杉晋作の墓を前に、何を確認できましたか?
寺尾
もう1回音楽がんばれそうだな、ということです。
糸井
そうなんだ。
ミュージシャンを。
寺尾
まだチャンスがあると思ってたんですよ。
糸井
そのときはもう、コードは4つ以上覚えてますよね?
寺尾
6個ぐらいです。
各キーで、6個。
糸井
‥‥そうですか、6個。
曲も作ってたんですよね?
寺尾
作ってました。
糸井
すごいですね。
寺尾
はい。
糸井
今度、曲ください。
聴いてみたいです。
寺尾
はい(笑)。
<つづきます>
2016-01-13
教えて、バルミューダ!
Q.
パンが大好きで毎朝食べるパンは手作りしています。
例えば8枚にスライスした食パンを
キツネ色になるまでトーストした場合、
パンがラスクみたいになりませんか?

トースターってサーモが自動的働いて
ちょっと高温になると切れて、
しばらくするとまたトーストがはじまる、の
くり返しなので、
以前使っていたトースターは、
食パンがおいしそうな色になるまでトーストすると、
パンがラスクのようになってしまい、
せっかくの手作りパンが‥‥と
悲しい思いをしました。

厚切りにすればそういうこともなかったのですが、
バルミューダはスライスの厚さに関係なく、
おいしくトーストしたパンを食べることができますか?
(す)


A.
パンは焼く時間がかかればかかるほど
水分が抜けて味が落ちてしまいますね。
BALMUDA The Toasterは、焼き時間を長くしても、
中心を温めるのみにとどめ、
表面の焼きあげは最後の数秒に限っています。
そのためこげにくくなっています。

ただ、ご家庭のベーカリーで焼いたパンは、
なかなか色づかない場合があるようです。
材料や分量によっては、
市販のパンよりもきつね色に焼くのが
難しい傾向があります。
例えば、米粉を使ったパンですと、米と小麦では
こげ目がつく温度帯が異なるため、
焼き色がつかないケースもあるようです。

作っていらっしゃるパンをいただいて
試せるとよいのですが、
TOBICHIのイベント開催中に、お持ちいただければ
 なおうれしいのですが)
市販の8枚切りの食パンを焼いている限りでは、
中はふんわり表面がきつね色のトーストに
焼きあがっています。
(回答:バルミューダキッチンチーム木下さん)