バルミューダのパンが
焼けるまで。
バルミューダ株式会社 寺尾玄 × 糸井重里
第3回 天才、日本に帰ってくる。
寺尾
私が高校を中退して
地中海沿岸の国々をまわった旅は、
修行のつもりでした。ですから、
「電車で行くべき距離はバスで、
 バスで行くべき距離は歩きで」
と、自分でルールを作りました。
糸井
なるほど。
寺尾
旅はたいへんでしたが、
日本に帰ってきたときに、
「なんでもできるな」と思ったんです。
糸井
それはおもしろいなぁ。
うん、ほんとに思ったんでしょうね。
寺尾
思いました。18歳です。
「ヤッバいな、俺!」
糸井
「俺、もうなんでもできる!」
寺尾
「すげえヤツ、日本に帰ってきちゃったな!」
糸井
いいね、その言葉!
寺尾
「これ、ただじゃ済まねえだろうな!」
恥ずかしながら、
ほんとうにそう思っていました。
糸井
まわりの友達はなんて言ってました?
寺尾
黙ってました。
一同
(笑)
寺尾
なんでもできるような気持ちになった私は、
なんでもできるんで、
「作家だと、どうかなぁ???」
「10代で作家って、何賞獲るかわかんないけど、
 ちょっと渋すぎるかなぁ」
と思いました。
糸井
それで‥‥。
寺尾
はい、書きためた詩がたくさんあるから
まずはロックスターになっとこう、
ということになりました。
糸井
「俺の文才」を使った詩が、たくさんあるから。
寺尾
はい。そっちのほうが派手だし、目立ちます。
音楽をやるにあたって、
理由はそれ以外ありませんでした。
そして、アコースティックギターを買い、
コードを4つ覚えました。
そのコードを並べ替えて
自分の詩をのせてメロディにして、
歌ってテープに吹き込んで
レコード会社に送ったら、決まっちゃったんです。
糸井
え?
4つのコードで‥‥。
寺尾
はい。ギター買ってから、3か月。
レコード会社と専属アーティスト契約をしました。
やっぱ天才は違うなぁ(笑)。
糸井
はぁぁぁ。
もともと才能があったんでしょうか?
きっと、何かひっかかるものが
あったんでしょうね。
寺尾
レコード会社の人がどう思ったか
わからないのですが、
おそらく何か、あったのでしょう。
小さい額ですが、
すぐに報酬をもらいはじめました。
そして、努力について考えたり
実行したりするということを
ポッカリ忘れ切りました。
糸井
すぐ認められちゃったからね。
寺尾
はい。
そして、そこから5年ぐらい、
ものすごく苦労しました。
糸井
ああ、そうなんだ。
寺尾
ライブハウスのステージに出ていって、
「ほら俺が来たぞ、歌うぞ」
と思っても、そこにはお客さんが3人。
いやいや、俺は
ドームの画しか浮かんでないから(笑)。
広いドームのアリーナに、ドワーーって
客がいる風景しか想像してなくて、
そのギャップについていけませんでした。
糸井
3人対ドームですものね。
寺尾
はい。
4万人くらい入ってるはずなのにおかしいな、
と思って、結局、
演奏中はずっとふてくされていました。
糸井
客が少ないことを客に怒ってたわけですね。
それは悪い循環ですね。
寺尾
そうです、そうです。
バカ中のバカでしたね。
糸井
何歳の頃ですか?
寺尾
19か、20歳。
糸井
ああ、いい頃ですねぇ(笑)。
その自分に、もし
タイムマシンで会う機会があったら?
寺尾
ぶっ飛ばします。
糸井
相手は万能なのに、ぶっ飛ばす。
しかしその5年は、短くないですね。
寺尾
けっこう長かったです。
糸井
その5年を、いったい誰が
なんとかしてくれたんでしょうか。
寺尾さんを
「変な人」にさせなかったのはなんですか?
寺尾
逆に、その全体的な大失敗が、
私を変な人にさせないで、
かろうじて支えてくれたんだと思います。

レコード会社が決まって、
バックバンドもつけてもらって、
ライブで失敗しながらも4〜5年経って
レコードを出すことになりました。

当時は、アルバムを1枚作るのに
だいたい2〜3000万かかりました。
糸井さんもご存知かと思いますが、
あの頃はテレビとのタイアップが盛んだったんで、
タイアップが決まったらだいたい売れちゃうんです。
プロモーションに1億円かけたら1億円は売れる、
と言われていた時代です。
レコード会社がピックアップする
「今年の注力新人」に入れてもらって、
スポンサーの金もついて、
さぁアルバムを作りましょう、
ということになりました。
糸井
すごいですね。
寺尾
そしたら、私のスポンサーについてくれた会社が
創業以来の赤字に転落してしまいました。

レコードは作ったのですが、
金がなくなったので、
残念ながら打ち切りになってしまいました。
「いまからもういちど別の会社と金の話をつけるのは
 時間がかかるので、この音源は
 申し訳ないから寺尾くんにあげます」
とレコード会社から言われました。
「寺尾くん、この音源持って
 どの会社に行ってもいいよ」
糸井
3000万円かけて作った
マスターテープを
レコード会社が受け渡したんですか?
寺尾
はい。でも私には、はっきり言って
それは要らないものでした。
なぜなら、人の言うことを聞いて
作った音楽だからです。
私についてくれたプロデューサーが
売れっ子を作る人だったんで、
その人の言うとおりの歌い方や
曲の作り方をしました。
自分もぜひ売れたいと思っていましたからね。
でも、それを私個人がもらっても‥‥
糸井
「俺」じゃないんだ。
寺尾
俺じゃない。
要らない。
もらった音源のDAT(ダット)を
ガスっとそのまま捨てちゃって、
あとで、ものすごい、後悔したんです。
糸井
「捨てなきゃよかったーー!」
寺尾
「あっちゃあぁぁぁ!!!」
一同
(笑)
糸井
90年代の終わり頃というのは、
すでにバブリーな時代ではなくなってましたね。
レコード会社がそうとう
マーケティングに注力していた時期です。
「その歌い方じゃ売れないよ」みたいなことは、
ものすごく厳しくやられたんでしょうね。
でも、そのDATを捨てちゃって‥‥。
寺尾
道が断たれました。
でも、自分の場合は、
「人の言うこと聞いちゃダメなんだ」
と、身にしみてわかりました。
うまくいってもいかなくても、結局は
自分が責任を取れない。
そんなことに、みんなと自分の時間を使いました。

「何やってたのかな、俺」
ほんとうに、心の芯から、そう思いました。
糸井
すごい教訓ですね。
寺尾
はい。それで、あまりのショックで、
高杉晋作に会いに行こうと思って。
糸井
高杉晋作。どこにいるんですか。
寺尾
高杉晋作は、下関に近い、吉田という場所にいます。
そこに墓があるんです。
<つづきます>
2016-01-12
教えて、バルミューダ!
Q.
パンがおいしいのはとてもうれしいです。
でも、お餅、干しイモ、きんつば、ピザ等は
うまく焼けますでしょうか?
バルミューダのトースターが得意なもの、
苦手なものをお教えください。
(まな)


A.
パンはもちろん、
お餅、干しイモ、きんつば、ピザもおいしく焼けます。
Balmuda The Toasterには、4つのパン焼きモードと
ワット数を段階的に指定できる
クラシックモードがあります。
お餅は、クラシックモードの1300Wで焼くと、
こんがりきれいな焼き色がつきます。
ピザのあたため直しには、
ふんわりあたためつつ最後にカリッと焼き上げる
クロワッサンモードが最適でしょう。
干しイモ、きんつばは、トーストモードで
お好みの焼き加減を探りながら焼いてみてください。

おおよそどのパンも上手に焼けますが、
得意なのはトースト、チーズトースト、
クロワッサン、バゲット、冷凍パンです。
ぎっしりしたキッシュや
「凍った具材のしっかりつまったカレーパン」などは
やや苦手分野ですので、
電子レンジを併用いただくことをおすすめします。

生の具材の乗ったパンは
上火が強いチーズトーストモードにしよう、
焼き色をつけず中身だけあたためたいので
フランスパンモードにしよう、など
モードごとの特徴をつかむと
たのしく焼きこなせると思います。
モードの説明はトースターに同梱の
ガイドブックに掲載しています。
(回答:バルミューダキッチンチーム木下さん)